持て余した山林を売却したいと考えている方もいるのではないでしょうか。
しかし、活用しづらい山林は売却が難しい地目であるうえに、その土地の現況次第では農地転用が必要になるケースもあります。
また、都市計画などの制限がかかってくる場合もあり、これをクリアするには容易ではありません。
この記事では、地目が山林の土地を売却するにあたり、農地転用が必要なケースについてお話していきます。
売却が難しい山林という地目!なぜ売りづらいのか
持て余した所有地を売却する場合、その地目や現況によっては売却が難しい場合があります。
そもそも地目とは、その土地の利用目的や現況によって認定された「土地の用途」を示すものです。
地目は全部で23種類に分けられ、主な地目としては宅地、田、畑、山林、雑種地などが挙げられます。
ここで見ていく「山林」は、竹木が自然に生育する雑木林を指しますが、結論から言って、この地目の土地を売却するのは容易ではありません。
と言うのも、地目が山林の土地は、一般的な宅地などと違って活用するには困難な立地環境であることが多く、具体的には以下のような多くのデメリットが売却を難しくしています。
・法律的な土地活用の規制が厳しい
・日照時間などの関係から、太陽光発電などの投資物件にも条件が悪い
・土砂災害などの地盤リスクが高い
・建築するにも費用が膨大になりがち
以上のデメリットから、山林の地目は問題が多く、需要が見込めないことが分かります。
また、その土地の現況によっては、売却するために「農地転用」が必要になるケースもあります。
それについて、次項で詳しく見ていきましょう。
地目が山林でも現況は農地?農地転用が必要なケース
農地転用が必要になるというケースは、地目が山林であっても、現況が田、畑などの「農地」である場合です。
農地法においては、土地の登記簿上の地目は考慮されず、現在の用途状況が優先され、判断されます。
そのため、たとえ地目が山林であったとしても、現況の田畑としてみなされますが、ここで問題になってくるのは、「農地は売却が難しい」という点です。
農地売買は宅地などの地目と違い、買い手に対して厳しい条件が求められるなど、農地法による制限がかかってきます。
必ずしも売却できないわけではないですが、「農地をそのまま売却するには非常に困難」と言えます。
そこで、売却するための方法として挙げられるのが「農地転用」です。
「農地転用」は、耕作を目的とした土地(農地)を、農地以外のものに転用することを指します。
一般的な農地の場合、農地転用することができれば、自分でそのまま土地利用をすることはもちろん、売却の幅も大きく広がります。
とはいえ、登記簿上の地目が山林の土地である場合、農地転用したとしても、山林とする地目の立地条件は変わりません。
そのため、売却するにはやはり簡単ではありませんが、農地法による制限は受けなくなるため、少なからず売却しやすくはなります。
農地転用はどのような基準で許可される?
前項では農地転用についてお話しましたが、日本の芳しくない農業事情の観点から見ると、どのような土地でも転用ができるわけではなく、農地として優良な土地は転用が認められていません。
では、実際に地目が山林でも現況が農地だった場合、具体的にどのような基準で農地転用の可否が判断されるのでしょうか。
まず、転用の許可基準には「立地基準」というものがあります。
「立地基準」とは、その土地の優良性や周辺の土地利用状況などを照らし合わせて区分し、転用許可を判断していくものです。
農業上、転用によって大きな影響が予想される農地ほど転用は厳しく制限されますが、その反対に、農業上の重要性が低い農地は転用許可が容易に下ります。
農地の区分は以下の5つに分けることができます。
①農用地区域内農地
市町村の「農業振興地域整備計画」で定められた農地です。
農業の振興を図るための整備地域対象であるため、原則的に転用は許可されません。
②甲種農地
農地として優良な条件を備えた農地です。
原則、転用は認められません。
③第一種農地
10ha以上の一団の農地で、良好な営農条件を備えている農地です。
この場合も、原則的に転用は認められません。
④第二種農地
駅から500m以内にあるなど、今後市街化が進む将来性がある農地です。
周辺にこれに代わる土地がない場合、転用が認められます。
⑤第三種農地:駅から300m以内にあるなど、すでに市街化区域にあるか、もしくは今後市街化が進む将来性がある農地です。
原則的に転用が認められます。
自分が所有している農地区分は、農業委員会に問い合わせることで確認することができます。
市街地調整区域内は農地転用の許可申請が不要!しかし売却はより困難に
地目が山林である土地の現況が農地だった場合について、農地転用するための許可基準を見てきました。
ただし、山林の地目でさらに注意したいのは、「市街化調整区域」である場合です。
「市街化調整区域」は、無闇な市街地拡大を防ぐために多くの制限があります。
つまり、基本的に建物などの建築は認められない地域になるわけですが、実は山林はこの市街化調整区域内に位置していることがほとんどです。
所有する山林が市街化調整区域内に位置する土地の場合、仮に農地転用の許可が下りたとしても、基本的に建物の建築許可を得ることは容易ではありません。
そのため、いずれにしても農地転用した山林を売却するには大変困難であるため、市街化調整区域内であるか否かはあらかじめ確認しておく必要があります。
制限が厳しい地目の山林!プロによるターゲットを絞った売却を
市街化調整区域内にある山林は、建物の建築は難しいため、農地転用をする前にあらかじめ確認する必要があることが分かりました。
また、前述したように、たとえ農地転用が可能だとしても、山林という地目柄から売却の幅を広げるのは難しいでしょう。
では、山林を売却するために把握しておくべき主なチェックポイントについて、改めて以下でまとめてみましょう。
・農地法(現況が農地である場合)
・都市計画法(市街化調整区域の制限)
・土砂災害警戒危険区域などの指定
またこれに加え、都市計画法によって都市計画公園に指定されている場合は、建物の建築が認められません。
これらの厳しい土地活用の制限から、売却は山林のまま土地活用を考えている買い手のターゲットを絞る必要があります。
そのためには、土地売却に強い不動産会社を探し、プロによってターゲットにアプローチすることが一番期待が持てる方法でしょう。
売却が難しい山林の現状!自分で土地活用する方法は?
では、山林という売却には難しい地目の現状を考えたとき、自分でうまく活用する方法はあるのでしょうか。
自分の所有地として活用していく場合、考えられる方法は主に以下の3つです。
①太陽光発電
太陽光発電の設置は、市街化調整区域内の建物の制限から除外されるため、現実的な活用方法の一つです。
山林にある程度の平地があり、日照時間も確保できるようであれば、太陽光発電を検討するのも良いでしょう。
②特用林産物の生産
椎茸などのキノコ類や、タケノコ、山菜などの生産をする方法もあります。
出荷して生計に充てたり、観光農園として営むケースも見られます。
③NPO法人などに使ってもらう
NPO法人や市民団体には、「森林ボランティア」という自主的に森林づくりの活動を行う組織が存在します。
山林を用いた利益はありませんが、活動拠点として山林を提供する方法もあります。
上記以外にも、山林の活用方法は様々です。
ただし、現況が農地である場合は、まずは農地転用が必要になるので注意してください。
山林という地目の難しさ
山林という地目は、土地活用にかなり厳しい制限が課せられているため、買い手の幅も狭くなります。
そのため、たとえ農地転用をしたとしても、他にもクリアすべき問題が多くあり、売却するには大変困難と言えます。
それでも売却を検討する場合は、土地売却に強い不動産会社に依頼し、よく相談しながら計画的な売買取引をしていきましょう。