賃貸物件を所有していると、借主が家賃を延滞してしまうリスクが少なからずあります。
もしも、借主が家賃を延滞してしまった場合は延滞金を請求することができます。
その延滞金の計算方法をご存知ですか?
また、借主に対して家賃や延滞金の督促はどう行うのでしょうか。
この記事では、借主が家賃を延滞した場合の延滞金や対応方法について解説していきます。
家賃の延滞金請求は民法でも認められている!
賃貸物件を所有していると、借主が家賃を延滞してしまうことがあります。
その理由は、うっかり振り込みをし忘れてしまったり、何かの事情で家賃の支払い期日までに入金ができないなどさまざまです。
しかし、どのような事情があるにせよ、物件を貸している側からすれば家賃の延滞は損害でもあります。
そのため、家賃が延滞されてしまったら、延滞金を借主に請求する場合が多いのです。
家賃の延滞が続いてしまうリスクを少しでもなくすという意味でも、延滞金の請求は仕方のないこととも言えるでしょう。
民法第419条では、「金銭給付を目的とする債務不履行について、その損害額に関しては法定利率によって定める」とあります。
つまり、これを読み解くと延滞金の請求は民法上認められているということですから、借主と賃貸借契約を取り交わす際に延滞金について記載する場合も多いのです。
それでは、その家賃延滞金はどのように計算されるのでしょうか。
まずは、家賃延滞金の計算に必要な利率についてお話ししていきます。
家賃延滞金を計算する際の利率はいくつ?
民法でも定めがあるように、家賃の支払いが期日までにない場合、借主に対して延滞金の請求を行うことができます。
賃貸借契約書に家賃延滞金について記載がある場合は別ですが、特に記載がない場合でも延滞金を請求することができます。
このような場合の延滞金の利率は年5%となります。
この年5%という金利に関しても、民法404条で定められています。
ただし、事業として賃貸物件を所有している場合(複数の賃貸物件を所有しているなど)は、年率6%の延滞金を請求することができます。
これは、商法第514条に定められているので参考にしてください。
また、事業として賃貸物件を貸し出している場合の利率については、2020年4月以降は法改正されることになりますのでご注意ください。
ここで疑問が生じますが、賃貸借契約書に延滞金について記載する場合、延滞金の利率に上限はないのでしょうか。
実は、延滞金の利率には上限が定められており、年率14.6%となります。
このことに関しては、消費者契約法第9条で定められています。
ただし、当該賃貸物件が法人に対して貸し出している場合など、例外もありますのでご注意ください。
それでは、次項で家賃延滞金の計算方法をご説明していきます。
家賃延滞金の計算方法
家賃延滞金を計算する際の利率についてだいたいわかったところで、延滞金の計算方法をご説明していきます。
計算式は以下の通りです。
●家賃×利率×延滞日数÷365日(もしくは366日)=延滞金額
例えば、家賃5万円で7日間の滞納、賃貸借契約書で定めている利率が14.6%とします。
50,000円×14.6%×7日÷365日=140円
この例からすると、7日間滞納分の延滞金は140円となります。
もしも、賃貸借契約書に延滞金に関しての定めがなく延滞金を請求する場合は年率5%となりますので、計算は以下の通りとなります。
5万円×5%×7日÷365日=48円
また、家賃延滞金に関しては非課税となることもあわせて覚えておくといいでしょう。
さらに、上記の延滞金計算例からもおわかりいただけるように、数日の延滞であれば金額は少ないです。
そのため、延滞金を請求する手間や書類を郵送する際などの費用のことを考えると、2か月ほどの延滞で請求する場合が多いようです。
延滞金計算などの手間賃「督促手数料」
借主が家賃を延滞した際に請求することのできる家賃延滞金の計算方法についておわかりいただけたことと思います。
家賃の延滞金を請求することは、手間や費用、精神的な面から考えてかなりの負担になります。
そのため、場合によっては家賃の延滞金の他に「督促手数料」を請求することもあるようです。
ただし、督促手数料に関しては、家賃延滞金を大幅に超えるような金額であれば無効となる可能性があります。
これは、消費者契約法によるものからです。
消費者に対して一方的に不利な契約に関しては認められていません。
家賃延滞金を請求する作業はかなりの労力なので督促手数料をある程度受け取りたいとは思いますが、督促手数料に関しては注意して設定する必要があります。
家賃の督促を貸主自身が行う際の流れと注意点
もしも、所有している物件の管理を自分自身で行っている場合、家賃の延滞金の計算や請求についても自ら行う必要があります。
ここでは、借主に対して家賃の督促を行う際の流れと注意点についてご説明していきます。
①電話や直接訪問をして家賃の督促を行う
電話や直接訪問するのが一般的な家賃督促方法です。
ただし、早朝や深夜などの督促は法律上禁止行為とされていますので、くれぐれも非常識な時間帯での電話や訪問は避けるようにしましょう。
また、しつこく電話をしたり、同じ日に繰り返し訪問し督促することも禁止行為です。
②電話や直接訪問でも連絡が取れない場合は督促状を出状する
電話や直接訪問をしても連絡が取れない場合は、督促状を出状します。
督促状を作成する場合は、以下の項目を記載するようにします。
・督促状の作成日
・借主氏名
・貸主氏名、住所、電話番号
・当該物件名、部屋番号
・期日までに入金がなかった旨
・支払い金額
・支払い期限
・入金先
・支払いが期日までなかった場合についての説明
督促状の文面は柔らかい印象に!家賃滞納がひどい場合は催告書送付も手段の一つ
前項では、家賃督促の流れと注意点をご説明しましたが、督促状を作成する際に記載する項目についてもう少し詳しくご説明いたします。
まず、「支払い金額」については、
・未払い家賃
・延滞金
・督促手数料
を計算し、合計した金額を記載します。
次に、「支払い期限」は1週間程度を目安に設定するといいでしょう。
「入金先」は、記載漏れがあると、借主から「入金先が不明だったため、期日までに入金できなかった」と言われる可能性があります。
そのため、忘れずに記載するようにしましょう。
また、円満に解決するためにも、なるべく柔らかい印象の文面にするようにしましょう。
あまりにも強く高圧的な文面では、円満にことが運ばないことも考えられます。
賃貸物件を保有されているのであれば、貸主側が賃貸借契約を一方的に解除できないことが法律上定められていることはご存知かと思います。
しかし、家賃未納期間が数カ月単位など、あまりにも家賃滞納がひどければ、「催告書」を作成するという手段があります。
催告書は督促状とは性質が異なり、「期日までに支払いがされなければ法的手段を取ります」という内容のもので、「内容証明郵便」で送付します。
ただし、これはあくまでも家賃滞納がひどいケースのときの対応策ですので、基本的には電話や訪問、督促状の送付で家賃を回収することが望ましいです。
家賃滞納の際は延滞金の請求が可能!しかし請求時の対応には気をつけよう
もしも、所有している賃貸物件の借主が家賃を延滞してしまった場合は、法律上延滞金を請求することができます。
また、場合によっては督促手数料を請求することも可能ですが、家賃延滞金を大幅に超えるような請求額は認められない可能性があります。
そして、家賃の督促を行い場合は電話や訪問、督促状の出状が一般的ですが、電話や訪問の際は時間帯などにはくれぐも気をつけるようにしましょう。
さらに、督促状を出状する際の文面にもできるだけ気をつかい、円満に家賃回収できるようにすることをおすすめします。