地目が「田」だと売買は難しい?売却するための2つの方法

若い頃は農業をされていても、高齢になって断念する方は多いのではないでしょうか。

事実、雑草が生い茂る耕作放棄地は増える一方です。

また、「固定資産税や相続税で子供の負担になるくらいなら売買…」という選択肢を考えている方もいると思います。

地目が「田」の農地を簡単に売却することはできるのでしょうか。

売却するためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

地目が「田」の土地は売買には不利

結論から申し上げますが、地目が「田」である土地を売却するのは難しいでしょう。

しかし、できないというわけではありません。

田畑とされている土地を売るためには、農地法の制限や都市計画法の制限を乗り越える必要があります。

それぞれの法律は、全国どこでも同じように適用されているわけではなく、都市計画区域ごとに難易度が違ってきます。

もし市街化調整区域に土地があると、とくに難しくなるでしょう。

では、地目「田」の土地を売買する方法を見ていきます。

まず、売主は「田」のままで売却するのか「宅地」として売却するのかを選択します。

「田」のままで売る場合には、農地法3条の制限を受けることになります。

農業委員会からの許可を得て、「田」として売ることが可能ですが、買主が勝手に家を建てるわけにはいきません。

売却後も、その土地は農業のために耕作地として使われるということです。

地目が「田」の土地の買い手となるのは?

「田」として農地の売買が行われる場合、購入できるのは農業従事者か不動産開発業者です。

地目が「田」である土地に無断で家を建てると、スムーズに宅地にはならず、罰則を受けることになります。

不動産開発業者なら、「田」として買った農地を「宅地」に転用して、マンションを建てて売ることもできます。

しかし、宅地にしても売れないと判断される場合には買い手が付かないケースが多いでしょう。

さらに、「田」のままで売却する農地は、一般的には高く売れないものです。

不動産開発業者も、農地転用にかかる時間や費用、地質改良費、万が一のリスクなどを考え安く買うことが考えられます。

農地の売却価格は場所や周辺環境によって異なりますが、年々下落しています。

都市部にある農地だったとしても、売却して利益を得られるのはめずらしいケースでしょう。

地目「田」でも買主が家を建てられる!?農地転用の許可が必要

地目が「田」の場合、売買ができないというわけではありませんが、農地法や都市計画法をクリアするという難しい条件が発生します。

「田」のままではなく、「宅地」に使えるということにして売りたい場合は、農地転用の許可を受けなければいけません。

市街化区域であれば、農業委員会に農地転用の届け出をし、市街化区域ではないなら、農業委員会に農地転用許可を申請します。

市街化区域外で許可権者となるのは、都道府県知事もしくは指定市町村長になります。

市街化区域は届け出るだけですが、それ以外になると申請制になり、許可されるのは難しいのが現状です。

原則として建物の建築が許されることはないのですが、駐車場や資材置き場のニーズがあるといった理由で、建物を建てずに活用することもあります。

土地の周辺環境や状況によっては、市街化区域外でも買い手が見つかる可能性はあります。

農地転用をして売買を行うためには、農地法5条の届け出(許可)が必要です。

ちなみに、農地転用して自分で家を建てたい場合は、農地法4条の許可が必要になります。

農地転用で売買!2つの基準を確認

地目が「田」である農地の売買について、さらにくわしくご説明していきましょう。

農地転用の許可を得るためには、立地基準と一般基準という点をクリアすることが求められます。

「立地基準」とは、農地の区分で許可するか不許可になるか判断するものです。

第2種農地や第3農地は、原則として許可されることになっています。

第2種農地は、市街地化されそうな農地や、生産性が低い農地を指し、農地以外の土地などに立地が難しい場合に許可を受けられる可能性があります。

第3農地は、第2種農地よりも市街地化される可能性の高い農地です。

しかし、農業を営むうえで良い条件のある第1種農地は、原則的に許可されません。

第1種農地よりも、さらに良好な条件がある甲種農地や、農用地区域内農地も同様です。

つまり、その土地が農業に適していればいるほど、転用は難しくなります。

周辺に田畑が広がる環境で、のどかな景色が広がり、今後も市街地に近付くことが考えられないようなところか、駅などが近くにあり、周りに住宅が立ち並び、小さな空き地がポツンあるところのような、分かりやすい事例ならいいですが、多くは判断が難しく、専門家に相談することが多いでしょう。

地目が「田」でも許可が取れた!売買契約の際に行われること

「一般基準」は、農地転用の際の申請目的が実際に実行できるかということを判断する基準です。

「なんとなく、農地を宅地にしておきたい」というような、曖昧で不確実な理由で許可されることはありません。

売主と買主双方を申請者とし、その資力や信用、関係者からの同意の有無、転用許可後すぐに目的を果たすか、といったことを見られます。

自分で所有し続ける場合でも、「他に住む土地が無くなって仕方なく」といった、よほどの理由がないと許可されないケースがあります。

細かい条件を満たしたうえで、一般基準に該当すると認められるのです。

そして「仮登記」も行われます。

仮登記は、買った後に所有権移転が保全されるために必要で、これが許可されると農業委員会によって許可指令書が発行されます。

それによって農地の「本登記(所有権移転登記)」の受付が可能になります。

また、農業委員会から不許可とされることもあるので、「田」の地目の土地を売買する際には、契約書に不許可の際の項目を設けることとされています。

農地の売買に強い不動産会社・相談に乗ってくれる専門家を探そう

地目が「田」である土地を「宅地」として活用する方に売りたいと思ったら、転用が可能なのか、農業委員会に確かめ、いくつかの不動産会社に査定を依頼しましょう。

不動産会社を選ぶ際には、農地の売買に慣れている不動産会社がおすすめです。

もし農地転用などの手続きを、土地家屋調査士や行政書士に依頼するなら、測量なども行われますから多額の費用がかかることになるでしょう。

農業委員会で許可されても、法務局に問い合わせた結果、地目変更は無理だと言われることもあります。

このように、いろいろな壁がある農地の売買ですが、成功例もあります。

経験のある専門家に相談しつつ、手順を間違えずに進めていけば、不要な土地を手放して利益を得ることもできるかもしれません。

また、隣の土地を所有している方が買い取ってくれたり、引き取ってもらえることもあるようです。

農業を営んでいる方であれば、成功する可能性は低いものの、譲渡の交渉をすることもできるでしょう。

駐車場が隣接してあるなら、その拡大ができるため、その土地の所有者と話し合うこともできます。

「相続税のかかる農地を手放したい」と考えているなら、利益にはこだわらずに、近くにお住まいの方に譲渡するというのも一つの方法です。

土地活用は専門家に相談

地目変更を考えずに農家に売って農地として使ってもらうなら、農地法3条の制限を受けますが、手続きとしてはそこまで難しくはありません。

一方、建物を建てる買主に売る際には、農地転用の許可が必要になり、一定の条件を満たさないと不許可になります。

とはいえ、「農地は売却が難しい」というのは一般論です。

土地活用プランナーなどに相談して土地を見てもらうと、思ってもみなかった活用法に気が付くこともあるでしょう。

不動産会社や土地家屋調査士を何軒か回り、相談することもできます。