CMや雑誌では、開放感あふれる吹き抜けのあるモデルハウスがおしゃれに取り上げられており、木造住宅のマイホームには採用したい構造です。
しかし、この吹き抜けにはいくつかのデメリットもあり、それを踏まえた上で慎重な検討、対策をしていく必要があります。
この記事では、吹き抜けのある家を実現させることについて、そのメリットやデメリット、対策などをご説明していきます。
木造住宅で人気の吹き抜け!そもそもどのような構造?
近年人気を集める吹き抜け住宅は、開放感にあふれており、ダイナミックでおしゃれな空間を演出してくれます。
マイホームの購入を検討している方の中には、注文住宅で吹き抜け構造を採用したいと考えている人も多いことでしょう。
しかし、そもそも吹き抜け構造とは、どのようなものかご存知でしょうか。
吹き抜けは、建物の2階もしくは数階にわたって天井・床を設けず、貫通した開放感のある空間を持つ構造です。
この吹き抜け構造の採用は、一般的に木造軸組工法の木造住宅がほとんどで、木の骨組みが温かい味わいを生み出してくれます。
木造軸組工法は日本の伝統的な在来工法で、木材を組み合わせて骨組みを作ります。
そのため、吹き抜けによって柱と梁を美しく見せることができるのです。
軽量鉄骨造の場合、吹き抜けを作ることは可能ですが、むき出した鉄骨はデザイン的にも無機質な印象があり、採用することは多くありません。
また、鉄筋コンクリート住宅においては、構造上吹き抜けを作ることができません。
伝統的な工法で作る木造だけが、吹き抜けという空間を美しく活かすことができるのです。
なお、木造住宅であっても、2×4(ツーバイフォー)タイプの場合は、耐震性能上に懸念が生じるため、吹き抜けを作ることは難しくなっています。
吹き抜け構造で部屋をおしゃれに!そのメリットは?
木造住宅で取り入れることができる吹き抜け構造ですが、意外と盲点になるデメリットなどもあります。
そのデメリットを見ていく前に、まずは吹き抜けのメリットについて見ていきましょう。
①開放感
吹き抜けの一番のメリットは、やはり開放感ではないでしょうか。
天井を排除することで、広々と見渡せるスケール感を演出し、狭い部屋でも圧迫感を感じさせません。
吹き抜けのほとんどがリビングにあり、ゆったりとくつろげる空間効果を与えてくれます。
また、あえて柱や梁を見えるようにすることで、木の温もりをおしゃれに見せることができます。
②家族の居場所や気配を把握できる
吹き抜けによって空間が一体化することで、家族の気配を隔たりなく身近に感じることができ、生活の中でも安心感が生まれます。
これは家族間の距離をより近づけるメリットにも繋がります。
③より明るいリビングに
空間を分断しない吹き抜けでは、窓から取り入れられた日光がそのままリビングに降り注ぎます。
家の日当たりや明るさは大きな課題になりますが、吹き抜けがあれば家全体を明るくしてくれます。
体内時計などの健康の観点からも、日光の取り入れやすさは非常に魅力的なメリットと言えます。
吹き抜け構造のメリットは、主に上記のような3つが挙げられます。
では続いて、吹き抜けのデメリットについて見ていきましょう。
吹き抜けのある木造住宅にはデメリットも!その①冷暖房の効率の悪さ
木造住宅における吹き抜け構造では、快適な暮らしに関わってくる場合もあるため、そのデメリットはあらかじめ熟知しておくことが大切です。
では、そのデメリットを見ていきましょう。
まず、吹き抜けで問題となるのは「冷暖房の効率の悪さ」です。
仕切りとなる天井が排除されているため、リビングだけの部分的な冷暖房が難しく、室温が快適になるまでに時間がかかります。
特に、寒い冬の季節の場合、リビングで暖めた空気が吹き抜けを通して2階へ流れるため、暖房の効率は非常に悪くなります。
また、吹き抜けは構造上、窓(開口部)も大きくなる傾向にあります。
大きい窓は日光を最大限に取り入れてくれますが、暖気を逃がす通り道でもあります。
そのため、せっかく室内を暖めても、大きな窓を通じて暖気が逃げてしまい、冷気を中に侵入させてしまいます。
これによって、暖房はますます効率が悪くなり、それに伴って光熱費も膨らみます。
したがって、吹き抜け構造には何らかの寒さ対策をすることが望まれますが、最近では断熱性・気密性に優れた家もあるため、これをカバーできる場合もあります。
吹き抜けのある木造住宅にはデメリットも!その②音
木造住宅における吹き抜けの2つ目のデメリットは、「音」です。
前述では、家族の居場所や気配が感じれることをメリットに挙げましたが、吹き抜け構造による空間の一体化は、一方で家族の声や生活音を筒抜けにしてしまいます。
そのため、一人で過ごすプライベートな空間を確保しづらく、音に敏感な場合はストレスになる場合もあります。
さらに、木造は性質的に音を伝導させる音響効果があるため、それも含めて何かしら防音対策を講じる必要も出てくるでしょう。
特に、注意したいのが2世帯住宅です。
2世帯住宅の場合、お互いの生活リズムが異なることが多いため、吹き抜けを通じた音はそれぞれの生活を狂わせる恐れもあります。
例えば、就寝時間が異なる場合、リビングからの会話やテレビ音によってなかなか眠りにつけないなど、2世帯の関係悪化にも繋がりかねません。
したがって、2世帯住宅で吹き抜け構造を検討している方は、設計段階で防音対策も視野に入れておくのが良いでしょう。
吹き抜け構造の寒さ対策は?シーリングファンで空気の循環
これまでに、木造住宅における吹き抜けのデメリットをご説明してきました。
吹き抜け構造を採用する場合は、これらのデメリットにしっかりとした対策を考えておくことで、吹き抜けのメリットをより享受することができます。
特に考えておきたいのが、寒さへの対策です。
前述したように、吹き抜けは空間が2階へ貫通している上に、開口部も大きくなるため、暖房の効率が悪い傾向にあります。
それをカバーする断熱性・気密性があれば話は別ですが、多くの場合はこの寒さ対策が重要になります。
吹き抜けの寒さ対策としておすすめなのは、「シーリングファン」です。
「シーリングファン」とは、天井に設ける扇風機のようなもので、空気を攪拌することで効果的な室温調節を促します。
ちなみに、シーリングファンの風向きには、天井に向かって吹く「上向き」と、床に向かって吹く「下向き」があります。
いずれも空気の循環が促されますが、夏の場合は「下向き」にする一方で、冬の場合は「上向き」にするのが良いでしょう。
夏の場合、風を下に送ることで直接的に体に当たり、体感温度を下げる効果を高めます。
一方で冬の場合、風を上に送ることで暖気が壁を伝い、下降していきます。
つまり、下降した暖気は効率的に部屋を循環する流れを作ってくれるのです。
シーリングファンをうまく使って、寒さに強い吹き抜け空間を楽しんでください。
吹き抜けをよりおしゃれに魅せるポイント
吹き抜けには確かにいくつかのデメリットがありますが、それぞれに対策をとることで、吹き抜けの良さを最大限に活かすことができます。
それに加え、木造住宅の吹き抜けをよりおしゃれに魅せるためのポイントをしっかり踏まえておくことも大切です。
まず、吹き抜けをよりおしゃれに作るためのポイントとしては、リビング階段の組み合わせがあります。
リビングに採用される吹き抜け構造に対して、リビング階段の相性はとても良く、リビングにより開放感を与えてくれます。
また、階段の手すりにはスチールなどの軽い素材を使うことで、吹き抜けとの統一性を図ることができ、部屋全体をよりおしゃれに見せられます。
そして、もう一つのポイントは、吹き抜けの窓の高さを揃えることです。
吹き抜けのメリットの一つに、日光を最大限窓から取り込める点があります。
このメリットを活かすために、吹き抜けにはいくつかの窓を設けますが、意識したいポイントはリビングから見上げたときの吹き抜けです。
その際、窓の高さがバラバラになっていると、統一性のない印象になってしまい、せっかくのおしゃれな吹き抜けも台無しになってしまいます。
窓の並びもデザインの一部と考え、統一感のある吹き抜けにすると良いでしょう。
以上のポイントを踏まえて、吹き抜けをより魅せる家作りをしてください。
吹き抜けは慎重に検討しよう
吹き抜けのある家は、開放感や明るさを感じさせ、おしゃれな空間を演出できます。
しかし、寒さへの弱さや音の響き、コストなど様々な面でデメリットもあるので、吹き抜けの採用はしっかりとした検討や対策が必要です。
これらのデメリットに工夫した対策を講じれることができれば、吹き抜けは私たちの生活をより素敵で快適な暮らしにしてくれるでしょう。