地目が畑の農地を相続した場合「駐車場」として活用するには

地目が畑などの農地を相続したときに、自分に農業を継ぐつもりがなく、駐車場にして活用しようとした場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。

「自分の土地なのだから、どのように使うのかは自由」と考えてしまいがちですが、そうではありません。

今回は、地目が「畑」の土地を相続し、その土地を駐車場として活用するためには、どんな手続きが必要なのか見ていきましょう。

地目が畑の農地を相続する場合の手続き

農業を継ぐつもりがないのに、地目が畑の農地を相続することになった場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。

また、相続した農地を駐車場などにして活用する場合には、どのようにしたら良いのでしょうか。

農地も通常の相続と同じように、原則として遺言書に従い、遺産分割を行います。

その後、農地の名義変更と相続税の申告をし、納税を行うというような流れになります。

このとき、遺言や遺産分割での相続内容については法律で細かく決められていないので、当事者同士で話し合って決めていくのが一般的です。

または、大まかな分割案を提案し、当事者の合意を取っていく方法が取られることもあります。

その後、各人の取得する相続財産が決定し、「遺産分割協議」を行うことになるのですが、これについては、相続人全員の合意が必要になります。

それでは、農地を相続する手続きを順を追ってご紹介しましょう。

地目が畑の農地を相続するには「遺産分割協議」が必要

地目が畑の農地を相続した場合、相続人が一人のときは何の問題もなく、そのまま遺産を引き継ぐことになりますが、相続人が複数いた場合には「遺産分割協議」を行い相続する人を決めなくてはなりません。

その方法は、主に3つあります。

【現物分割】

遺産をそのままの状態で分割する、一番オーソドックスで分かりやすい方法です。

例えば、農地Aは長男が引き継ぎ、宅地Bは次男が相続するというように、元の状態を崩さずに分けるので、売買するのと違って分配計算などの手間がかかりません。

今回のような農地であれば、分筆して分けることになります。

【代償分割】

ある特定の相続人が財産を取得し、その分、財産を取得しなかった相続人に代償金としてお金を払う方法です。

例えば、相続人が長男と次男の二人いた場合、唯一の相続財産が評価額2,000万円の農地Aだったとき、農地Aを長男が相続し、その代わりに次男に評価額の2分の1、1,000万円を払うということになります。

この方法ですと、金銭で細かな調整ができるのでより公平さが保たれます。

【換価分割】

相続財産をすべて売却し金銭に換えて、その代金を相続人たちで分割するという方法です。

例えば、相続人が長男と次男の二人いた場合、相続財産をすべて売却した額が2,000万円であれば、1,000万円ずつ分け合うことになります。

こちらの方法も、金銭で細かな調整ができるのでより公平さが保たれます。

このようにして分割し、相続した農地を駐車場として活用するには、まだまだ必要な手続きがあります。

相続した農地を駐車場にするには「相続登記」を行う

遺産分割協議がまとまったら、次は土地の所有者を変更する手続き「相続登記」を行うことになります。

この相続登記は、「いつまでに行わなければならない」というような法律的な縛りはありません。

しかし、名義をそのまま変えずにいると、自分の土地であることを主張できなくなってしまいます。

まして、相続した地目が畑の農地を駐車場として活用するには、自分名義の土地にしておかないと不都合なことも起こるでしょう。

相続登記は義務ではなく、権利なのです。

したがって、相続登記は早めに行っておくことをおすすめします。

また、登記申請には次のような書類が必要になります。

・登記申請書
・戸籍謄本
・被相続人の住民票
・相続人の住民票
・固定資産評価証明書
・遺産分割協議書

以上の書類を揃えて法務局の窓口に申請すれば、7~10日ほどで手続きが完了します。

他にも、郵送やオンラインで自分で行うこともできますが、司法書士に依頼する方法もあります。

その場合は委任状が必要となり、司法書士への報酬も別途掛かることになります。

相続した農地は農業委員会に届出が必要

相続登記が完了したら、次は今まで所有していた人から遺産相続で農地を譲り受けた人へ、「名義変更」を行います。

これが、農地を相続するのに必要な手続きで、通常の不動産相続とは違うところです。

地目が畑の場合は、農地法が関わってきます。

そのため、農地の権利を移転する「名義変更」を行う場合には、原則として各市区町村の農業委員会か、または都道府県知事などの許可が必要となるのです。

売買や贈与を行うときには、この許可を必ず受ける必要がありますが、相続の場合には例外的ではありますが、農業委員会の許可は必要ありません。

これは、「農地を承継した」ということになるので、農地はそのままで減るわけではないからです。

しかし、名義変更をしていないと、相続した農地が自分のものとして認められないため、農業委員会へは相続してから10ヶ月以内に届出をしましょう。

また、この10か月の期限が過ぎてしまったときには、10万円以下の過料を課される場合もあるので注意してください。

そして、この相続した農地を駐車場として活用するには、農地転用する必要があります。

地目が畑の農地を駐車場として活用するときの注意点

地目が畑の土地を相続した場合、そのまま農地として活用するのであれば、何の問題もありません。

しかし、駐車場など、農地以外のものとして活用する場合には、「農地法」の規制が関わってきます。

「農地法」によると、農地の権利移動(名義変更)や農地の転用を行うときには、原則として農地法に基づいた許可を得る必要があるとされています。

農地法の許可については、次のようことが挙げられます。

【農地法3条/農地などの耕作目的での権利移動】

原則として、各地域の農業委員会での許可が必要ですが、法に基づいた財産分与、相続、包括遺贈、遺産分割、時効取得などの場合には、農業委員会の許可は必要ありません。

しかし、許可不要であっても、農業委員会への届出は必要です。

【農地法4条/農地の転用】

今回の場合のように相続してから駐車場にするなど、農地以外に転用するときには、原則として都道府県知事の許可が必要です。

しかし、市街化区域内にある農地は、前もって農業委員会に届出をしていれば許可は必要ありません。

【農地法5条/農地・採草放牧地の転用目的での権利移動】

転用するために権利を移動する場合には、原則として当事者が都道府県知事の許可を得る必要があります。

しかし、こちらも市街化区域内にある農地は、前もって農業委員会に届出をしていれば、許可は必要ありません。

相続した畑を駐車場にして活用するには地目変更が必要

前述したように、相続した畑を駐車場として活用するには、農地の転用を行わなければなりません。

つまり、地目「畑」を他のもので利用できるよう、地目を変更する必要があります。

相続した畑が「市街化区域」の場合は、届出をすれば駐車場として活用できるようになります。

その地域の農業委員会へ、必要な書類を揃えて提出するだけです。

賃貸駐車場にして、多くの車を停める場合には、「駐車場の必要性」について近隣住民の要望書を用意しなければならないこともあります。

いずれにしても、事前にどのような書類が必要なのか、農業委員会へ相談に行き、不備のないように書類を揃えて提出しましょう。

提出してから2週間ほどで結果が出ます。

しかし、「市街化調整区域」の場合は、その地域の都道府県知事に許可を得る必要があります。

手続きには2か月以上掛かることも多いので、申請に掛かる時間には余裕を持ちましょう。

原則として、市街化調整区域では農地をそれ以外の目的で利用することが認められていないので、許可を取るのが難しいです。

許可が取りにくい場合は、専門知識を持った、土地活用の専門業者に相談することをおすすめします。

地目「畑」を相続するときに知っておきたいこと

相続した土地が、地目「畑」のように農地だった場合、駐車場のように、他のものに転用して活用するには、さまざまな手続きが必要になります。

それは、国の農業を守る「農地法」が関わってくるからです。

市街化区域では、農業委員会への届出だけで良いですが、市街化調整区域では原則として他のものへの転用はできません。

相続する場合に、その農地がどの区域にあるのか知っておくと良いでしょう。