地目が公衆用道路!建築はできる?さまざまな「道路」の定義

公衆用道路として使われている道路を所有している場合、建築は可能なのか気になる方もいるようです。

公衆用道路は、「不動産登記事務取扱手続準則」で定義された地目のことで、登記権利証や登記識別情報、登記事項証明書の共同担保目録欄などで確認できます。

「公道」や「位置指定道路」などと混同されてしまうことがありますが、どのような道路だと認識すればいいのか、くわしくご説明していきます。

公衆用道路とは?「登記の地目」「固定資産税」2つを確認

公衆用道路とは、不動産登記事務取扱手続準則 第68条21号によると、「道路であるかどうかを問わず一般交通の用に供する道路」と定義されています。

土地の登記記録に記載のある23種類の地目の中のひとつですが、何度も定期的に周辺住民に知らせることはないので、その道路が公衆用道路なのか、判断するのが困難なケースもあるでしょう。

公衆用道路というと、高速道路や国道などの幅広くて交通量が多い道路だけでなく、林道、農道、里道のことも指しています。

私有地の中でも、一般の人が交通のために使う道路は公衆用道路とみなされます。

後述しますが、私道、公道ということと、公衆用道路という言葉には関係性がほとんどありません。

また、登記上で公衆用道路と定義されれば、私道で所有権を移転する場合の登録免許税は減ります。

そして、公衆用道路については、固定資産税上での定義も理解する必要があります。

固定資産税上で公衆用道路の扱いとされる場合には、固定資産税や都市計画税、不動産取得税が非課税です。

さて、ここまで公衆用道路についてご説明してきましたが、次項からは「公衆用道路に住宅などを建築することができるのか?」という疑問の答えを解説します。

地目が公衆用道路なら自由に建築できない

結論から申し上げると、地目が公衆用道路だという場合には、建物を建築することはできません。

公衆用道路は個人が自由に使っていい土地ではないからです。

多くの通行がある場合には、建築だけでなく、駐車スペースとして使ったり私物を置くことも基本的にはNGです。

公衆用道路として認定され、個人の管理下にないのであれば、建築確認ができません。

建築確認とは、建物の新築や改築、修繕などを行う前に建築関係の法令に適合されているか審査を受けることです。

もし分からない点があれば、各市役所の建築指導課などで、建築ができる土地なのか確認してみるといいでしょう。

もし、市役所で「未判定道路」ということが分かったら、未判定道路調査願いを出すことができます。

建物を建てたいと考えている土地について、事前にしっかりと調べておくことは重要なことです。

「道路」という言葉について整理しておこう

不動産の価値や建築の可否を決めるのが「道路」です。

「公衆用道路であり私道でもある」「道路と通路は違う」「位置指定道路は公道にもなる」などのことを聞くと、混乱してしまう方もいるのではないでしょうか。

「道路」と一口に言っても、さまざまな定義がありますので、確認しておきましょう。

●すべての道路を指す言葉

会話の中で「あそこの道路は~」と指すときなどに使う「道路」。

私道や公道、地目などを意識せずに日常生活の中で使う言葉です。

●「公道」と「私道」

道路の所有や管理が公的か私的か、ということを表わします。

道路の幅で決められるものではありません。

●不動産登記法による「地目」

上記でご説明した通りで、公道・私道いずれのパターンもあります。

●建築基準法による定義

これで定義された道路であれば建築確認を受けることができます。

公道も私道もあります。

●道路法による定義

ほとんどは公道です。

建築基準法で定義された道路のひとつとも言えます。

その道路に駐車できるか、ということを考える際には、道路法での取り決めを参考に判断します。

●道路運送法による定義

●その他の法律などによる定義

建築に直接的に関わるのは「建築基準法」による定義

前項からお分かりの通り、道路にはさまざまな法律上の定義があります。

おそらく、私道と公道の意味を正しく理解していれば混乱することはないでしょう。

公道というのは正確には、「みんなで使う」ということではなく、誰が所有し管理しているかということを表わします。

法律や記事の中で出てくる「道路」は、公道も私道もどちらも当てはまることが多いのですが、間違って説明されることもあるようです。

建築したいと考えた場合に、重要視されるのは「地目」というよりは「建築基準法による定義」です。

住宅を建てたい場合に大切なのは建築基準法、建築確認だということを覚えておきましょう。

ちなみに、位置指定道路というのが、建築基準法で定義されている道路のひとつです。

「公衆用道路と位置指定道路の違いは?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、公衆用道路は不動産登記法、位置指定道路は建築基準法で定義されているものです。

公衆用道路はどのような地目?

ここからは、建物の建築が許されていない公衆用道路という地目について、さらにくわしく掘り下げていきましょう。

●誰でも自由に通行できるわけではない公衆用道路がある

上記で、一般の人が交通のために使う道路は公衆用道路とみなされるとお伝えしました。

もちろん、不特定多数の人が通行している場合もありますが、通行できる人が限られていることもあります。

このように制限がある場合は、所有者や共有者はもちろんの通行可能です。

その他には、賃貸借契約や通行地役権設定契約を締結することによって通行が許可されるケースがあります。

●法務局は地目を公衆用道路に変更することができる

土地の所有者は、法務局に地目変更の申請をすることができます。

法務局の登記官が調査・確認し、確かに公衆用道路にすることができると判断した場合、変更手続きが行われることになります。

十分な情報がそろっていれば、申請書と添付の書類だけで変更できる場合もあります。

●固定資産税上での公衆用道路と認定されないと固定資産税などが非課税にならない

登記上で公衆用道路とされていても、固定資産税など非課税にするには、手続きが必要になります。

市区町村で公衆用道路認定申請をし、不特定多数の人が利用している道路かどうかなどの点が調べられて公衆用道路として認定されれば、非課税の対象となります。

建築に関わる位置指定道路の基準とは

公衆用道路という地目のご説明や、道路の定義をお伝えしてきました。

最後に、建築基準法で定められた位置指定道路についてご説明します。

範囲の広い土地を区画して分譲する際に、直接的に道路に接していない土地ができることがあります。

そうした場合は、一定の築造基準に沿った私道を設け、特定行政庁へ申請して位置指定・認定を受けることになります。

基準は以下のことが挙げられます。

・幅員は4m以上
・通り抜けできない場合には転回できるスペースを設ける
・道路の境界が明確
・角切りする

こうした道路を位置指定道路というのです。

形状を変更したい場合にも届け出が必要になります。

道路に接している中古住宅を購入する際には、土地の前面道路がどのような道路なのか、しっかりと確認しておくことが必要です。

前面道路の所有権や通行権、通行掘削承諾(私道内を掘る権利)について把握しておくことが求められるでしょう。

通行掘削承諾がないと、ガスや水道などの配管が自由にできなくなるおそれがあるからです。

場合によっては所有権が一人ではないので注意が必要です。

公衆用道路には建築できない

公衆用道路は、私道として個人が管理し、限られた人たちしか通行できない場合もありますが、登記されている以上は建物を建てるべきではありません。

道路には、法律上のさまざまな定義があります。

そのため、分かりにくく感じることもあるかもしれません。

ある特定の道路について、建築できるかできないか、デメリットはないか見極めるためには、市区町村の窓口で確認するか、土地家屋調査士などに相談することをおすすめします。