アパートなどの賃貸物件に入居する際、初期費用として敷金や保証金を支払うこともあります。
これらは担保のようなものですので、一般的には退去後に返還されるでしょう。
しかし中には償却されることもあり、そうなれば退去後に手元に戻ってこない可能性もあります。
この敷金や保証金の償却について、この記事でご説明していきます。
初期費用で支払うことの多い敷金とは?
アパートなどの賃貸物件に入居する際には、初期費用をだいたい家賃5か月程度支払うことが一般的です。
その初期費用にはいくつか項目がありますね。
例えば、下記のようなものです。
・前家賃
・管理費
・礼金
・鍵交換費用
・火災保険料
ほかにも引っ越し費用であったり、新しく家具・家電を購入する費用であったりがかかることもあります。
これらのほかには、敷金や保証金が挙げられます。
ここではまず、この敷金がどのようなものなのかをご説明していきます。
簡単にご説明すると、アパートの貸主に預けておく担保のようなものです。
例えばアパートの借主は、退去時に原状回復することを義務づけられています。
万が一原状回復しきれなかった部分があれば、修繕費用がかかることもあります。
その際、入居時の初期費用で支払った敷金からまかなわれることがほとんどです。
もし敷金以上の修繕費用がかかる場合は、別途請求されることでしょう。
このように、敷金を支払う目的の1つは退去時の原状回復に充てるためです。
ほかにも、家賃滞納リスクの担保とすることも、目的の1つといえます。
退去まで貸主に預けた状態となる敷金ですが、何事も問題がなければ敷金が使われることもないので、アパートを退去する際に返還されるでしょう。
ただし中には、退去時に返還されず償却されることもあるようです。
これについては後ほどご説明します。
保証金はどんなもの?
敷金の次は、保証金についてお話をしていきます。
こちらもアパートに入居する際の初期費用で支払うものです。
アパートで生活している間に何かトラブルが起きた場合のために、貸主に担保として預けておくお金といわれています。
保証金も、退去時に原状回復しきれなかった部分への修繕費等に使われます。
家賃を滞納した場合も保証金から補てんされることもあるでしょう。
ここまで見ると、敷金と保証金の内容にほとんど違いはありませんね。
違いをひとつ挙げるとすれば、地域によってどちらが初期費用となるかが異なるということでしょう。
主に関西地方では保証金と呼ばれていて、ほかの地方では敷金と呼ばれています。
そのため、敷金と保証金を一緒に支払うことはほとんどないといえます。
呼び方が違うだけといえる敷金と保証金ですから、「どちらも償却されることがある」という点についても同じです。
償却については、次の項でくわしくお話ししていきます。
敷金と保証金は償却されることもある!この償却とは?
敷金と保証金は、アパートなどに入居する際の初期費用として支払いますが、担保のようなものですので退去後に返還されるのがほとんどです。
しかしどちらも償却されることがあり、償却されれば退去後に敷金や保証金が手元に全額戻ってくることはありません。
それではこの「償却」とは、どういう意味なのでしょうか。
先程、原状回復しきれなかった部分の修繕費は敷金からまかなわれる、とお伝えしました。
例えば修繕費が4万円かかったとすれば、敷金の4万円分は返還されません。
このように、退去後に敷金や保証金が返還されないことを、償却といいます。
償却にはいくつか方法があり、入居する物件がどうであるかは賃貸借契約書に記載されています。
償却にはどのような方法があるかを、次の項からご紹介していきます。
敷金や保証金の償却方法の1つ!実費償却とは?
先ほども触れましたように、敷金や保証金の償却方法はいくつかありますのでご紹介していきます。
●実費償却
一般的な敷金は、この実費償却に当てはまります。
退去する際、原状回復の修繕費の実費分を差し引かれ、残った敷金や保証金の金額がその後返還されます。
特に契約書に償却についての記載がない場合は、この方法で償却されることが多いです。
例えば家賃6万円のアパートに入居する際に、初期費用で敷金を家賃2か月分の12万円支払っていたとします。
そして退去時の原状回復がしきれず、修繕費として3万円かかったとしましょう。
この場合、敷金12万円のうち3万円は実費償却されるので、残りの9万円が退去後に手元に戻ってくるお金といえます。
特に原状回復などに問題がなければ、預けた12万円全額が退去後に返還されるでしょう。
敷金の特約とされることもある「償却◯か月分」とは
引き続き、敷金や保証金の償却についてお話ししていきます。
●解約時償却◯か月分
これは、「アパートを解約する際に敷金や保証金のうち家賃◯か月分を引かれる」というものです。
契約書によっては、「敷金のうち家賃1か月分を償却する」というような、「敷金償却」の特約として記載されている場合もあります。
この場合、退去時に原状回復の修繕費がかからなくても、家賃1か月分の敷金は返還されないことを意味します。
前の項での例であれば、家賃1か月分の6万円は必ず償却されてしまいます。
修繕費が3万円であっても6万円は償却されるので、9万円ではなく残りの6万円が退去後に返還されます。
ちなみにもし8万円の修繕費がかかってしまった場合は、家賃1か月分の6万円を超えてしまいますね。
この場合は6万円が差し引かれ、6万円が退去後に返還されます。
どのような償却なのか契約書で確認しよう!
ほかにも償却方法がありますので、ご紹介します。
●償却◯か月
これは、◯か月アパートに住んだ段階で、敷金や保証金が全額償却されてしまう、償却方法です。
例として、償却3か月としている場合は、入居して3か月経つと敷金や保証金が全額償却されてしまいます。
そうなれば、退去後に返還されることはありませんので、注意したい方法ともいえます。
●年◯パーセント償却
一番注意したいのが、この償却方法の場合です。
これは入居から1年経つごとに◯パーセントずつ敷金や保証金が減っていくものです。
この場合、契約更新の際に減ってしまった敷金や保証金を追加しなければいけない、という契約の場合もあります。
この契約のアパートでは、契約期間が2年だとすると、2年ごとに敷金や保証金を支払わなくてはいけません。
多くの方は、部屋も傷つけず家賃も滞納していないのに、償却され2年ごとに支払うのは嫌かもしれません。
事前に敷金や保証金の償却方法がどれであるかはよく確認しておくことが重要です。
賃貸借契約書にも記載されていますし、契約前に不動産会社からも説明があるかと思いますので、しっかりと確認したうえで入居するようにしましょう。
敷金や保証金の償却方法を契約前に必ずチェック!
アパート入居時の初期費用として、敷金や保証金を支払うことは多いです。
これらは担保のような役割ですので、退去後に借主に返還されるのが一般的です。
しかし中には償却されてしまうことがあり、敷金や保証金の償却方法はいくつかあります。
どの方法かによって、問題がなくても退去後に敷金などが手元に戻ってこない場合もありますので、契約を結ぶ前に契約書などで必ず確認しておくことが重要です。