マンションやアパートといった居住用賃貸物件あるいは事務所・店舗などの事業用賃貸物件の家賃は、「賃料」と「管理費」もしくは「共益費」で構成されています。
毎月、賃料と一緒に管理会社や大家さんに支払う管理費は何に使われているのでしょうか。
また、物件情報を見ると事業用賃貸物件は一円単位まで細かく数字が並んでいるのに、居住用賃貸物件は切りの良い数字になっています。
管理費には消費税がかかっているのでしょうか。
管理費は何のために支払うのか
家賃で賃料と一緒に支払う管理費は、主に建物の維持管理と運営に使われます。
マンションやアパートのエントランスや廊下、階段には照明器具があって灯りがついていますから、当然ですが電気代がかかります。
エレベーターがあればメンテナンス費用が必要になりますし、週に何回かは建物共用部分の清掃も入れなければなりません。
そういった費用に管理費は充てられています。
もしも、管理費徴収しない代わりに維持管理をやめてしまうと不便なことばかりになりそうです。
夜の遅い時間に帰宅して、エントランスや廊下が真っ暗だったら嫌ですね。
8階建てのマンションで、毎日、エレベーターを使わずに階段での昇り降りだったら辛いです。
清掃が入らないと、敷地内にゴミが散乱したり、靴についた泥がエントランスや廊下に残ったままになります。
やはり、快適に暮らすためにも維持管理は必要です。
維持管理に要する電気代や諸々の費用には消費税がかかるものが大半です。
次章から居住用賃貸物件と事業用賃貸物件の管理費における消費税について説明いたします。
居住用賃貸物件の家賃における管理費には消費税がかからない
居住用賃貸物件の家賃では賃料にも管理費にも消費税がかかりません。
実は消費税が導入された当初は、居住用賃貸物件の家賃にも消費税がかけられていたのです。
しかし、平成三年の秋に消費税法が改正され、社会政策上から居住用賃貸物件の貸し付けについては非課税扱いとなったのです。
物件の情報を見ると、ほとんどが賃料と同じように管理費も百円未満あるいは十円未満がゼロで切りの良い数字になっていますが、内税になっているわけではないのです。
居住用賃貸物件の管理会社や大家さんからすれば、電気代やメンテナンス費用は消費税がかかるので正直なところ、管理費にも消費税がかかってほしいのかもしれません。
ちなみに、居住用賃貸物件を借りる際に礼金が必要な物件がありますが、礼金も非課税扱いとなっています。
礼金は読んで字のごとくお礼として差し上げるお金で、返還されることはありません。
物件を借りるために必要な費用であり、課税対象とみなされそうですが、居住用賃貸物件では非課税扱いになります。
事業用賃貸物件の家賃における管理費には消費税がかかる
一方の事業用賃貸物件では、賃料と管理費に消費税がかかります。
平成三年の改正時で、事業用賃貸物件の家賃は非課税扱いの対象にはなりませんでした。
事務所・店舗の管理費で良く見受けられるのは、物件ごとに定めた坪単価に坪数を乗じて管理費を算出する方法です。
算出された数字に消費税をかけてお部屋の管理費とするので、居住用賃貸物件とは異なり、一円単位まで細かく数字が並びます。
物件の維持管理にかかる費用には消費税がかかるわけですから、居住用賃貸物件とは異なり、入居者からもらう管理費に消費税が加算されているのは自然なことなのかもしれません。
なお、事業用賃貸物件では「管理費なし」といった物件を見かけることがあります。
これは賃料に管理費を含めている形で、実際はまったくなしというわけではないのです。
居住用賃貸物件でも、「管理費なし」の物件はあります。
同じようにに管理費は賃料に含まれているのです。
また、事業用賃貸物件では礼金にも同様に消費税がかかります。
敷金とは異なって礼金は物件を借りるための条件として支払うお金ですから、権利の設定の対価となり、資産の譲渡等の対価と見なされるため、課税対象となるのです。
居住用賃貸物件では非課税扱いにされますが、事業用賃貸物件では消費税が加算されます。
法人が居住用賃貸物件を借りた場合でも管理費に消費税はかからないのか
個人ではなく法人が、社員のために社宅として居住用賃貸物件を借りる場合はどうなのでしょうか。
結論から言いますと、法人が居住用賃貸物件を借りる時も、やはり賃料と管理費といった家賃には消費税がかかりません。
なんとなく、法人の場合は家賃が課税対象になりそうなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
法人が営業活動を行ううえで必要な経費ですし、個人と比べれば大きな資金力を持っています。
しかし、居住用賃貸物件の貸し付けに関しては法人か個人かを問わず、賃料のみならず管理費も消費税がかからないことになっているのです。
大きな法人も小さな法人も条件は一緒です。
法人が借りて社員から家賃を天引きする時にも、もちろん、賃料や管理費に消費税はかかりません。
居住用賃貸物件でも家賃に消費税がかかる場合もある
居住用賃貸物件でも家賃に消費税がかかる場合もあります。
使用用途が居住のためではなく、事務所使用の場合です。
比較的小規模の事務所を構える際に、一般の事務所ビルではなく、マンションやアパートを借りる方がいらっしゃいます。
法律事務所や一人で仕事をしている個人の方が、マンション内に事務所を置いているケースを見かけると思います。
この場合は、事業用賃貸物件と同じ扱いとなり、家賃の賃料および管理費に消費税がかかってきます。
マンションやアパートだと事務所ビルと比べて家賃も安く済みますし、初期費用も事務所ビルほどはかかりません。
首都圏に本社がある法人が、地方に小さな拠点を設けたい場合にも利用されます。
ただし、すべてのマンションやアパートで事務所使用が可能なわけではありません。
インターネットで物件探しをする場合、検索条件で「事務所使用可」といった項目を設けている不動産サイトやポータルサイトが増えています。
事務所として使える物件の中から選ぶのが基本です。
居住用として使用する場合とは契約内容も異なってきますから、後からトラブルにならないよう、物件探しの際は気をつけてください。
なお、他にも期間が一ヶ月未満で居住用賃貸物件を借りる時も消費税がかかってきます。
居住用賃貸物件の貸し付けに関するものはすべて消費税がかからないのか
居住用賃貸物件の家賃は事務所使用など特殊な例を除いては、消費税がかかりません。
では、賃料や管理費あるいは敷金や礼金以外も非課税扱いになるのでしょうか。
賃貸でマンションやアパートを借りた経験をお持ちの方なら、不動産会社に仲介手数料を支払ったと思います。
仲介手数料は非課税扱いにはなりません。
不動産会社が希望する物件を案内してくれて、入居したいとなれば管理会社や大家さんとの間に立って契約手続きをしてくれます。
鍵の引き渡しまで、窓口となって仲介業務を行います。
仲介業務という役務(サービス)の提供を行い、それに伴う対価を得るわけです。
こちらは「業務」なので消費税が課税されます。
他にも鍵を交換する時には鍵屋さんがシリンダー交換の業務を行い、請求には消費税が加算されます。
すべてが非課税扱いとはならないのです。
賃貸物件でも管理費に消費税がかかる場合とかからない場合がある
管理費は賃料とは違って、物件の維持管理や運営に使われます。
同じ賃貸物件でも居住用賃貸物件の賃料や管理費には基本的に消費税がかからず、事業用賃貸物件には消費税がかかります。
ただし、使用用途によっては居住用賃貸物件でも賃料や管理費に消費税がかかってきます。
法人で経理処理をする時、契約時も毎月の処理の時も状況を良く判断して間違えないようご注意ください。