住宅の構造には様々な種類があります。
中でも自然な温もりを持つ木造住宅は、新築で選ばれることも多い、昔ながらの住宅です。
しかし、木造は他の構造と比べて防音性に劣る一面があるため、木造の新築を検討される方の中には、防音について心配する方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、木造住宅の防音性やその防音対策について、詳しくご説明していきます。
新築は木造を選びたい!そのメリットは?
近年では、鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、様々な工法による住宅があり、その技法の進歩も目まぐるしくあります。
もちろん、昔ながらの木造住宅も飛躍的に進歩しており、新築で木造住宅を選ぶ方も多いでしょう。
木造住宅の防音性についてお話していく前に、まずは木造住宅のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
・コストを安く抑えられる
鉄骨造などに比べると、木造は材料費を安く抑えることができます。
鉄骨造の坪単価相場は50~80万円である一方で、木造は40~70万円になります。
木材の種類によってもコストは上下しますが、工期も鉄骨造と比べると比較的短くなります。
・断熱性に優れる
木は鉄に比べて熱度伝導率が低いため、外気温が内部に影響しにくい特長があります。
そのため、夏は涼しく冬は暖かで快適な住まいを実現することができます。
・火災に強い
一見すると、木は燃えやすいため、木造は火災に弱いイメージがありますが、実は鉄骨造よりも防火性に優れています。
鉄骨の場合、長時間火災に晒されると急激に軟化する性質があるため、火災による倒壊リスクが高いと言えます。
その一方で木造の場合、木材は表面からゆっくり燃えるため、避難時間の確保が望めます。
以上のように、木造住宅はコストが安いだけではなく、季節の温度変化や火災に強い住まいを提供することができます。
また、他の建材にはない木の持つ温もりや優しさを感じることができることも、木造住宅の魅力の一つです。
防音性に欠ける木造住宅!デメリットについて
では続いて、新築を木造住宅にするデメリットを見ていきましょう。
・品質のばらつき
木造住宅の場合、現場で木材を加工する職人の腕次第で、品質にばらつきが生じることがあります。
また、木材の種類や質も品質に影響してくるので、設計段階であらかじめよく確認しておきましょう。
・シロアリ
他の建材に比べ、木造住宅はどうしてもシロアリ被害に遭いやすい傾向があります。
定期的なシロアリチェックや防虫剤を散布することで、シロアリ対策を行うことが重要です。
・防音性、遮音性が低い
鉄筋コンクリート(RC)などに比べ、防音性・遮音性が劣ります。
生活音の音漏れが気になる方、日常生活の中で音楽鑑賞や音楽演奏を楽しみたい方には、木造住宅は不向きである場合があります。
以上が、木造住宅の主なデメリットです。
やはり気になるのは防音性です。
では、木造住宅の防音性について、次項で詳しくご説明していきます。
木造の音に対する特徴とは?防音性が低い理由
建物の防音性は、構造によって大きく異なってきます。
例えば、鉄筋コンクリート(RC)は遮音性・防音性に優れ、その一方で、木造住宅は、新築であっても防音性には劣ります。
実際に、RCと比べると、木造は音を遮る遮音性が低い傾向にあるため、それに伴い防音性能も低くなります。
コンクリートの場合、性質的に音を跳ね返す特徴があり、外からの音を遮るのと同時に、内からの音も外に漏れづらくなります。
しかしその一方で、多数の微細な穴が点在している多孔性の木材は、音を跳ね返さずに程よく吸収し、密度の高い木材ほど音の伝導性が高くなります。
つまり、この音伝導性が持つ音響効果が、防音性の低さに繋がると言えます。
例えば、コンサートホールで木造建築が採用されているのも、音響効果に優れる特徴があるからです。
近年では、その防音性・遮音性を確保するために、様々な工法が用いられており、音に敏感な現代に合った木造住宅も増えてきています。
しかし、木造という性質上、RCや鉄骨に比べるとどうしても防音性に劣ります。
木造ならではの良さが、デメリットと表裏一体であることを踏まえた上で、木造住宅の新築を検討する必要がありますね。
新築を木造住宅に!防音性・遮音性を高める方法は?
前項では、木の持つ音響効果の性質が裏目に出ることで、木造住宅はどうしても防音性や遮音性に欠けることが分かりました。
では、新築時に防音性・遮音性を高めるには、どのような対策工事を行う必要があるのでしょうか。
まずは、床・壁・天井への対策について見ていきましょう。
床・壁・天井に防音対策を講じることは、外部からの音を遮断するだけでなく、内部からの騒音を遮断する効果が期待できます。
方法としては、二重構造で層を作ることで防音性能を高められます。
具体的に言うと、遮音タイプの下地ボードに断熱材や吸音材を入れることで、木材への音響効果を抑えることができます。
また、目板を張ったり、穿孔加工を施した共鳴板を用いることによって、より音響効果を弱めることが望めます。
さらに、仕上げ材として、布製クロスや凸凹のある仕上げ材を使用することで、防音を図ることができます。
特に演奏をする方や、子供がいる家庭の場合は、これらの防音対策をしっかりと行いたいところです。
注意点としては、防音工事を行うと、音が外に漏れないがために室内で大きく共鳴してしまう点です。
そのため、吸音仕上げなどの音響対策を室内に講じることも大切です。
防音対策は窓から!新築を快適な木造住宅に
では次に、木造住宅の新築時について、窓に対する防音対策を見ていきましょう。
窓は壁よりも薄いため、内部からの音漏れはもちろん、外部からの騒音も入れてしまう部分です。
一般的に、厚さおよそ20cmの外壁に対し、窓は5mmほどの厚さしかないことから、家の中では最も防音性・遮音性に欠ける場所と言っても良いでしょう。
正確に言うと、窓ガラスというよりも、サッシの隙間からの方が音の出入りは多いと言えるため、窓への防音対策は「サッシ」と「窓ガラス」の2つに着目して行うのがおすすめされます。
まず、サッシに対する防音対策を見ていきましょう。
そもそも窓サッシには、円滑な開閉ができるように隙間が空いており、アルミサッシの下枠には戸車が付いています。
その隙間が、外気や騒音を侵入させる通り道になっているのです。
サッシの防音性を高めるためには、防音用サッシにする方法があります。
既存の窓サッシを防音用に交換することは簡単なことではありませんが、新築時に防音用サッシにすることができれば、効果的な防音対策を図れます。
ちなみに、既存のサッシを防音用に交換する場合、工事には2~3日ほどかかると見て良いでしょう。
二重窓で防音効果をアップ!
木造住宅の新築に対する防音対策として、一番は「二重窓」の設置がおすすめできます。
「二重窓」とは「内窓」とも言われ、既存の窓の内側にもう一枚の窓を設置します。
二重窓はもともと寒冷地で作られたもので、二重窓の作り出す空気層が断熱や結露防止の役割を果たすことで知られていました。
しかし、内窓を置くことで作られる空気層は、断熱や結露防止だけでなく、音を遮断して防音する効果があることが分かり、防音業界から注目を集めることになりました。
実際の二重窓の遮音・防音性能は、内窓のガラスが3mmであっても、およそ40dB(デシベル)もの遮音効果が認められており、これは通常の窓の2倍の遮音性で、防音ガラスに匹敵する性能だと言われています。
騒音の目安となる数値は、以下の通りです。
・80dB以上:ガード下の電車の音、建設工事現場
・70~80dB:ピアノの音、掃除機
・60dB:会話、チャイム
・40~50dB:静かな事務所、住宅地、図書館
・40dB以下:ささやき、深夜の郊外
人がうるさく感じる音は、一般的に50dB以上とされています。
例えば80dBの騒音も、二重窓で対策を行えば40dBに抑えることが期待できます。
木造住宅で新築を検討している場合、防音性を高めたいのであれば、二重窓の設置も考えてみるのも良いでしょう。
マイホームを木造で快適に
現代の木造建築における技術は、音の視点からもアプローチがとられており、様々な工法によって防音性・遮音性の確保が行われています。
しかしながら、新築で木造住宅を選ぶにあたっては、それでも防音性が他の建材よりも劣ることをよく理解しておく必要があります。
理解した上でできる限りの対策を行い、快適な暮らしを目指していきましょう。