家族の人数やライフスタイルの変化をきっかけに、木造の家の増築を検討する方もいるのではないでしょうか。
しかし、いざ増築費用を知るためにネットを覗いてみても、様々な施工ケースが載せられているため、実際の費用を把握するにはなかなか難しいと言えます。
そこでこの記事では、木造住宅の増築における大まかな費用目安から、押さえておきたい注意点についてご説明していきます。
木造住宅を増築したい!増築のメリットは?
手狭な環境をより快適な住まいにするためには、増築以外にも新しく建て替えるという方法もあります。
しかし、家を新しく建て替える場合、増築工事よりもはるかに大きな費用を必要とするため、低予算かつ余った土地や空間を有効活用できる増築のほうが、より選ばれやすいと言えます。
さらに、建て替えと比較した場合、増築にはいくつかのメリットが挙げられます。
では、木造住宅の増築費用を見ていく前に、まずは増築の主なメリットを見ていきましょう。
①費用を抑えられる
家を建て替える場合、建て替え費用以外にも解体工事や廃棄物処理に費用が発生します。
一方で増築の場合、建て替えよりも費用を抑えることができる上に、予算に合わせた柔軟なプランで増築することができます。
②役所での申請手続きが少ない
家を新しく建て替える場合、解体・建て替えに際して申請手続きをする必要があります。
一方、増築の場合、防火地域・準防火地域以外の地域での増築や、10m²未満の増築であれば、役所での確認申請は不要になります。
ただし、建ぺい率や容積率、高さ制限など、法律に定められたことを満たす増築を前提としています。
③仮住まいが不要
新しく建て替える場合、工事期間中はアパートなどの仮住まいに引っ越す必要があり、それにかかる費用も考えなくてはなりません。
それに対し、増築は工事を進めながら生活を続けることができるため、仮住まいは不要になります。
ただし、増築工事の種類や状況によっては、仮住まいを用意する必要があります。
④節税できる
家を建て替える場合、不動産取得税などのいくつかの税金が大きな負担になります。
以上のように、建て替えと比べた増築のメリットはいくつかありますが、一番のポイントは費用を抑えることができる点と言えます。
建て替えと比較した増築のデメリットは?
では続いて、建て替えと比較した増築のデメリットについても見ていきましょう。
①間取りなどの自由度が低い
既存する住宅の構造によっては、間取りや住宅設備に制限が生じる場合があります。
それに対し、建て替えの場合は、不満のない自由な間取りや設備を採用することができます。
②デザインの調和が崩れる場合も
依頼する業者によっては、既存の外観・内装デザインとの調和が崩れる場合があります。
③補強・耐震工事で費用が高くなる可能性も
既存の建物の強度に問題がある場合は、補強・耐震工事も併せて行う必要があります。
例えば、増築する上で耐震基準に満たない木造の古い母屋がある場合、現行の耐震基準に対応させる必要があるため、大がかりな工事をしなければなりません。
そのため、状況によっては建て替え以上に費用がかかる場合もあるので、注意が必要です。
④固定資産税が増える
建て替えと比べると、それに際した税金は軽減できますが、床面積の増加に伴って固定資産税は増えます。
固定資産税は、役所を通した「家屋調査」を受けることで算出されます。
増築後に後悔しないためにも、あらかじめこれらのデメリットについては理解しておきましょう。
木造住宅の増築費用はどのくらい?内容次第で大きく変わる
これまでに、家の建て替えと比較した、増築のメリット・デメリットをそれぞれご説明してきました。
では、いよいよ木造住宅を増築するにあたり、その費用の目安を見ていきましょう。
増築費用はその内容によっては大きくばらつきますが、一般的な木造住宅である場合、2畳(一坪)あたりの相場は約70万円と見て良いでしょう。
つまり、4畳で140万円、6畳で210万円、8畳で280万円と考えることができます。
ちなみに、鉄骨住宅の場合は2畳あたり約100万円とやや高くなり、4畳で200万円、6畳で300万円、8畳で400万円となります。
また、2階部分に増築して部屋を増やす場合、その土台である1階部分の強度が重要になってきます。
特に、平屋建てに2階を増築する場合は、より土台の強度が求められるため、まずは1階の補強工事を行う必要があります。
そのため、増築の総合的な費用はそれらを踏まえた金額になることを覚えておきましょう。
また、増築で高額になるケースとしては、2階にトイレやお風呂を増築する場合です。
トイレの場合、それに付随する配管工事やトイレ本体の費用、さらにお風呂を増築するのであれば、水回りの配管工事や浴槽本体の費用もかかってくるため、その点についてもあらかじめ把握しておいてください。
より正確な費用を知りたい場合は、いくつかの業者に見積もりを出してもらうと良いでしょう。
増築で知っておきたい注意点!その①「建ぺい率」と「容積率」
前項では、木造住宅を増築する際にかかる費用について見てきました。
前述した通り、増築の費用は内容によって大幅に異なってくるため、補強工事や水回り工事など、内容に付随した工事費用を把握しておくことが重要です。
また、それ以外にも、家を増築するにあたって気を付けたい2つの注意点をご説明していきます。
まず、1つ目は「建ぺい率」と「容積率」です。
「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指し、「容積率」とは敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。
これらの建築面積、延べ床面積は都市計画によって決められており、この制限をオーバーしてしまう増築はできません。
建ぺい率は地域や土地の用途によって変わり、住宅用地の場合は30~80%となっています。
例えば、200m²の敷地面積に対して、指定される建ぺい率が60%である場合、200m²×60%=120m²となるため、建築面積は120m²を上限に家を建てることができます。
したがって、仮に既存の住宅が100m²である場合、増築可能な建築面積は20m²以内ということになるわけです。
また、200m²の敷地面積に対し、指定される容積率が200%である場合、200m²×200%=400m²となるため、延べ床面積の上限は400m²ということになります。
これらの建ぺい率、容積率は増築業者が調査してくれるため、基本的にオーバーすることはありませんが、設計段階でこれらの確認はしっかり行っておくのが良いでしょう。
増築で知っておきたい注意点!その②確認申請とその費用
家を増築する際の2つ目の注意点は、「確認申請」です。
確認申請とは、増築をするために役所に対して建築確認を申請し、審査を受ける手続きです。
前述したように、防火地域・準防火地域以外の地域での増築や、10m²未満の増築であれば、この確認申請は不要になります。
しかし、防火地域・準防火地域での増築や、10m²以上の増築をする場合は、役所での確認申請が必要になります。
防火地域とは、火災の延焼が拡大しやすい地域を守るために定められたエリアです。
そのエリアに住宅や建物を建てる場合は、火災に強い耐火性能の備わった建材や窓を使用するなど、都市計画法に基づいたルールが設けられています。
つまり、増築の確認申請では、都市計画法や建築基準法に適合しているかどうかの調査を行います。
なお、確認申請は役所以外の民間窓口でも行うことができるため、申請費用は場所によって少なからず異なりますが、一般的には10,000~20,000円程度がかかってきます。
ただし、申請に必要な書類作成には専門的な知識を必要とするため、建築業者に依頼するのが無難です。
そのため、確認申請には代行手数料を含め、おおよそ14万円が相場と考えておきましょう。
以上の2つの注意点は、木造でも鉄骨でも必ず関わってくるポイントなので、あらかじめ押さえておいてください。
木造住宅の増築費用を安く抑えるには?3つのポイント
これまでに、木造住宅を増築するにあたり、その費用や注意点についてご説明してきました。
木造住宅の増築は、鉄骨よりも比較的安く抑えることができますが、内容次第では費用が膨らむ可能性があります。
また、確認申請にも費用がかかってくるため、特に予算に限りがある場合は、できるだけ費用をカットしたいものです。
では、増築の費用を少しでも抑えるためには、どのようなことをポイントに進めていくのが良いのでしょうか。
そのポイントを3つに分けて見ていきましょう。
①地元の中小業者に依頼する
大手業者の場合、下請け会社が中心となって行うため、その分中間マージンの費用がかかってきます。
そのため、地元の中小業者に依頼するのがおすすめできます。
その際は、できるだけ増築やリフォーム実績が豊富な業者を探すのが良いでしょう。
②複数社に見積もり依頼する
見積もりは1つの業者に依頼するのではなく、複数に依頼することで相場を把握します。
また、他社でも検討していることを伝えれば、見積もりを低めに提示してくれる場合もあります。
③予算と要望を明確にする
あらかじめ予算と要望を伝えておくことも大切です。
業者は予算と要望を把握することで、それに合ったプランをいくつか提案することができ、円滑なプラン作りに繋げることができます。
以上3つのポイントを踏まえることで、増築費用を抑えることに繋がります。
ただし、費用を抑えすぎて後悔することのないよう、納得のいく増築工事をしていきましょう。
後悔のない快適な増築を
家の増築は、建て替えよりも比較的安く抑えることができますが、内容次第では費用が膨らむ可能性があります。
家の補強工事や固定資産税の増加など、増築のデメリットは必ず把握しておきましょう。
また、できるだけ費用を抑えるためにも、納得のいく業者選びは重要なポイントです。
今回の記事を参考に、後悔のない快適な住まいを手に入れましょう。