賃貸借契約の連帯保証人になっていると、「家賃が支払われていないので支払いをお願いします」との連絡がくることがあります。
おそらく一定期間、家賃滞納されているのでしょうが、住んでいたわけでもないのに「はい、そうですか」と簡単に支払えるものでもありません。
しかし放っておいても催促がなくなることはないでしょう。
借金にも時効があるように、家賃滞納にも時効があります。
そして時効は連帯保証人においても成立します。
どのような状況で時効が成立するのか見ていきましょう。
家賃滞納の時効成立の条件は?
借金などの債権には時効があります。
そしてあまり知られていませんが、家賃も債権に含まれるため時効の制度が適用されることになります。
家賃滞納の時効が成立する条件は次の通りです。
①家賃滞納から5年以上経過していること
家賃滞納の時効が成立するためには5年以上経過している必要があります。
5年を超えた分だけが時効の適応となりますので、住み続けて家賃滞納をしている場合全ての債権がなくなるわけではありません。
②訴えられていないこと
裁判などを起こされ訴えられてしまうと、時効のカウントダウンはストップしてしまいます。
③5年間一度も支払いをしていない
家賃滞納の時効を成立させるためには成立までの5年間、一度も支払いをしていないことという条件を満たしている必要があります。
一部でも支払いをしたということは「家賃滞納を認めた」ということになるからです。
この3つの条件を全て満たせば、家賃滞納の時効は成立します。
この条件は借主である主債務者が時効を成立させるだけではなく、連帯保証人が時効を成立するための条件ともなります。
家賃滞納の時効の起算日はいつ?
債権の時効は一般的には起算日から10年、会社等営利目的であれば起算日から5年となります。
家賃滞納については起算日から5年で時効です。
では、この起算日とはいつの時点を指すのでしょうか?
家賃滞納の時効の起算日は、最終返済日の翌日となっています。
ここで注意して欲しいのは、家賃は毎月支払いが必要な債権であるということです。
通常の賃貸借契約では、翌月分の家賃を当月末までに支払うようになっていることがほとんどかと思われます。
例えば「4月分の家賃は3月末までに支払う」といった具合です。
この場合、4月分の家賃は3月31日が最終返済日となり翌日の4月1日より時効が進行していきます。
そして5年後の4月1日に家賃滞納の時効が成立します。
家賃は住み続ける以上永久的に支払わなければならないものなので、毎月の家賃の時効は個別に進行していくことに注意しましょう。
起算日の考え方も主債務者、連帯保証人ともに同じです。
連帯保証人の時効は個人で進行する!
家賃滞納について債務者つまり借主と同じ条件で、連帯保証人にも時効が成立します。
従って連帯保証人の連帯保証債務も時効によって5年で消滅します。
しかし連帯保証人の連帯保証債務は「借主が家賃を支払う」という主債務とは、また別の債務となります。
借主である主債務者が家賃滞納すると大家さんはいつでも連帯保証人に請求することが出来、連帯保証人は基本的に支払いに応じなければなりません。
さらに連帯保証人の時効は個別に進行していきます。
借主である主債務者の時効が成立したからと言って、連帯保証人の時効が成立するとは限りません。
おかしな話、借主で家賃滞納をした本人が支払わなくてよくなり、連帯保証人にのみ支払い責任が生ずることもありえてしまうのです。
しかも連帯保証人が複数の場合、連帯保証人のうち1人に発生した事由は他の連帯保証人に影響しないことになっています。
他の連帯保証人について時効が成立したからと言って、連帯保証債務の全ての時効が成立するわけではないことに注意しましょう。
連帯保証人が家賃滞納の時効を援用するためには?
民法によると「主債務者に対して生じた時効中断事由は連帯保証人に対しても効力を生じる」と定められています。
この規定により連帯保証人が時効を成立させるためには、連帯保証人が一切の支払いをしていないことはもちろん、家賃滞納をした本人も支払いをしていないことが条件となります。
主債務者が時効完成までの間に1度でも家賃滞納している分の一部を支払ったり、請求を受けていると主債務者だけでなく連帯保証人の時効も中断します。
この場合の請求とは、口頭での請求や内容証明などの催告は含まれないことに注意しましょう。
支払い督促の申立てや訴訟の提起、民事調停の申立てなどを指しています。
さらに連帯保証人の家賃滞納債務に対して時効が成立しても、自動的に債務がなくなるわけではありません。
「時効の援用」という手続きが必要となります。
時効の援用とは簡単に言えば「時効が成立したから借金は払わないよ!」という意思表示を債権者にすることです。
時効の援用について、特に決められたことはないので債権者に口頭で「時効を援用します」と伝えても構いません。
しかし、その後のトラブル回避のためには書面による手続きが望ましいでしょう。
具体的には時効援用通知書を内容証明郵便で送るなどの方法があります。
家賃滞納の時効を援用する時の注意点とは?
自分が借りた家の家賃滞納ではないのでいざ「支払ってください」と言われても、なかなか諦めがつかないものでしょう。
時効の援用をすることで連帯保証人は家賃滞納分を支払う必要がなくなります。
しかし時効の援用には注意点があることも、知っておかなければなりません。
まずは時効が成立するまでに借金が増え続け、精神的に辛いことです。
賃貸借契約には家賃滞納の場合の遅延金の定めも含まれていますので、退去後新たな家賃が発生しなくとも借金は増え続けていきます。
そして家賃滞納の時効が成立するまで、連帯保証人への大家さんから催促は続くでしょう。
最近では家賃保証サービスに加入することが必須となっているアパートも多いので、その催促はさらに厳しいものとなることは間違いありません。
さらに時効を援用することで、新しくアパートを借りることが出来ないかもしれないという注意点もあります。
家賃保証サービスに加入していて家賃滞納で時効を援用した場合、新たに家賃保証サービスを利用し賃貸借契約を結ぶことは不可能でしょう。
時効を援用することはいいことばかりではないのです。
連帯保証人から外れる方法はある?
ここまでお話ししたとおり、連帯保証人は主債務者と同等の責任が発生します。
賃貸借契約の連帯保証人となると何故だか軽視されがちなのですが、連帯保証人が部屋を借りていると思ってもらって間違いありません。
家賃滞納があれば代わりに支払わなければならないし、全責任を一緒に負わなければなりません。
時効を成立させるのだってそう簡単なことではありません。
では、連帯保証人を外れることは出来ないのでしょうか?
連帯保証人になってしまうと、連帯保証人だけの意思では外れることは出来ません。
債権者の承諾が必要となります。
賃貸借契約は2年契約となっていることが多いので、更新のタイミングなどを見計らうと良いでしょう。
自動更新となると連帯保証契約も自動更新されてしまうので、注意してください。
連帯保証人を外れるためには連帯保証契約を継続しないことを債権者である大家さんや不動産業者に伝え、主債務者である借主に連帯保証人には他の人を立ててもらうようにしましょう。
連帯保証人にも時効は成立する!
家賃滞納について連帯保証人にも時効は成立します。
しかし時効を成立させるための要件は決して易しいものではありません。
さらに時効を援用するデメリットがあることも胸に留めておきましょう。
連帯保証人は1度引き受けてしまうとそう簡単に外れてしまうことはできません。
家賃滞納が起こってしまえば、外れることはほぼ不可能となることを頭に入れておいてくださいね。