不動産を所有し、所有権を行使するために不動産登記を行います。
しかし結婚や相続などを理由に、登記している事項が変わってしまうことがあります。
このような場合には、名義変更などの変更の登記をすることが一般的です。
もちろん専門家へ依頼することもできますが、あまり難しいものではないので自分自身で行うことも可能です。
登記事項の変更手続きについてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
結婚で氏が変わった時は名義変更しなければいけない?
日本では夫婦別姓が認められていないため、結婚をするとどちらか一方がどちらか一方の氏を名乗ることになります。
どちらの氏を名乗るかどうかは決められていませんが、なぜだか結婚する人たちの95%以上が夫の氏を名乗ると言われています。
妻の氏を名乗る人は5%にも満たないので、昔は結婚によって不動産登記の所有者名義の変更をしなければならない事例はあまり多くはありませんでした。
しかし近年の女性の社会進出により、不動産を所有する女性も増えてきました。
妻の氏を名乗る人の割合は増えていませんが、不動産を所有する女性は増えてきたのです。
そのため結婚によって、不動産登記に記載された事項が変更となることがあります。
所有者自体は変わらないのですが、所有者の名義が変わるため変更する必要がでてきます。
これを「登記名義人表示変更登記」と言い、名義変更とは異なります。
この登記名義人表示変更登記は、必ずしもしなければならないものではありません。
不動産登記法をみても、変更事項があったとしても修正しなければならないなどということはどこにも書かれていません。
登記名義人表示変更登記をする場合、どのようにすればいいかは次項でご説明します。
名義変更ではなく「登記名義人表示変更登記」をする場合どうすればいい?
結婚をして氏が変わった場合に行う登記名義人表示変更登記は、名義変更とは異なります。
結婚において配偶者に不動産を譲渡する場合や結婚した配偶者の不動産を相続する場合などは名義変更となりますが、所有者の氏が変わった場合には所有者自体が変わるわけではないからです。
しかし所有者の氏が異なったままでは、様々な不具合も出てくるでしょう。
そのため「登記名義人表示変更登記」を行います。
この登記名義人表示変更登記、実はそう難しいものではありません。
不動産を管轄する法務局へ申請書と必要書類を提出することで、登記名義人表示変更登記は完了します。
必要となるのは、氏の変更があったことを証明できる書類です。
そのためには戸籍謄本又は戸籍抄本が必要となります。
さらに登記名義人の本籍と住所が異なる場合には、住民票謄本又は戸籍の附票が必要となることがあります。
これは、戸籍謄本上の改姓者と登記名義人が同一であることを証明するためです。
法務局へ申請に行く時には、物件を特定できるものを一緒に持参するようにしましょう。
登記事項証明書や権利書、固定資産税の通知書などです。
申請前に事前に一度、相談に行っておくとスムーズです。
結婚と同時に住所も変わった!変更の登記には何が必要?
結婚の際に、氏だけではなく住所が変更となることも多いでしょう。
この場合には登記名義人表示変更登記だけではなく住所の変更登記も必要となります。
長い年月が経ってしまうと登記名義人の住所変更に必要な変更証明書が発行されないこともありますから、早めに済ませておくと良いでしょう。
住所の変更には、住民票又は戸籍の附票が必要となります。
登記事項証明書に記載されている住所から現在の住所に至るまでの、全ての住所移転の経緯が記載されているものが必要となりますので、何回も住所を移転している場合は戸籍の附票を用いた方がいいかもしれません。
さらに結婚で氏を変更するのと同時に住所も変更する場合には、戸籍謄本又は戸籍抄本と本籍記載の住民票が必要となりますので注意してください。
書類さえ揃えれば難しい登記ではないのですが、氏と住所が同時に変更になる場合必要書類が複雑になることもあります。
まずは一度管轄の法務局へ相談に行ってみるとよいでしょう。
次項では、名義変更の登記や登記名義人表示変更登記にかかる費用についてご説明します。
名義変更の登記や登記名義人表示変更登記にかかる費用は?
結婚で氏が変わった場合、変更の登記にはいくらくらいの費用がかかるのでしょうか?
売買や贈与、相続などによる名義変更の登記は登記原因によって登録免許税が変わってくるのですが、登記名義人表示変更登記の登録免許税は1物件につき1,000円と決まっています。
土地1筆と建物1つを所有していれば、登録免許税は2,000円です。
土地は1筆に見えて、何筆にも分かれていることもありますので注意しましょう。
さらに添付書類として必要な戸籍謄本や住民票、戸籍の附票などの取得費が実費としてかかってきます。
自治体によって金額に変わりがありますが、戸籍謄本で450円程度、住民票が300円程度、戸籍の附票が300円程度となっています。
また、法務局は平日8時30分から17時15分までしか開いていません。
この時間内に行くことが難しい場合には、専門家に依頼することとなります。
その場合にはもちろん、これまで説明した費用とは別に報酬を支払わなければなりません。
氏の変更だけであれば1万円程で済むかと思いますが、住所変更も依頼する場合移転回数などによってはもっとかかる可能性もあります。
依頼する専門家によっても金額は変わりますから、複数見積もりを取ってみると良いでしょう。
名義変更の場合は登記名義人表示変更が必要
結婚して氏が変わった時などに行う登記名義人表示変更登記ですが、自分で行うとしても少なからず費用がかかります。
所有している不動産が増えればその費用は増えていきますし、少なくても時間がかかります。
しなくていいならしたくないと、考える人もいるでしょう。
結論から言えば、登記名義人表示変更登記はしなくても問題ありません。
義務ではないからです。
しかし、売買や贈与、相続での名義変更では所有者の印鑑証明書が必要となるので登記名義人表示変更を行わなければなりません。
売却を考えていない間は無理にする必要はないと言えますが、いずれは相続が発生する可能性が高いので早いうちにやっておく方が良いかもしれません。
何代も相続が続くとその分権利関係が複雑になり、専門家に依頼すると余分な費用がかかってしまいます。
結婚以外で登記の変更が必要となるのは?
結婚で氏が変わる以外で登記名義人表示変更登記が必要となるのは、住所が変わった時です。
住所が変わるのは何も、引っ越しだけではありません。
住居表示制度を導入していない自治体が住居表示制度を導入すると、新しい住所が割り振られ以前とは異なる住所になることがあります。
引っ越し等で住所が変わった時はもちろん、住居表示制度の導入により住所が変わった時も登記名義人表示変更登記が必要となるので注意しましょう。
また氏ではなく名が変更となった場合にも、登記名義人表示変更登記は必要です。
一方で、登記の名義変更が必要となるのは相続や贈与、売買などにより所有者自体が変わった時です。
例えば結婚相手の不動産を相続により取得したとしても、名義変更をしないままでは所有権を主張することはできません。
不動産を担保に借入をするにも、抵当権の設定もできません。
所有者が変更した場合には義務ではないが、名義変更しておいた方がいいと考えておきましょう。
変更の登記はお早めに!
結婚して氏が変わった時などは登記名義人表示変更登記をします。
この登記は売買や贈与、相続の時に行う名義変更とは異なり、登録免許税も一件につき1,000円で行うことができます。
登記名義人表示変更登記は義務ではないため、必ずしもする必要があるわけではないのですが将来的に必要となるケースが出てきます。
特に売却や抵当権設定には必要となってきますので、早めに行っておくことをおすすめします。