アパートやマンションの一室を事業用として借りる場合もありますよね。
その場合も貸主と借主の間で賃貸借契約を結び、初期費用を支払い入居することになるでしょう。
そんな初期費用の1つには礼金が挙げられ、事業用として物件を借りる場合、この礼金が消費税の課税対象になります。
そこで今回は、事業用としてアパートなどを借りる場合に、礼金などに消費税が課税される理由などについてお話ししていきます。
賃貸物件を事業用で借りる場合とは?
一般的には居住用としてアパートやマンションは賃貸借契約されますが、中には事業用として契約されることもあります。
例えば、オフィスやテナントとして借りる場合が挙げられます。
中には貸事務所や貸店舗として、主にアパートやマンションの1階を借りることもあるでしょう。
よくマンションの1階部分に美容室や学習塾があるのを見たことはないでしょうか。
ほかにもイタリアンなどの飲食店が入っていることもあります。
こういったものが事業用に該当し、アパートなどを事業用として借りるのか、居住用として借りるのかで、入居時の初期費用に消費税が課税されるのか違ってきます。
その1つに礼金が挙げられますが、次の項では賃貸物件の初期費用にはどんなものがあるかをまずは見ていきましょう。
賃貸物件を借りる際の初期費用
居住用でも事業用でも、アパートやマンションを借りて入居する際には、初期費用を支払うことになります。
その初期費用にはどんなものがあるかというと、下記のようなものが挙げられます。
・敷金
・礼金
・前家賃
・仲介手数料(不動産会社を介した場合)
・火災保険料
・保証料
・引っ越し費用
・鍵の交換料
・管理費、共益費
これらをトータルしてだいたい家賃5か月分程度の金額は、初期費用でかかることが多いそうです。
事業用として物件を借りる場合は、礼金など一部の費用に消費税が課税されることになります。
ではなぜ事業用として物件を借りる場合、礼金に消費税が課税されるのでしょうか。
次項でお伝えします。
事業用で借りる場合!礼金に消費税が課税されるのはなぜ?
アパートやマンションを事業用として借りる場合、初期費用の項目のうち、いくつかには消費税が課税されます。
その1つには礼金が挙げられますが、なぜ礼金に消費税が課税されるのでしょうか。
その理由は、礼金が賃貸借契約を満了しても、借主に返還されることがないからです。
礼金の返還がされなければ、その礼金は権利設定の対価と見なされます。
一般的に消費税は、事業者が事業として対価を得て行う取引を、課税要件としています。
そのため、この場合の礼金は消費税の課税要件に満たしているので、消費税が課税されるのです。
そうなれば、「なぜ居住用では礼金に消費税が課税されないのか」と疑問に感じる方もいるかと思います。
この疑問については、次の項でご説明していきます。
居住用の場合はなぜ礼金に消費税がかからない?
事業用としてアパートなどを借りる場合、礼金に消費税が課税される理由は前の項でお伝えしたとおりです。
ところが中には、「そうなればなぜ居住用の場合の礼金には消費税がかからないのか」と、疑問に感じる方もいることでしょう。
居住用として借りる場合も、礼金が返還されることはありません。
それならば居住用でも消費税の課税要件に満たしていると思いますよね。
居住用では礼金に消費税がかからない理由を、ここでご説明していきます。
消費税の課税要件を満たす取引の中には、非課税取引とするものがあります。
例えば「学校教育」に関するものです。
学校教育法が規定する学校の授業料や入学金などにおいては、消費税は非課税としています。
ほかには、社会保険医療の給付や介護保険サービスの提供なども(法律に基づいている場合)非課税となります。
さらに、「住宅の貸付け」も消費税の非課税取引の1つとされています。
ただし住宅の貸付けが消費税の非課税対象になるには、契約において人の「居住用」として貸すことが明らかなものに限る、と決められています。
そのため、居住用として借りることがはっきりとしている場合は、家賃や礼金などの費用に消費税はかからないのです。
しかし1か月未満の貸付けの場合は、居住用でも消費税の課税対象となるようですのでご注意ください。
これらのように、消費税としてなじまないものや、住宅の貸付けを含む社会政策の配慮などから、消費税が課税されない取引があるため、それに該当する取引であれば消費税が課税されることはありません。
これは国税庁のHPで確認することができますので、一度見てみると良いかもしれません。
礼金以外のものも事業用であれば消費税が課税される
ここまでは主に礼金についてお話をしてきましたが、ほかにも事業用としてアパートやマンションを借りる場合、消費税が課税されるものがあります。
例えば、「前家賃」「管理費、共益費」が挙げられます。
これらは礼金同様、居住用の場合は消費税はかかりませんが、事業用の場合は消費税の課税対象です。
ほかにも消費税がかかる項目はありますが、以下の項目は居住用の場合でも消費税がかかるものです。
・仲介手数料
・引っ越し費用
・鍵の交換料
これらに関しては「事業として対価を得ているもの」に該当し、非課税となる対象からはずれています。
仲介手数料を例にご説明すると、まず仲介手数料は貸主と借主の賃貸借契約を、不動産会社が仲介する際に発生する費用です。
このとき不動産会社は仲介サービス(事業)を行い、その成功報酬として仲介手数料(対価)を得ることになります。
これは消費税の課税要件にぴったり当てはまるので、居住用・事業用問わず消費税が課税されることになるのです。
ほかの引っ越し費用や鍵の交換料も同様のことがいえます。
これら以外には、ハウスクリーニング代や駐車場使用料なども該当します。
居住用の場合でも、消費税がかかる費用は多くありますので、こちらも確認しておくと良いですね。
事業用でも消費税がかからない初期費用がある!
前の項とは反対に、居住用でも事業用でも関係なしに消費税が非課税となる項目もあります。
それは敷金で、敷金は礼金とは違い、退去時に特に問題がなければ基本的には返還されるものです。
返還されれば対価にあたることはないので、消費税の課税要件の対象とはなりません。
そのため、敷金の消費税は非課税となるのです。
敷金のほかには、火災保険料や保証料も同じようなことがいえます。
ただし、敷金でも償却されることがわかっているものには消費税がかかることがありますので、賃貸借契約書をよく確認しておくようにしましょう。
この記事でお話ししてきましたように、同じ入居時の初期費用でも、どんな目的でアパートやマンションを借り、どんな費用かによって消費税が課税されるかされないかは分かれます。
事業用として物件を借りる場合は、あとで混乱しないようどの費用に消費税がかかるのか覚えておきましょう。
どの費用に消費税がかかるか頭に入れておこう
事業用としてアパートやマンションを借りる場合でも、賃貸借契約を結び、初期費用を支払います。
その初期費用も居住用では消費税は非課税とされていますが、事業用の場合は消費税がかかる費用もあります。
その1つに礼金が挙げられますが、敷金などにおいては課税はされません。
事業用として物件を借りる予定がある方は、どれに消費税がかかるか頭に入れておくと良いでしょう。