家造りやアパート経営をする時に「耐用年数」というワードが出てくることがよくあります。
聞いたことがあっても、細かな内容まで把握している人は少ないのではないでしょうか?
自宅やアパート経営の場合多くは軽量鉄骨造や木造で建築しますが、どちらで建築した方がいいのか悩む方も多いでしょう。
実は構造の違いで耐用年数にも違いがでてきてしまうのです。
軽量鉄骨と木造の耐用年数やその他の違いについてご紹介していきます。
耐用年数には種類がある!?
軽量鉄骨や木造など建築物の「耐用年数」と言っても、実は耐用年数には種類があります。
まずは「法定耐用年数」と言って、広く認知されているのはこのことでしょう。
法定耐用年数とは減価償却費用を計算するために国が設定したもので、主に税務申告や銀行の融資期間の計算などに使われることが多くなっています。
法定耐用年数は構造のみによって分けられており、変化することがありません。
法定耐用年数以外には「物理的耐用年数」というものがあります。
建築物は木材や鉄骨材など、材料を組み合わせて作られています。
どんなに優れた材料を用いても、物理的あるいは化学的原因により劣化することは避けられません。
品質の維持ができる期間を物理的耐用年数と言い、これは環境や立地、メンテナンスによって大きな差が出るので一概に建築年数だけで判断することはできないでしょう。
他にも「経済的耐用年数」というものがあり、これは不動産的価値がなくなるまでの期間を指しています。
しかし、何年経てば価値がなくなるかということは専門家でさえ正確に定めるのか難しいところです。
同じハウスメーカーで作った同じ間取りであっても、メンテナンス次第でかなりの差が出てしまうためその辺りも考慮する必要があるのです。
軽量鉄骨の耐用年数は?
では軽量鉄骨造の場合、法定耐用年数はどれくらいで設定されているのでしょうか?
金属造の場合は厚みによって法定耐用年数が分かれるのですが、軽量鉄骨も金属造というカテゴリに分けられます。
鉄骨は軽量鉄骨と重量鉄骨に分けられますが、軽量鉄骨とは厚さ4mm未満の鋼材のことを言います。
主要部材を前もって工場で生産し、現場で組み立てて設置するプレハブ工法で作られるため建築するハウスメーカーが限られてしまうのが欠点ですが、工期が短く済むためローコストという魅力があります。
さらに法定耐用年数は軽量鉄骨でも木造でも、事業用か非事業用かによっても違いが出てきます。
厚さ3mm以下の軽量鉄骨造だと事業用で19年、非事業用で28年です。
厚さ3~4mmの軽量鉄骨造であれば事業用で27年、非事業用で40年となります。
大手ハウスメーカーでは骨格材に2.3mmと3.2mmの鉄骨材を組み合わせて使用してることがほとんどです。
さらに最近では一階部分の重要な柱にだけ3.2mmの鉄骨材を使い、他の大部分を2.3mmの鉄骨材を用いることもあります。
この場合、厚さは3mm以下となり法定耐用年数は事業用で19年、非事業用で28年です。
ただし条件によって鉄骨材の太さを変えている場合もあり、一概に判断することはできないためハウスメーカーに聞いてみると良いでしょう。
木造の耐用年数は?
軽量鉄骨の場合には鉄骨材の厚さによって耐用年数が変わりますが、木造の場合にはどうなっているのでしょうか?
木造の場合、軽量鉄骨のように何かしらのの要因によって法定耐用年数が変化することはありません。
どんな大きな木材を使用していてもそうでなくても、法定耐用年数は「22年」か「33年」となります。
この違いは軽量鉄骨と同じように「事業用」であるか「非事業用」であるかです。
軽量鉄骨でも同じですが、もちろん規模の大きさやアパートか戸建てかなどの違いにも左右されません。
木造住宅の法定耐用年数は事業用で22年、非事業用で33年となります。
現在の木造住宅が平均30年で取り壊されているため、木造住宅の寿命は30年程度だとよく言われています。
これには、木造住宅の法定耐用年数が33年であることも背景にあると言えるでしょう。
耐用年数が過ぎてしまったらどうなる?
軽量鉄骨でも木造でも、法定耐用年数を過ぎてしまったらどうなるのでしょうか?
取り壊さなければならないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
軽量鉄骨でも木造でも法定耐用年数を過ぎた物件はあります。
住み続けているだけでなく、法定耐用年数を過ぎた物件でも売買されていることはあるのです。
これは、法定耐用年数が使用可能年数とは異なるためです。
法定耐用年数はあくまでも、不動産の減価償却費用を計算するために国が設定した年数に過ぎません。
使用可能年数は物理的耐用年数に近いものがありますが、物理的耐用年数も立地やメンテナンスによって大きく左右されるため同じ規模、同じ間取り、同じハウスメーカーでも全く同じとはなりません。
法定耐用年数を過ぎてしまっても住み続けることは可能ですし、リフォームや大規模修繕を行い、売却することも可能です。
日々の清掃やメンテナンス次第によっては、法定耐用年数の倍以上使用することもできます。
軽量鉄骨と木造、耐震性や防音性に優れているのはどっち?
ここまでの説明で法定耐用年数は使用可能年数とは異なるため、その長さだけで優劣を決めるものではないことは分かっていただけたのではないでしょうか。
では結局のところ「軽量鉄骨」と「木造」では、どちらの住宅がより優れているのかが気になりませんか。
近年では大規模な地震が頻発していることもあり、耐震性は住宅を建てる上で重要なポイントとなります。
やはり、「木造より鉄骨材を使用する軽量鉄骨の方が耐震性は優れているのでは?」と考える人も多いかもしれませんが、現在では木造でも軽量鉄骨と変わらないくらいの耐震性を実現できるようになっています。
そもそも耐震性として重要なのは、躯体の接合部分です。
接合部分が外れなければ、倒壊することはほとんどないと言えます。
最近の木造住宅は金具で接合部を補強しているため、軽量鉄骨と変わらない耐震性を実現しています。
また木造住宅では防音性が低いとの認識があるかと思いますが、この点については軽量鉄骨も変わりありません。
防音性に関しては鉄筋コンクリート造などでなければ、高めることはできないと考えて良いでしょう。
軽量鉄骨と木造、火災に強いのは?
木造と軽量鉄骨を比べると、木造は火災に弱いからと考える人も多いでしょう。
確かに木材は燃えてしまうため、火災に弱いという認識は間違いではありません。
しかし木材は燃え尽きるまでに時間がかかるため、避難する時間は確保することができます。
軽量鉄骨の場合、火災が起き融点に達した時点で溶け出してしまいます。
火災を助長する木材とは違いますが、火災により鉄骨材が溶けドアや扉があかずに閉じ込められてしまうということも十分にありえるのです。
そのため、軽量鉄骨の方が木造より火災に強いとは言うことができません。
ただし、火災保険の保険料だけを見ればやはり木造より軽量鉄骨の方が安くなるのは間違いありません。
さらに断熱性の面で軽量鉄骨と木造を比較すると、同条件のもとでは木造の方が優れていると言えますし、費用面で見ても木造の方が安く済みます。
軽量鉄骨と木造、どちらの住宅が優れているかということは耐用年数以外で比較してみても一概に言うことはできません。
耐用年数はあくまで目安!
軽量鉄骨でも木造でも法定耐用年数が決まっており、事業用か非事業用かで違いが出てきます。
しかし法定耐用年数は使用可能年数とは異なり、過ぎてしまったからと言ってすぐにどうなるわけでもありません。
法定耐用年数を気にするより使用可能年数を伸ばすために、メンテナンスを欠かさないことが重要です。
軽量鉄骨にも木造にもそれぞれメリット、デメリットがありますから、耐用年数にとらわれすぎないようにしてください。