住宅を建てるときには、耐震性など家としての強度が気になることでしょう。
それには、住宅の構造にどのようなものを選ぶかも重要となります。
その中でも、気密性の高さ、地震や火災に対する強度などがあり、建築費用も抑えられるとして注目されているのが軽量鉄骨住宅です。
今回は、木造よりも強く、鉄筋コンクリートよりも費用が掛からない軽量鉄骨住宅のメリットと、耐用年数はどのくらいなのかについて見ていきましょう。
建物の構造「木造」と「鉄骨造」について
軽量鉄骨造についてご紹介する前に、建物の構造についてご紹介しましょう。
構造については、次の4つに分けることができます。
【木造】
木=WOODの略で「W造」と表されます。
木の柔軟性と粘り強さを併せ持つことで、地震や台風が多く発生する日本の風土にも適した馴染みのある住宅構造です。
世界最古の木造建築物「法隆寺」を見れば、耐用年数が長いこともお分かりいただけるでしょう。
また、日本特有の湿度を調整し、通気性の良さから結露の発生を抑えます。
木造は、他の構造のものより工期が短く、材料費も安いことから、全体に掛かる費用を抑えることができるのも大きなメリットでしょう。
デメリットは、その通気性の良さから、防音や断熱の機能が低いこと、火災に弱いことが挙げられます。
【鉄骨造】
鋼鉄=Steelの略で「S造」と表されます。
建物の骨組みに鉄骨を使用し、その他は木を使っています。
鉄骨の柱は強度が高いので、柱の間隔を広くとることができ、設計の自由度があります。
建築後も壁を自由に移動できるので、リフォームがしやすもの大きなメリットでしょう。
木造よりも地震や水害に強く、遮音性も高くなりますが、一方で木造より建築期間が長く費用も掛かります。
また、鉄骨は重いので土地によっては地盤を強化する必要もあり、その場合はさらに費用が掛かることになるでしょう。
建物の構造「鉄筋コンクリート造」と「鉄筋鉄骨コンクリート造」について
さらに建物の構造についてご紹介します。
【鉄筋コンクリート造】
強化した=Reinforced、コンクリート=Concreteの略で「RC造」と表されます。
鉄筋とコンクリートを使うことで、それぞれの良さを活かし、より強固な建材になっています。
RC造の大きなメリットは、建物の主要構造部にコンクリートが使われることで、耐火性が高くなっていることです。
こちらも、木造よりも建築期間が長く、費用も掛かり、S造同様重量があるので、地盤を選びます。
【鉄筋鉄骨コンクリート造】
鋼鉄=Steel、強化した=Reinforced、コンクリート=Concreteの略で「SRC造」と表されます。
支柱を鉄骨にし、周りに鉄筋を組んでコンクリートを流し入れることで、RC造よりもさらに強固な造りになっています。
耐震性、耐火性、耐久性に優れ、地震や台風などの自然災害にも強いですが、その分費用も掛かります。
主に高層マンションなどに使われることが多く、一般の住宅ではここまでの強度は必要ありません。
ご紹介したように、柱などに鉄骨を使ったものは強度が高く、耐用年数も長くなります。
そして、この鉄骨の厚さが6mm未満のものを「軽量鉄骨造」と言い、6mm以上のもの「重量鉄骨造」と言います。
軽量鉄骨住宅の特長
前述したように、「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の違いは鋼材の厚さです。
一般的に、「鉄骨造」というときは重量鉄骨造を指します。
しかし、大手ハウスメーカーで「鉄骨造の住宅」と呼ぶ場合は、工場で製造した部品を現場で組み立てる「プレハブ工法」を用いた軽量鉄骨造を指すことが多いようです。
このプレハブ工法を用いることで、製造費用や工期も短くなるので、住宅建設全体の費用が抑えられます。
それでは、軽量鉄骨住宅の特長について見てきましょう。
【軽量鉄骨住宅の特長】
・工場で大量生産されるプレハブ工法なので、建築費用が抑えられる
・工期が短期間で済み建築費用が抑えられる
・建材を工場で生産するため品質が安定している
・耐震性、気密性が高い
・国が定めた「法定耐用年数」は19~27年
このようなことから、軽量鉄骨造は、建物の強度が高く、費用を抑えることもできる、優れた構造だと言えるでしょう。
法定耐用年数とは?
先程、軽量鉄骨住宅の法定耐用年数は、19~27年とお話ししました。
この法定耐用年数とは、どのようなものなのでしょうか。
また、19~27年と言われる軽量鉄骨住宅の耐用年数は、他の構造と比べて長いのかどうかも気になります。
それでは、まず最初に法定耐用年数について詳しくご紹介していきます。
法定耐用年数とは、減価償却資産が利用に耐える年数のことを言います。
長年にわたって反復使用に耐え、経済的に価値があるものに対して、その価値の減価を年度ごとに費用配分していくものです。
また、税金などさまざまな計算の基礎となります。
減価償却資産は、車、機械、備品などで、住宅もこれに入ります。
法定耐用年数は税法で規定されていて、構造や用途などが考慮されます。
簡単にいうと、国が決めた建物の寿命と言ったところでしょう。
しかし、これはあくまで法律上での寿命なので、耐用年数を過ぎた建物はすぐに取り壊さなければならないということではありません。
実際に、法定耐用年数を大きく超えている建物は多く存在しています。
軽量鉄骨住宅を法定耐用年数から見てみる
それでは、法定耐用年数から住宅の寿命を見てみましょう。
・SRC造(鉄骨・鉄筋コンクリート造) 47年
・RC造(鉄筋コンクリート造) 47年
・重量鉄骨 34年
・軽量鉄骨 19年~27年
・木造 22年
軽量鉄骨だけ19年~27年の幅があるのは、鉄骨の厚さによるものです。
細かく見ていくと、厚さ3mm~4mmの軽量鉄骨の法定耐用年数は27年、厚さ3mm以下の軽量鉄骨は19年としています。
なぜ6mm以下としないかというと、鉄骨の厚さが4mmを超えると重量鉄骨に分類されることもあるためです。
したがって、軽量鉄骨の法定耐用年数は最高で27年と覚えておくのが良いでしょう。
こうして見てみると、軽量鉄骨住宅の法定耐用年数は木造住宅よりも長く、他の構造よりも短いということになります。
この他にも、「物理的耐用年数」と「経済的耐用年数」と呼ばれるものがあります。
物理的耐用年数は、そのものの仕組みや材質の品質維持ができる期間ということで、きちんと機能を使うことができなくなるまでの期間を言います。
特に住宅の場合は、日ごろのメンテナンスによって、この物理的耐用年数に大きな差が出ます。
経済的耐用年数は、そのものの価値がなくなるまでの期間です。
住宅の場合は立地など市場のニーズや、メンテナンスの状況などから、その住宅の価値を推測し、割り出すことになります。
メンテナンスを行えば軽量鉄骨住宅の物理的耐用年数は延ばせる
前述したように、軽量鉄骨住宅の物理的耐用年数を延ばすには、日ごろのメンテナンスが大切です。
そして、物理的耐用年数を考えると、軽量鉄骨住宅の特長でもある気密性の高さは諸刃の剣となります。
軽量鉄骨住宅の気密性の高さは、結露など湿気が溜まりやすいというデメリットにもなるのです。
そのため、日ごろから換気をこまめに行って、カビやサビの発生に気をつけたいところです。
また、雨どいのゆがみや破損は、外壁を汚すだけでなく、思わぬところから雨水を侵入させます。
ハウスメーカーを利用して住宅を建てた場合は、メンテナンスに関するさまざまなサービスを行っているので有効に使ってください。
無料保証をつけているハウスメーカーもあり、その年数は10年から、長いものでは30年というものまであります。
このことから、軽量鉄骨住宅はもともと物理的耐用年数が長いことが分かるでしょう。
ハウスメーカーで住宅を建てた場合には、有料ではありますが、点検サービスもしてくれるので、定期的に点検を行うことをおすすめします。
軽量鉄骨住宅は「法定耐用年数」ではなく「物理的耐用年数」で見る
軽量鉄骨住宅のメリットと法定耐用年数について、お分かりいただけたと思います。
鉄筋コンクリート造の住宅から比べると、軽量鉄骨住宅は法的耐用年数は短くなりますが、メンテナンスをしっかり行えば、物理的耐用年数は延ばすことができます。
木造と鉄筋コンクリート造の良いところを併せ持った軽量鉄骨住宅は、安心した暮らしを提供してくれることでしょう。