天然の木は調湿効果があり、湿気が多い日本の気候に合っていることから、多くの新築では木造住宅が採用されています。
その木造住宅の中に、「木造枠組壁構法」と「木造軸組構法」という、構造に違いがある二つの工法があります。
これから新築される方にとって、どちらを選んだらいいのか難しくもあるかと思います。
そこでここでは、木造枠組壁構法と木造軸組構法の違いについて解説してまいります。
さらに、ラーメン構法や木質パネル構法についても触れていますのでぜひご参考ください。
木造枠組壁構法とは?
まずは、木造枠組壁構法からご説明してまいります。
木造枠組壁構法は、一般的に「2×4(ツーバイフォー)工法」とよばれています。
余談ですが、「構法」と「工法」の違いもあわせてここでご説明しておきましょう。
簡潔に申し上げると、「構法」は柱や梁などの構成方法のこと、「工法」は工事を行う際の組み立て方などのことをいいます。
木造枠組壁構法はアメリカで発祥したものであり、現代においては欧米で標準的な木造住宅の建築方法とされています。
4面から成り立つ耐力壁と、天井と床面の2面を合わせて6面体の箱構造を基本として建築される工法・構造です。
面で支える構造ですので、耐震性や断熱性、気密性、さらには防音性に優れているともいわれています。
「2×4(ツーバイフォー)」とよばれる所以は、2インチ×4インチの製材枠を使用することです。
ちなみに、「2×6工法」や「2×10工法」もあります。
それでは、木造枠組壁構法のメリット・デメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
また、木造軸組構法とは何が違うのでしょうか。
さらに見てまいりましょう。
木造枠組壁構法のメリットとデメリット
木造枠組壁構法のメリットは、先ほど申し上げましたように耐震性や気密性に優れていることです。
さらには、6面体の箱状になることから住宅自体が頑丈であるともいえます。
また、木造枠組壁構法で新築する場合、建築資材は工場でプレカットされたものを使用し、建築方法もマニュアル化されています。
そのため、工期が比較的短く、品質の高い住宅が建てられるのがメリットの一つでもあります。
ただし、現代においての日本の法律では多々制限があるため、木造軸組構法と比較すると希望の間取りが実現できないという面もあります。
さらに、リフォームする際もその自由度が低いともいわれています。
しかし、構造を崩すことのない設計の範囲でしたら、構造計算しやすい工法でもあるともいえるのです。
木造軸組構法とは?木造枠組壁構法とは何が違う?
木造軸組構法は、一般的に「在来工法」とよばれています。
日本古来の技術で、柱や梁、筋交いなどの軸組で建物を支える構造・工法です。
古くは、竪穴式住居でも用いられていた工法でもあります。
木造軸組構法では、「継手」や「仕口」などの「ほぞ」と「ほぞ穴」を接合する伝統的な技術が使用されています。
木造枠組壁構法との大きな違いは、住宅を支えるものが「面材」か「軸組」かということです。
しかし、昨今の木造軸組構法の住宅でも耐力壁を構成することが建築基準法で定められているので、厳密に申し上げると「木造軸組構法」ではなくなってきているともいえます。
それでは、その木造軸組構法のメリットとデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
次項でみてまいりましょう。
木造軸組構法のメリットとデメリット
木造軸組構法のメリットは、比較的間取りの自由度が高いことです。
自由な間取りにしやすい理由は、柱や梁などの軸組で構成されていることにあります。
それが木造枠組壁構法とは大きく異なり、木造軸組構法の最大のメリットともいえるかもしれません。
もちろん、リフォームの際の間取りの自由度が高いことはいうまでもありません。
また、昨今人気のある、柱や梁をむき出しにするデザインは木造枠組壁構法より木造軸組構法の方が向いています。
さらに、木造軸組構法を採用している業者が多く、業者の選択肢が多いこともメリットのうちの一つです。
ただし、木造軸組構法では現場で大工さんが工事することが多いです。
そのため、技術の差が出やすく、木造枠組壁構法と比べると工期も長くなってしまうというデメリットもあります。
また、木造枠組壁構法と比較すると、耐震性が低いともいわれます。
しかし、この件に関しては、品質の高い資材を使用することや技術の高い大工さんが施工することでカバーできるということもあり、一概に耐震性が低いとはいえません。
また、昨今では建築基準法にてしっかりとした建築基準が定められていることから、いい換えると、場合によっては木造枠組壁構法より耐震性の高い住宅を建てられるともいえるのです。
木造枠組壁構法と木造軸組構法どちらがいい?
これまで申し上げたことを踏まえ、新築する際は結局木造枠組壁構法と木造軸組構法のどちらを採用するといいのでしょうか。
まず、木造枠組壁構法を採用するのがいいと考えられる方は、
●より災害に耐えられる家にしたい
●時間をかけずに家を建てたい
●冷暖房効率をよくしたい
と思われる方でしょう。
反対に、木造軸組構法を採用するといいと考えられる方は、
●間取りの自由度を高くしたい
●柱や梁を見せるデザインの住宅にしたい
●たくさんの業者から比較して建築業者を選びたい
と思われる方かと思います。
木造枠組壁構法も木造軸組構法も一長一短です。
何に重きを置くかでどちらを採用するかは異なりますので、どちらが自分たちに向いている工法なのかをよく検討することをおすすめします。
その他の木造住宅の工法は?
これまでご説明してきました木造枠組壁構法と木造軸組構法の他に、「ラーメン構法」というものもあります。
ラーメン構法は、木造枠組壁構法や木造軸組構法で必要な面や軸組が少なくていいというのが特徴です。
基本的に高層建築物に採用されていた工法ですが、昨今では木造住宅でも採用され始めており注目を浴びています。
具体的には、資材の接合部分の強度を上げることで、面材や軸組が少なくていいという構造になっています。
そのため、大開口部分をつくることができたりと、間取りの自由度が高いです。
ただし、接合部分に力がかかってしまいやすいので、地震の横揺れには弱いともいわれています。
また、「木質パネル構法」とよばれる工法もあります。
木質パネル構法は木造枠組壁構法と原理は同一で、構造体を工場でプレカットし生産したものをそのまま組み立てるという手法になります。
木造枠組壁構法との違いは、木質パネル構法の方が工場で生産する部分が多いという点です。
そのため、大工さんの手間が省かれ、工期がさらに短く済むという利点があります。
また、資材は工場でプレカットなどされることから、品質が安定しているのがメリットでもあります。
ただし、木造枠組壁構法と同じく、間取りに制限があることは否めません。
そのため、変形地や狭い土地などに新築する際にはあまり向いていない工法であるともいえます。
それぞれのメリットデメリットを知って工法を決めよう
木造枠組壁構法も木造軸組構法も、メリットもあればデメリットもあります。
さらには、ラーメン構法や木質パネル構法など、住宅を建築する際の選択肢はいくつかあります。
それぞれの工法の違いをしっかりと理解したうえで決めたいものです。
これから建てる新築が、満足のいくものになるといいですね。