土地を区切っている「境界(きょうかい)」ですが、隣地との境界線上に壁を作る場合、その費用はどちらが支払うべきなのでしょうか。
この記事では、壁を作るパターンや負担費用の割合、ご近所との境界トラブルを回避するための対処法などを取り上げます。
境界に関する疑問や悩みをお抱えの方は、ぜひとも参考にしてみてください。
そもそも「境界」とはなにか
壁を作る際の費用に関連するお話へと進む前に、まずは「境界」にまつわる基礎用語を解説していきます。
●土地の境界:土地と土地の境目を指し、以下の二種類に分類されます。
「筆界(ひっかい)」…公法上の境界で、土地所有者間で変更することはできません。
「所有権界(しょゆうけんかい)」…私法上の境界で、隣接地の所有者間の話し合いで決まります。
筆界と所有権界が一致していないと、将来的に境界紛争へと発展してしまう恐れがあると言いますから、不明点がある方は早めに解決しておきましょう。
●境界標:隣地との境界を区別するための目印となります。
境界標の頭部には印があり、これらをもとに境界の位置を特定するのです。
例えば、十時に交差した印の場合、交差している中心部分が境界点になります。
境界標には、コンクリート杭、プラスチック杭、石杭、木杭、金属標など、さまざまな種類があります。
●境界線:境界標と境界標を結んだ線のことで、代表的なのは以下の三種類です。
「隣地境界線」…隣地との境界線を指しますが、必ずしも正しい位置に境界標が設置されているわけではないので注意しましょう。
「敷地境界線」…建築物のある敷地の外周のことで、こちらも曖昧になっている可能性があります。
「道路境界線」…敷地と道路との境界線です。
壁を作るパターンは主に二つ!それぞれの制限・メリットは?
それではここから、隣地との境目にフェンスや塀、壁を作るときのパターン、負担費用割合などをご紹介していきます。
まず、壁を作るパターンについてお話ししますが、「敷地内に壁を作る場合」と「隣地境界線上に壁を作る場合」が考えられるでしょう。
それぞれの制限とメリットを挙げてみます。
●敷地内に壁を作る場合
・制限
自分の敷地内に壁を作るなら、高さの制限は特に設けられていません。
しかしながら、隣地への配慮は欠かさないようにしましょう。
・メリット
個人の所有物となるため、高さや材質、デザイン、色などを自由に決めることができます。
また、撤去や補修のタイミングも独断で決めることが可能になります。
●隣地境界線上に壁を作る場合
・制限
隣地境界線上に壁を作るなら、高さは2メートル以下という制限があります。
また、どういった仕様にするのかなど、住人同士でよく話し合う必要があるでしょう。
・メリット
互いの土地をまたぐので、その分、塀や壁に割く土地の面積が少なくなるということが挙げられます。
土地の広さに余裕がない場合は、うれしいポイントとなりますね。
敷地内?隣地境界線上?壁の設置費用はどうなる!
前項では、隣地との境目にフェンスや壁などを作るときのパターンを二つご紹介しました。
気になる負担割合についてお話しすると、まず「敷地内に壁を作る場合」の費用は、全て自己負担となります。
そして、「隣地境界線上に壁を作る場合」の費用は、基本的に共同負担となるでしょう。
民法第二百二十六条には、「前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する」とあります。
(※負担費用額は合意のもとで決められます)
共同で設置することになれば、もちろん所有権は両者にあります。
隣地境界線上に壁を作るなら、費用を抑えることにつながるというわけです。
しかしながら、設置に関してだけでなく修繕の際にも話し合いが必要になるので、揉め事を避けたい方には向いていないと言います。
また、現在は近隣関係が良好だったとしても、この先どうなるかはわかりません。
土地の広さにある程度の余裕があり、金銭的にも問題がないのであれば、敷地内に壁を作るほうがリスクは少ないのかもしれませんね。
隣地境界線上に壁を作ったら!修繕費用も共同負担になる
もし隣地境界線上に壁を作ることが決まったら、修繕費用も両家で負担することになります。
例えば、壁を作る際にかかる費用が「7:3」の割合だったなら、同じく「7:3」の修繕費用となるのが一般的です。
折半であれば、折半での負担となるでしょう。
しかし、壁を作るときの負担費用も合意で決められますから、修繕費用についても話し合いで解決することができます。
どちらか一方が精度の高いメンテナンスを望むなら、そちら側が多く負担することとなるのが自然で、必ずしも「折半しなくてはならない」というわけではありません。
お互いが納得のいく負担割合になるよう、よく話し合うことが求められます。
また、将来的に土地を手放すご予定があるのなら、新たな買主に迷惑がかからないよう、ルールを明確にしておく必要があるでしょう。
既に壁が設置されている場合について
それでは、隣地との境目に「既に壁が設置されていた場合」はどうでしょうか。
隣地境界線上の共有壁を壊して、新しくしたいのであれば、必ず隣接地の所有者にも合意を得なければいけません。
勝手に取り壊して工事を進めてしまうと、トラブルのもとになりますから注意しましょう。
合意を得たうえで、負担費用の割合などを決める必要があります。
もし反対されているのなら、隣接地所有者の負担費用を減らしたり、全て自己負担で行なうことも提案してみてください。
それとは別に、「隣接地所有者の立てた壁が、自分の土地へはみ出していた場合」はどうすればいいのでしょうか。
この状態をそのまま放置してしまうと、「時効取得」が適用されてしまうかもしれません。
時効取得とは、土地の所有権を時効によって取得できる制度のことを指します。
自分の土地であっても、長期間占有されていると他人のものになってしまう可能性があるということです。
相続や固定資産税にも関わることですので、なるべく早めに対処していきましょう。
壁を作るときの費用トラブル!回避のためにできること
ここまで、隣地との境界に壁を立てることと想定し、さまざまなお話をしてきました。
壁を作る際のトラブルを避けるためには、やはり隣接地所有者との関係性が重要になるでしょう。
日頃のコミュニケーションは欠かさずに、良好な関係を築いていけるといいですね。
もし境界線のことで、なんらかの不明点やトラブルが起きてしまったときは、「土地家屋調査士」に依頼してみるのがおすすめです。
土地家屋調査士は、測量の他にも境界トラブルを扱っていることがあります。
土地家屋調査士の費用相場は、依頼内容によって異なりますが、簡単な調査業務なら、15,000円~40,000円程度で依頼することができます。
また、地域自治体によっては、無料相談会が開かれることもあります。
お悩みの方は、そういった情報もこまめにチェックしていきましょう。
隣地境界線上に壁を作る場合、共同で費用を負担する!
自分の敷地に壁を立てるなら、高さの制限はなく全額実費負担です。
一方、隣地境界線上に壁を作る場合は、高さの制限があり、費用は隣接地所有者と共同負担することがわかります。
普段の生活で「境界」を意識することは少ないかもしれませんが、財産に関わる問題ですので、不明点は早めに解決しておくべきですね。