一戸建てにお住まいの方で、隣家との境界線を意識して生活しているという人は少ないのではないでしょうか。
しかし、家や土地の売買をする際には、この境界線を巡ってトラブルになることが多いのです。
そこで、今回は、隣家との境界線トラブルが起こる原因や予防策、解決法などをお伝えします。
併せて、家と家の間のブロック塀が本当に境界線なのかという点も見ていきましょう。
一戸建ての場合、隣家との境界線はどこ?
突然ですが、一戸建ての場合、自宅と隣家の敷地を分ける境界線は一体どこだと思いますか?
日本は隣家と自宅が近いので、隣家と自宅の間にブロック塀が積まれていることがよくあります。
一見、このブロック塀が境界のように見えますが、実際にはそうでもないので注意が必要です。
境界線上にブロックが積まれていれば別ですが、多くの場合、境界線の上には積まれていません。
実は、境界線を示す印は、「境界標」という小さくて四角い杭なのです。
つまり、隣家と自宅の間にあるブロック塀は、単に隣家からの目隠しであることが多いのです。
とは言え、ブロック塀を目印にするのがお互いにとって分かりやすいため、ブロック塀を境界線としたい気持ちはよく分かります。
しかし、「このブロック塀が隣家との境界線だ!」と思い込んでいると、家や土地の売買をする際に、トラブルになるのです。
また、「ブロック塀自体はどちらのものか」などというトラブルにも発展しがちで、解決には多くの労力がかかります。
そして、もしも裁判になれば、時間もお金もさらにかかります。
こうした隣家との境界線トラブルは、なぜ起こるのでしょうか。
次の章でその原因を見ていきます。
一戸建てで敷地の境界線を巡るトラブルが多発する背景
先ほどは、ブロック塀は境界ではなく、「境界標」が境界線を示す正式な印だとお伝えしました。
しかし、この「境界標」は、
・小さくて草などに埋もれやすい
・境界標の素材によっては、実際の位置が図面の位置とずれやすい
というデメリットがあります。
また、工事などで業者に動かされてしまったり、何かの理由で境界標自体がなくなることもあります。
そのため、一戸建てでは、自分と隣家で敷地の境界線の認識が異なり、それを巡るトラブルが多発します。
しかし、境界線を巡るトラブルが多発するのには、他にも要因があります。
例えば、
・境界標はあるが、それが正しい位置なのかが誰にもわからない(証拠がない)
・「どこまでが誰のものか」を明確にしなければ気が済まない人が増えてきた
・境界線が曖昧だと、双方が自分に都合の良いように主張しがち
といったことです。
その家に長く住んでいる場合でも、敷地の境界線はよく知らずにいることが多く、売買する際にようやくどこまでが自分の敷地なのか意識することが多いのではないでしょうか。
その段階で隣家と境界線を巡ってトラブルになると、不動産の売買も滞ってしまいます。
次の章では、実際にあった境界線トラブルの事例をいくつかご紹介します。
境界線トラブルの実例!ブロック塀を積むのも揉める?
不動産の売買をする際にトラブルになりがちな敷地の境界線ですが、ここで実際にあったトラブルのケースを見てみましょう。
・土地を売ろうとして境界を確認したら、その一部が隣家のものだった
・境界線がないので、分かるようにとブロック塀を積もうとしたら、隣家から「そこはうちの土地だから勝手に積むな」と言われた
などのケースがあります。
「土地の一部が隣家のものだった」という場合には、不動産の売買自体ができなくなります。
他人のものが含まれている以上、勝手に売買できないからです。
また、ブロック塀を積みたい・積ませたくないというケースでは、それぞれの言い分があるのでこじれやすいです。
隣家とは普段から顔を合わせるわけなので、なるべくトラブルになることは避けたいですよね。
そうでないと、お互いにストレスを感じてしまいます。
それまでは良好な関係だったとしても、一度、境界線を巡ってトラブルになれば、関係を修復することは難しくなります。
そうなると、以前は仲が良かっただけに余計に辛くなります。
では、こうしたトラブルを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。
境界トラブルを防ぐにはブロック塀より境界標の確認!
隣家との境界線が曖昧になっていることが、多くの境界線トラブルを引き起こす原因です。
そのため、あらかじめ境界線をはっきりさせておけば、トラブルは減ると考えられますよね。
それにはどんなことをしておけば良いでしょうか。
例えばですが、
・境界標を写真に撮る、手書きで境界標の位置を図に書くなどして、誰が見ても分かるように証拠を残しておく
・それを隣家の人とも共有しておく
・工事などで業者が入る際には、「境界標を動かさないように」ときつく言う
・境界標の有無や位置が合っているかを、自分でも定期的に確認しておく
などのことをしておくのがおすすめです。
証拠を残せば、裁判になっても戦えます。
また、隣家と自宅の間にブロック塀がある場合、「このブロック塀は境界線ではない」という認識も、お互いにきちんと持っておきましょう。
境界線トラブルはどう解決する?相談先をご紹介!
では、ここからは、境界線トラブルの解決方法のご紹介です。
一般的には、当事者同士での解決はとても難しいです。
そのため、以下のような機関や専門家に相談するのが賢明でしょう。
①法務局や市役所などが行なう無料相談会に行く
これは、「トラブルにはなっていないけれど、ブロック塀のことで気になることがある」などという場合におすすめです。
市役所などでやっているので、無料で相談できるのがメリットです。
ただし、日程が限られているので、事前によく確認しましょう。
忙しい人にはあまり向かないかもしれません。
②境界問題解決センターで相談する
これは、全国の土地家屋調査士会が運営する団体で、日本各地にあります。
名称は地域によって異なりますが、土地家屋調査士や弁護士などが相談に応じてくれます。
③弁護士に相談する
この場合は、自力で境界問題に詳しい先生を探す必要がありますが、問題がこじれてどうしたら良いか分からない場合に有効です。
もちろん、費用はかかりますが、やはり解決への大きな力になります。
ブロック塀の利用が原因のトラブルとその解決法
今回は、隣家との境界線トラブルについて、その原因や背景、解決法などをご紹介してきました。
しかし、はじめの章では、「ブロック塀の利用が隣家との境界トラブルの原因になることもある」ともお伝えしましたね。
そこで最後は、ブロック塀が原因となって起こった境界トラブルの解決方法についてお伝えします。
ブロック塀の利用が原因となって起こる境界トラブルには、
・ブロック塀の上に洗った靴などを干したら、隣家から「物を置くな」と注意された
というようなことが考えられます。
この場合にはまず、「ブロック塀(やその上)はどちらの所有物でもない」ということをよく認識する必要があります。
これは、「どちらのものでもないから、自分が自由に使って良い」という意味ではありません。
どちらかがブロック塀に物を置けば、置いた側の所有物のようになってトラブルを招くことになるので、「お互いに何も置かないようにする」という意味です。
ちょっと何か置くのに便利であっても、ブロック塀に物を置くのはやめましょう。
隣家との境界線トラブルは、多くの場合、こうした「ちょっとしたこと」から始まります。
こじれる前に自分の態度を改めることも、隣家との境界線トラブルを解決する一つの方法です。
敷地の境界線は普段からしっかり確認しておこう!
今回は、家や土地の売買時に起こることが多い「敷地の境界線トラブル」について、その背景や対処法をお伝えしました。
よくあるブロック塀は、隣家との境界ではないことが多いのですね。
多くの人が経験している境界トラブルを防ぐには、「境界標」の確認や意識の共有が不可欠です。
こじれた問題を解決するには、やはり専門家の力を借りるのが現実的でしょう。
境界線トラブルが起こってしまったら、早めに相談して下さい。