土地を売買するときに、現地を自分の目で確かめることはとても重要です。
しかし、その土地を見ただけでは分からない、目に見えないことが土の下に隠されています。
その目に見えないことを見せてくれるのが、「地目」です。
土地を売買しようとしたとき、地目が「ため池」だった場合、注意することを見ていきましょう。
「ため池」を売買する前に地目について知っておこう
まずはじめに、ため池の売買に大切な「地目(ちもく)」についてご説明しましょう。
地目は、土地の用途による区分のことで、その土地の種類を表すものです。
地目の種類は、宅地、田、畑などの主要5種と、その他の18種を合わせて23種に分類されています。
ため池は、その他の中のひとつになります。
しかし、登記されている地目と実際に使われている内容が、必ずしも同じではないというのが現状です。
課税のための地目を「課税地目」と言いますが、登記上の地目と実際の地目が異なる場合は、実際の評価で課税を行います。
地目変更については、不動産登記法第37条に定められていて、「地目に変更が合った場合には、1か月以内に変更登記をしなければならない」としていて、違反した場合は過料の規定もあります。
しかし、前述したように、実際には土地の用途が変わっても、届出が出されていない場合が多いのが現状です。
また、変更後の土地の利用状況について、登記官に認められなければ地目変更はできないとしていますが、通常、所定の手続きを行えば地目の変更はできます。
地目変更をしないと売買に影響がある?
先程、実際の地目と登記上の地目が違っている場合が多いとお話ししましたが、困ることはあるのでしょうか。
通常、すぐに困ることはありません。
課税に関しても、自治体が固定資産の評価を行ったときに、現況を見て「課税地目」として評価して課税しますし、過料に関しても、実際に課せられた例はほとんどないようです。
問題になるのは、その土地を売買するときです。
地目を変更していなかった場合、登記の上での地目と実際の状況が一致していないということになります。
変更しないまま土地の売買を行うと、トラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。
特に、代々土地を承継している場合などは、地目変更をされていないケースは珍しくありません。
土地を売る側は売りに出す前に、登記上の地目と実際の地目が合っているか調べて、もし違っていたら一致させておきましょう。
また、土地を買う側は現地を見るだけでなく、地目をしっかり確認してください。
田や畑などの農地の場合は、農地法が関わってきます。
農地は農家以外の人が売買することはできません。
必ず、農地転用をし、地目を変更してから売買しましょう。
次に地目がため池の場合、注意することをお話しします。
「ため池」とはどのような土地を指すのか
これまでお話ししてきたように、登記上の地目と実際の地目は、必ずしも一致しません。
では、登記上の地目が「ため池」となっていた場合、それはどのような土地を言うのでしょうか。
ため池とは、不動産登記事務取扱手続準則 第68条17号によると「耕地かんがい用の用水貯留池」のことを指し、「公有水面下(こうゆうすいめんか)」に限られます。
公有水面下とは、国が持っている公共の水流や水面のことです。
つまり、ため池は農業に必要な水を外部から確保する(かんがい)ために造られた、公共の貯水池のことです。
一般にため池というと、かんがいのために造られた人工的な貯水池を言いますが、登記上の手続きでは、その目的で判断するので、かんがいのためだけに新設したものでも、自然にできたものであっても、「ため池」として扱います。
また、かんがい用水ではない貯水池、例えば釣り堀や養魚場などは、「池沼(ちしょう)」という地目になり、ため池とは分けられています。
ため池や池沼を、そのまま売買することは、実際にはあまりありません。
もし、売買をする場合には、他の用途へ転換する可能性を考慮し、水抜きや埋め立てなど、地盤を改良するための工事をする必要があるでしょう。
「ため池」の土地を売買するには?
前述したようにため池は公共の貯水池なので、所有者が地方自治体という場合が多いようですが、個人が所有し自治体が管理している場合もあります。
個人がため池を売買する場合には、そのため池の所有者が売ろうとしている本人だけかどうか、他に「水利=水を利用する権利」を持っている人がいないか確認する必要があります。
もし、第三者にため池の水を利用する権利が設定されていると、権利関係が複雑になり、売却できない可能性もあります。
また、都道府県によっては「ため池についての条例」のようなものがあり、個人が所有していたとしても制限されてしまうこともあります。
そのため、個人がため池を売却する機会はほとんどありません。
しかし、もしため池を売却をするような場合があれば、法的な制限の調査を行って、買主にきちんと伝えることが重要です。
また、ため池を埋め立て、地目を変えて売却するときにも、地盤の状態を買主に伝えましょう。
ため池を埋め立てると、地盤の状態が良くない場合も多くあります。
そのことを相手に伝えると、売れなくなると考え、あえて言わないという方もいるかもしれません。
しかし、不利益な情報を伝えなまま、土地の売買を行うと、かえって深刻なトラブルに繋がるので、伝えるべきことはきちんと伝えましょう。
また、所有者が地方自治体のため池を売却した場合は、売却金はすべて自治体の収入となります。
水利を持っていても、売却金が分配されることはありません。
過去の地目がため池の土地は購入しても大丈夫?
土地の売買する場合、気を付けたいのは地盤です。
「その土地が以前、どんな土地であったのか」「地盤はしっかりしているのか」など、住宅を建てる場合は特に気になることでしょう。
地震のときに液状化現象で建物が傾いている映像を見ると、事前の調査がいかに重要かが分かります。
そのため、宅地に地目変更されている場合でも、過去の地目もチェックすることをおすすめします。
地目の履歴のなかに水に関する、ため池や池沼があれば要注意です。
また、古くからの地名に水、砂、谷、瀬などがついている地域も注意しましょう。
「元はため池でしたが、地盤改良してあるから大丈夫です」と言われても安心してはいけません。
地盤改良をしてから、その地盤が落ち着くまでには30~35年掛かると言われています。
つまり、地盤が落ち着くまでの数十年間、ずっと地盤沈下を続けているということです。
地盤改良してから何年経っているのか確認しましょう。
また、埋め立てに使われた土の種類によっても、地盤の強さに差が出ます。
砂は締まりが良いことから、埋め立てによく使われますが、地震の際には液状化を起こしやすいので要注意です。
地盤改良は費用がかかる!先に過去の地目を調べておこう
土地の地盤の強さが気になる場合、地盤を調査するという方法があります。
しかし、「地盤調査は購入した土地でないとできない」というのが一般的です。
それは、調査結果によって、土地購入をキャンセルされることを避けるためです。
また、地盤調査には小スペースで調査でき、調査費用の安い「スウェーデン式サウンディング試験」、主に表層部の耐震性を調査する「表面波探査法」、もっとも正確に調査ができる「ボーリング調査」があります。
土地の広さや状況などによって金額は変わってきますが、なかでも「ボーリング調査」は広い調査スペースと多額の費用が掛かります。
仮に地盤調査をして、地盤が弱かった場合は、買主が自分で地盤改良工事をしなくてはなりません。
その場合、さらに多額な費用が掛かります。
このようなことにならないために、土地を売買するときには事前にその土地の履歴を調べておきましょう。
前述したように、地目が「ため池」「池沼」は地盤が弱く、地盤改良工事をする必要がある場合が多くなります。
また、同じく水に関する「田」も、地盤が弱いと考えた方が良いでしょう。
売買のときには過去の地目も確認
土地を売買するときに気になるのは、地盤の強さです。
しかし、地盤調査には高額な費用がかかります。
そこで、過去の地目を調べて、水に関する「ため池」や「池沼」として使われていたことはないか、確認することをおすすめします。
ぜひ、土地を売買するときには、地目を確認してみてください。