墓石らしきものがない場合など、畑だと思い込んでしまっていることもありますが、先祖代々引き継いできた土地の地目が墓地であったというケースがあります。
そのような土地の場合、売買は可能なのでしょうか。
この記事では、地目が墓地の土地の売買などについてお伝えしていきます。
所有していた土地の地目が墓地だった!どうすれば良い?
先祖代々土地を引き継いでいるような場合は、実際に墓石などがなくても以前は墓地として使用していたという土地が含まれていることもあるでしょう。
そのような土地は、地目が墓地となっているままかもしれません。
そして、その土地を処分したいと考えた時に、地目が墓地である土地が売買できるのか気になるところでしょう。
結論を言うと、墓地であっても売買は可能です。
土地は、売却しない限り後継者がずっと引き継いでいくことになります。
そのため、できる限り子供に負担をかけないようにと、自身の代で地目が墓地である土地の売却を望む方も多いようです。
しかし、墓地として使用されていた土地を売却する場合、後述するいくつかのことを頭に入れておく必要もあるので注意しましょう。
地目が墓地だと非課税になる
墓地というのは、固定資産税の部的非課税になり課税されません。
また、墓地の他にも、学校法人や宗教法人、社会福祉法人の所有している固定資産や公衆道路は非課税となります。
例えば、霊園の住職が参拝客への駐車場として、近隣の土地を売買契約して購入したとしましょう。
すると、以前は、宅地や畑の地目として固定資産税がかかっていたとしても、霊園の所有する土地として非課税となります。
しかし、だからといって自宅の庭に墓地を作り、庭の一部を墓地に地目変更することはできません。
自己所有の畑や山林などでも、原則的に禁止されています。
時々、地方で自宅の庭や畑などに墓地が建っているのは、昭和23年以前の「みなし墓地」と呼ばれるものです。
昭和23年以降は、「墓地埋没法」といって、許可を受けた墓地以外への埋葬や焼骨の埋蔵の禁止を定めた法律が制定されたため禁止されています。
しかしながら、特例により、やむを得ない事情がある場合などは、都道府県の知事の判断で許可されるケースもあります。
その場合は、宅地や農地から墓地に地目変更をしますが、農地を変更する場合には、農業委員会に申請して転用許可を受ける必要があるなど、複雑な手続きが多いため非常に高いハードルだと言えます。
地目変更は可能?墓地から宅地へ
前章でお伝えしたように、非課税という扱いから、なかには税金対策として地目を墓地のままにしておくケースもあるでしょう。
しかしながら、墓地として使用していない土地であるならば、後世に引き継ぐ前に地目変更をすることをおすすめします。
それには、現在は遺骨を他に移して、墓地としての利用はしていないという事実が必要となります。
それに伴い、墓地埋蔵等に関する法律5条1の改装の申し立の許可書を添付することで、墓地から宅地への登記変更が可能となります。
宅地にすれば住宅を建てられるので、何かに活用できるかもしれません。
また、いつかその土地を売却する際には、買い主は以前の地目が墓地であることを告知する義務があります。
これを怠ると、民法570条の「隠れた瑕疵」があると認められ、心理的瑕疵を抱えている土地として、重要事項説明義務違反の訴訟にかけられる可能性があります。
そのため、売買するつもりでいる場合には念頭に置いておきましょう。
元墓地は価格が低くなる
先述の通り、墓地であっても、土地の売買は可能です。
また、墓地から地目変更をした土地を更地にして売買することも可能です。
その場合、当然ですが、固定資産税がかかるようになります。
なお、元墓地という土地であることから、相場よりも価格が低くなってしまうことは覚悟しておきましょう。
法務局では、過去100年に遡って土地の利用状況を調べることができるため、墓地であったことは誰にでも確認することができます。
土地を探している人も、同じ価格の元墓地とその他の土地なら一般的には後者を選ぶでしょう。
そのため、安く売るか賃貸物件を建てて安く貸すくらいの活用になると割り切った方が良いと言えます。
そして、地目を墓地から宅地へ変更する登記手続きの際ですが、法務局から、既にその土地に骨が埋められていないことを証明するための改葬証明書の提示を求められます。
こちらは、各市町村の保健所衛生課に問い合わせると良いでしょう。
それらの書類が揃ったうえで、地目変更が可能となり売却へと至ります。
売買の一例!墓地として使う相手と売買
墓地を宅地に地目変更しても、元墓地であったという事実からなかなか土地が売れないというのも実際にある話です。
そこで、なんとかして土地の活用を考え、売買するのではなく、再び墓地として土地を利用しようと考えたとしましょう。
地目が墓地であれば非課税となり、固定資産税がかかりませんので、土地の活用を考えればそれも一つの手かもしれません。
しかしながら、土地の所有者であるとはいえ、誰でも簡単に墓地を新設できるわけではありません。
厚生労働省により、墓地の経営主体は、市町村などの公共団体や宗教法人、公益法人に限ると原則で決められています。
なぜなら、墓地といのは、営利目的で新設するものであってはいけないためです。
そのため、厳しい原則のもとに、都道府県知事の許可を得て墓地は新設されています。
また、立地の条件もあります。
墓地は周辺の生活環境に配慮することが求められており、学校や病院、住宅などから100m~500m程度の距離をあけて設置する必要があります。
そして、墓地を経営する本人の所有である土地で、抵当権などがついていないことが条件となっています。
つまり、一般の人が名実ともに墓地として土地を活用することはまずできません。
そのため、墓地としての土地を探している公益法人などに売却することがもっともスムーズな形で土地を処分する方法と言えます。
霊園の土地を売買するための準備!地目変更は大変?
霊園の土地は、もちろん地目が墓地となっています。
売買のために、霊園を廃止したり破綻させることはまれなケースですが、少子化などの問題から墓じまいをする人も多く、墓地離れが深刻な問題となっています。
そこで、万が一霊園や墓地の土地を売却のために地目変更をする際の手順についてご説明します。
まずは、廃止する墓地や霊園の墓石や埋葬の撤去を済ませます。
市町村で許可を得たら、法務局へ必要書類を揃えます。
地目変更する際の費用ですが、通常、土地の売買などの登記には登録免許税がかかりますが、霊園や墓地の売買にはかかりません。
その代わり、状況によっては分筆登記や他の登記手続きが必要なケースがあることを覚えておきましょう。
また、墓地の地目変更に限りませんが、司法書士に手続きを頼んだ場合、5万円程度の報酬がかかるため留意しておきましょう。
地目が墓地の土地でも諦めなくても大丈夫!
地目が墓地の土地でも、売却することは可能であることがわかりました。
それには、墓石や埋葬物の撤去などを行い、保健所からの許可を得ておきましょう。
いずれ、売却の方向で考えている場合は、地目だけでも変更する準備を整えておきましょう。
あとは、自身で土地を活用したり、以前が墓地であっても気にしないという買い主に出会えれば取引はスムーズに行えることでしょう。