マンションの購入で住宅ローンを組む際、その条件として求められるのが「火災保険への加入」です。
火災保険は、火災や地震などに対するリスクをカバーするもので、自然災害の多い日本では非常に重要な住まいの補償です。
しかし、マンションへの火災保険に対して疑問を抱く方も少なくないため、その必要性を改めて知ることが大切です。
この記事では、マンションを購入するにあたり、火災保険の必要性やその仕組みについて、詳しくご説明していきます。
マンションに火災保険は必要?災害の有事に対する補償
元来、日本の文化的な住まいである木造建築は、現在の戸建ての大半を占める構造で、火災などのリスクに対する火災保険は欠かせない保障と言えます。
一方、マンションなどに多く、火災に強い鉄筋コンクリート造においては、火災保険の必要性に疑問を抱かれることも少なくありません。
しかし、火災保険はただ単に「火災」に対して補償するものではありません。
火災保険とは、火災や水災、爆発、破裂、落雷などによる、建物・家財への被害を補償するものです。
隣人と隣り合わせのマンションでは、何らかの災害によって隣から被害を受けたり、あるいは被害を与えてしまう可能性も否定できません。
また、日本は特に自然災害の多い列島でもあるので、比較的高層階であっても損害を受けるリスクがあるということを想定しておく必要があります。
そのため、鉄筋コンクリート造のマンションなどであっても、火災保険は必要なものと言えます。
マンションの財産は自分で守る!火災保険の必要性に関わる「失火責任法」
マンションに対する火災保険の必要性には、前述した「災害などの有事」の可能性が大きく関わってきますが、もう一つ関係してくるのは「失火責任法」です。
「失火責任法」とは、重大な過失である場合を除き、過失によって発生した火災の損害は、失火者に責任を求めることができない法律です。
例えば、購入したマンションが隣人からのもらい火で焼失してしまっても、隣人に損害賠償を求めることはできません。
このような法律の背景には、木造家屋が密集する発足当時(明治)の住環境が関係していますが、火災の延焼を著しく拡大させるリスクは現在も変わらないため、現法となって存在しています。
つまり、自分の財産は自分で守らなければならず、そのためにはマンションであっても火災保険は必要になってくるわけです。
また、自分が出火元になった場合、仮に重過失であるとみなされれば、被害者の損害を賠償しなければならないため、それも踏まえて火災保険への加入は非常に重要と言えます。
火災保険の内容は慎重な検討が必要
前項では、マンションに火災保険が必要とされる理由に、失火責任法という法律が関わっていることが分かりました。
このような火災保険の重要性が考慮され、マンションの購入には火災保険への加入が伴い、住宅ローンを組む際の条件として銀行側から求められる場合がほとんどです。
しかし、マンションの購入にはただでさえ大きな時間を要するので、火災保険を検討する時間を面倒に感じてしまいがちです。
そのため、加入する火災保険の内容を慎重に検討する方は少なく、提案された内容をそのまま選んでしまう傾向にあります。
また、中には保険内容をしっかり把握しておらず、実際に損害が生じてから、慌てて確認するという方もいます。
火災保険の内容は、有事の際にダイレクトに響きますので、「よく検討するべきだった」と後悔することのないように粘り強く吟味していくことが大切です。
火災保険の内容は必要・不要の見極めを!
有事の災害を想定する必要があるとは言え、マンション購入で加入する火災保険では、必要・不要な補償の見極めをすることが大切です。
具体的な火災保険の内容を見てみると、火災、水災、水漏れ、盗難などの補償がセットになってパッケージ化された保険や、自分のマンションに合わせた補償を選ぶカスタマイズタイプの保険があります。
全ての事態に対応できるようにパッケージタイプを選ぶのも良いですが、カスタマイズタイプを選ぶと不要な補償を省き、マンションの立地・環境に合わせた保険にすることができるため、保険料を抑えられるかもしれません。
また、カスタマイズタイプで保険内容を決める際は、自分のマンションの地域にどのような災害リスクがあるのか確認しておくと、より見極めた保険を選ぶことができます。
国土交通省が提示しているハザードマップを参考に、必要な補償を吟味していきましょう。
マンションの火災保険で注意したい!水災の種類と補償範囲
マンションの火災保険に加入するにあたり、見極めた補償選びの重要性をお話してきましたが、それに加えて特に注意したいのが、水災の補償です。
水災の詳しい災害の種類や補償範囲を知らず、実際に被害に遭ってから後悔するケースも少なくありません。
日本ではただでさえ豪雨や台風などの自然災害が多いので、ぜひここでチェックしておきましょう。
【水災の種類と補償範囲】
・洪水:台風、豪雨による河川氾濫、融雪による洪水被害
・高潮:台風などの荒天による、防波堤を越えた海水の浸水被害
・土砂崩れ:集中豪雨による土砂崩れ被害(土石流も含む)
上記を見てみると、例えばマンションの高層階に住んでいる場合は、水災へのリスクは低いと考えられますが、それが中層階である場合、海・河川沿い、崖の近くの立地なら水災の補償を検討する必要があります。
また、水による被害でも、水災とみなされないのが「水漏れ」と「津波」です。
この2つの被害は水災補償と誤解されやすいので、以下でよくチェックしておきましょう。
・水漏れ
マンションなどで階上から生じた水漏れ、排水設備による事故を指すため、災害に関わりはありません。
・津波
津波は地震によって発生するため、補償は地震保険によってカバーされます。
水災である「高潮」と混同されやすいので注意してください。
以上のように、水による被害といっても、原因次第では水災の補償対象にはならないので注意が必要です。
マンションの売却時に注意!火災保険を解約するタイミング
これまでに、マンションの火災保険の具体的な内容について詳しく見てきました。
最後に、マンションの売却時に気を付けたい火災保険の解約についてお話していきます。
マンションを売却する際、火災保険は不要になるため、解約する必要がありますが、ここで気を付けたいのが解約するタイミングです。
火災保険を解約する理想的なタイミングは、売却マンションの引き渡しが完了してからになります。
つまり、引き渡しを含めたマンションの売却契約が完全に終わった後、ということです。
と言うのも、例えばマンションの売却契約が完了する前に解約してしまうと、その短い間でも、万が一有事が起こってしまえば対応することができませんし、何かしらのトラブルで引き渡しが延長されるケースも考えられます。
火災保険は万が一の補償ですから、もしもの時に対応できるよう、マンションの引き渡しが完了するまでは解約を見送りましょう。
火災保険にも時間をかけた検討を
火災保険は、なにも火災に対して補償するだけではなく、水災、水漏れ、盗難などの被害にも適用されます。
特に、水害の多い日本では水災への補償をしっかりと把握し、マンションの立地環境に合わせた保険を検討することが求められます。
後悔することのないように、マンションの火災保険にはじっくりと時間をかけて考えるようにしましょう。