鉄骨造の住宅は、大手ハウスメーカーの多くで採用されており、実際に注文住宅でも人気を集めています。
しかし、鉄骨造のマイホームを建てる際に、外壁材にどんな種類を選べば良いのか悩む方も少なくありません。
近年、鉄骨造の代表的な外壁材としては、「ALC(軽量気泡コンクリート)」が採用されています。
そこで、この記事では、鉄骨造の外壁材としておすすめされる「ALC」について、詳しくご説明していきます。
住宅の一般的な外壁の種類は?
冒頭でお伝えしたように、鉄骨造の外壁材には「ALC(軽量気泡コンクリート)」が多く採用されています。
この「ALC」についてお話しする前に、まずは住宅の一般的な外壁の種類についてご説明していきましょう。
住宅の外壁は、大きく分けて「サイディング壁」と「塗り壁」の2種類に分けることができます。
・サイディング壁
サイディングとは、サイディングボードとも呼ばれ、天然木、金属、セメントなどを材料に外壁材として幅広く流通しています。
デザイン性や施工性、コスト面でも優れているため、近年ではモルタル壁に代わって台頭しています。
鉄骨造で採用されているALCもサイディング壁の一種です。
・塗り壁
塗り壁は、粘土状の外壁材で、古民家や蔵などの外壁として古くから使われてきました。
現在人気を集める「モルタル」を始め、風情のある「土壁」や「漆喰」などが挙げられます。
外壁は大きく分けると上記のように分類することができますが、掘り下げるとさらに様々な種類に分けられるため、その住宅に合った外壁材を選ぶ必要があります。
また、近年の住宅ではサイディング壁がメジャーになっており、特に鉄骨造にはALCがおすすめされています。
鉄骨造にはALCがおすすめ!どんな種類の外壁材?
では、鉄骨造におすすめなALCとは、どのような種類の外壁材なのでしょうか?
ALCとは、「Autoclaved Lightweight Concrete」の略語で、日本語に訳すと「高温高圧で蒸気養生された軽量気泡コンクリート」を意味します。
ALCは金属網によって補強されたパネル状の建材で、通称「ALCパネル」と呼ばれています。
ALCは1920年にスウェーデンで開発されましたが、その施工性や優れた多機能性から、現在では世界20カ国以上に及ぶ規模で流通しています。
ALCの大きな特徴として、その軽量さが挙げられます。
ALCは、パネル内部にミクロン単位の極細な気泡が点在しており、通常のコンクリートのおよそ1/4程度の重さと言われています。
また、塗り壁の「モルタル」とよく似た外観をしており、シンプルなデザイン性にも定評があります。
鉄骨造に推奨されるALCの多機能性とは?
次に、ALCが持つ多機能性を見ながら、鉄骨造の外壁材として推奨される理由をご説明していきましょう。
・軽量
前述したように、きめ細やかな気泡を内包するALCは、通常のコンクリートの1/4程度と言われるほど軽量です。
その比重も水に浮くほど小さいため、鉄骨造に対する施工の負担を軽減することができます。
・耐久性
素材自体が耐久性に長けているため、定期的なメンテナンスによっておよそ50年は張り替える必要はないと言われています。
新築からより長く安心して住めることは、嬉しいメリットの一つです。
・断熱性
ALCは、外壁材の種類の中でも高い断熱性を持ち、熱伝導率はコンクリートの約1/10と言われています。
その高い断熱性によって、夏涼冬暖の住まいを実現することができます。
また、断熱材の一つである「グラスウール」との併用で、より高い断熱効果が期待できます。
・耐火性
ALCは耐火性にも優れ、鉄骨自体の耐火性能をカバーする延焼防止の役割を果たします。
その耐火構造は、国土交通省にも認められています。
・遮音性
発泡性の素材でもあるALCは、遮音性にも長けており、防音壁としても活躍しています。
以上が、ALCの優れた多機能性です。
特に重量鉄骨造の場合、鋼材の厚さによって熱伝導率が高くなり、外気温の影響を受けやすい傾向にあります。
また、遮音性も低いため、上記のALCの多機能性を鉄骨造の住宅に付加することで、鉄骨造の弱点の底上げを図ることができます。
このような強みによって、鉄骨造にはALCが外壁材として推奨されているのです。
ALCは鉄骨造のメジャー外壁材!デメリットは?
前項では、ALCが鉄骨造の外壁材として選ばれる理由が分かりました。
しかしながら、ALCにも少なからずデメリットも存在します。
では、外壁材の種類としてのデメリットを、以下で見ていきましょう。
・吸水性が高い
主成分がセメントであるALCには、吸水性が高い特徴があります。
そのため、塗装塗膜が劣化することで、ALC内部の気泡に水が侵入しやすくなります。
そうなると、寒暖の影響で水は収縮膨張を繰り返し、外壁にひび割れを発生させるケースにも繋がります。
・塗装(塗膜)の防水性に依存
吸水性の高いALCは、表面の塗装(塗膜)によって防水機能を持たせています。
したがって、バリアの役割をする塗膜が劣化する前に、定期的な塗装メンテナンスを行う必要があります。
・コストが高め
ALCは優れた多機能性を兼ねているので、他の外壁材と比べるとコスト高な傾向があります。
以上のように、ALC自体の防水性が乏しいことから、塗装に頼らざるを得ません。
では、ALCの多機能性を保持するためには、どのようなサインを目安にメンテナンスをすれば良いのでしょうか?
次項で詳しく見ていきましょう。
ALC外壁はメンテナンスが肝心!塗り替えのサインは?
鉄骨造に向くALCのメンテナンス方法は、具体的には「塗装の塗り替え」になります。
メンテナンス周期は、およそ10年を目安に行うことが推奨されていますが、住宅の状況次第では早めに行うのがベターと言えます。
では、メンテナンスが必要とされる劣化のサインを、以下で見てみましょう。
・シーリングの亀裂
ALCには、繋ぎ目である「シーリング」が存在します。
これがひび割れて劣化することで、水の侵入経路を作ってしまい、ALC内部をも劣化させていきます。
・塗装の剥がれ
前述したように、ALCは塗装の塗膜によって防水機能を付加しています。
そのため、塗装が浮き上がっていたり、剥がれていれば、そこから水の侵入を許してしまいます。
・カビやコケ
塗装が劣化していると、外壁にカビやコケが発生することがあります。
以上のような症状が見られたら、メンテナンスが必要なサインです。
また、他の外壁材の種類よりも網目が細かいALCは、面積が広いこともあり、劣化の進行が早い傾向にあります。
外壁の状態はこまめにチェックし、メンテナンスのサインを見逃さないようにしましょう。
ALCの外壁メンテナンス!おすすめの塗料の種類
これまでに、鉄骨造に推奨される外壁材の種類として、ALCを詳しくご説明してきました。
ALCメンテナンスですが、外壁の症状を見ながら行うことが重要なポイントとなります。
では、ALCの外壁メンテナンスをするにあたり、おすすめする塗料についてご紹介していきましょう。
まず前提として、塗装の塗り替えは、以下のように「3回塗り」で行っていきます。
①下塗り:塗料と下地を密着させるためのもの
②中塗り:塗装の色、防水機能のある塗料
③上塗り:中塗り塗料と同じもの
ALCの外壁塗料として、一つ目は「フッ素塗料」がおすすめです。
フッ素塗料の特徴には、耐候性が強いことが挙げられ、雨や風、気温変化からALCを守ることができます。
また、耐用年数が15~20年と長く、光沢感を長持ちさせることができる塗料です。
耐候性の低いALCには、相性が抜群な塗料と言えますが、コストがやや高いのが難点です。
二つ目のおすすめの塗料は、「シリコン塗料」です。
シリコン塗料は、ALCに最も採用されている塗料で、機能的には耐候性、耐久性、断熱性が高く、オールラウンドに優れています。
また、コストも安いので、予算を抑えたい方にはフッ素塗料よりもシリコン塗料をおすすめします。
以上のように、メンテナンスの塗り替え塗料は、ALCの防水性の低さを補うものがベストと言えます。
できるだけ長く外壁の寿命を延ばせるように、塗料選びも慎重に行ってください。
ALCの強みをメンテナンスで維持しよう
鉄骨造の外壁材には、ALCという軽量気泡コンクリートがメジャーであり、その多機能性は非常に魅力的です。
しかし、水に弱い特徴があることから、塗膜やシーリングの劣化からALC内部の耐久性にまで影響を起こす可能性もあります。
より長く、快適な暮らしを維持するためには、定期的な外壁メンテナンスを心がけるようにしましょう。