敷金はなぜ支払う?退去したら返金はいつまでにされる?

賃貸物件に入居したとき、「礼金」「敷金」「仲介手数料」などの初期費用を支払うことも多いでしょう。

この初期費用の中の「敷金」は、基本的には、退去時に清算されて返金されるべきお金です。

そのため、「いくら戻ってくるか」「いつまでに戻ってくるのか」といったことが気になる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、敷金についての疑問を分かりやすく解説します。

賃貸物件の入居時に「敷金」はなぜ支払う?

まずは、賃貸物件の契約時に発生する初期費用のひとつである「敷金」について解説します。

敷金とは、お部屋を借りるときに担保として大家さんへ預けるお金のことです。

借主の不注意による汚れや損傷があった場合、退去時にそれらを修繕するための費用として充てられます。

また、借主が家賃を滞納した場合にも敷金が使われます。

これらの費用を清算し、残ったお金が返金されるという仕組みのものが敷金です。

そのため、物件に汚れや損傷がなく、家賃滞納もない場合には、全額が返金されるというのが基本です。

しかし、実際には全額返金されるケースはほとんどありません。

ハウスクリーニングの費用が請求されたり、貸主がクロスの張り替えが必要になった、などの理由で、その代金が差し引かれるということもあります。

また、退去後、なかなか返金されないというケースもあります。

このように、費用負担の基準や、いつまでに敷金の返金がされるのかという期限が曖昧であると、敷金に関するトラブルが多く発生するのも事実です。

トラブルなく敷金を返金してもらうには、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。

敷金は原状回復の修繕費用が関係する!

ここでは、敷金をスムーズにできるだけ多く返金してもらうために、原状回復の意味を理解しておきましょう。

前項でもお話ししたように、借主の不注意による汚れや損傷を元の状態に戻すことを「原状回復」と言います。

借主の故意や過失など、通常の生活では起こらないような損耗・毀損の修繕は、借主が負担しなくてはいけません。

(家具移動による床の傷、飲食物によるシミなど)

一方、通常の生活での汚れや劣化は当然のことなので、経年劣化として原状回復には含まれません。

(自然光による畳の変色、長年使用によるクロスの剥がれ、画鋲の穴など)

また、クロスの価値は6年で1円になることをご存知でしょうか。

6年以上住んだ家を退去するときには、クロスの価値も減少しているので、負担割合を減らすことができるとされています。

このような、原状回復に関する判例などは、国交省ガイドラインに記載されています。

ガイドラインは、退去時の敷金返金トラブルや原状回復トラブルを未然に防ぐために公表されているものです。

本当に支払わなくてはいけない費用であるのか疑問が生じたときには、ガイドラインを参考にしてみると良いでしょう。

また、法律で「敷金は退去後いつまでに返金しなくてはならない」という規定はありません。

そのため、契約時には敷金の返金時期についてもきちんと確認し、納得した上で締結することが大切です。

敷金返金のトラブルを防ぐために!入居時の注意点

敷金トラブルを防ぐために、契約時の確認だけではなく、入居時にも注意したいポイントがあります。

入居した際、お部屋全体の汚れ、傷、カビなどのチェックは必ず行っておきたい作業です。

気になるところは写真に撮っておき、管理会社へ伝えるようにしましょう。

こうすることで、元からあった汚れや傷が明確になり、退去時にトラブルになることを防げます。

そのほか、チェックポイントをいくつか挙げます。

・扉や窓の開閉はスムーズであるか
・玄関インターホンは正常に使えるか
・換気扇は作動しているか
・蛇口からの水漏れはないか
・排水口から臭いは上がってきていないか
・カビは発生していないか
・エアコンは正常に作動するか
・バルコニーに残置物がないか
・床、天井、壁、建具などに汚れや傷などがないか

次項では、敷金の返金はいつまでにされるものであるか、期限について解説します。

敷金返金はいつまでに行われる?

賃貸物件を退去し、次の入居先へ引越しをする場合、できるだけ早くまとまった資金が必要になることもあります。

退去した物件の敷金をあてにしている場合には、いつまで経ってもなかなか返金されないと困ってしまいますね。

そんなときは、まず契約書に敷金の返金期限についての記載があるか確かめてみましょう。

敷金返金の時期について「引き渡し後〇日以内」や「敷金清算後〇ヶ月以内」など具体的な日数が記載されていれば、その期限まで待ちましょう。

もし記載がない場合は、大体の目安は1~2か月程度と認識しておきましょう。

敷金はあくまでも「預けたお金」であるため、ほとんどの貸主は退去後遅延なく返金するものです。

1~2か月を過ぎても連絡も返金もない場合は、大家さん、または不動産会社に返金時期について問い合わせてみましょう。

敷金がいつまでも返金されない!内容に納得がいかない!そんな場合は?

敷金は返金されものだと当たり前のように待っていたら、いつまでも返金されないというケースもあります。

考えられる理由としては下記の事柄が挙げられます。

・家賃の未払いがあった
・原状回復に敷金以上の修繕費用が掛かった
・ハウスクリーニング費用が借主負担であった

高額な修繕費になり、原状回復の内容に納得がいかない場合は、大家さんや不動産会社へ連絡をして内容について詳しく聞いてみましょう。

もし、それでも納得がいかない場合には、全国の消費者生活センターへ相談してみましょう。

また、これまでにも触れたように、本来であれば借主の故意や過失でない劣化は貸主の負担となるのが通常ですが、契約書の特約にクリーニング費用が借主負担と記載されていることもあります。

日常から掃除をしっかりとしていて、退去時にもハウスクリーニングが不要と思われる場合には、不動産会社へその旨を伝えて、負担がなくなるよう交渉するのも良いかもしれません。

敷金の返還請求はいつまで可能?

敷金は問題なく返金されるべきお金ですが、いつまでも戻ってこない場合もあります。

大家さんに連絡したにもかかわらずそれでも返金されないと、どうしていいか困ってしまいますね。

また、中には忙しくて対処できないという方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そのまま放置してしまっては、戻ってくるはずの敷金が返金されなくなってしまいます。

そのような場合、敷金の返金を請求できる権利というものがあることをご存知ですか。

「敷金返還請求権」とは、賃貸貸契約の終了・退去に伴って発生する借主の権利です。

これには期限があり、一定期間を経過すると権利の行使ができなくなってしまいます。

この時効の期間は10年ととらえる場合もあれば、借人が個人であっても貸人が事業者である場合(商行為に基づく場合)5年とされる場合もあります。

そのため、請求が可能である早い段階で対処するようにしましょう。

敷金トラブルを防ぐためには契約時の確認が大切!

退去時の敷金の清算、返金時期についてはトラブルがとても多いのが事実です。

本来ならば、清算の後、スムーズに返金されるべきお金です。

契約時には原状回復に関する事項、そして、敷金が何に使われるか、いつまでに返金されるかといった内容をきちんと確認するようにしましょう。