敷金・礼金なしの賃貸物件は退去時費用の負担が大きい?!

賃貸物件を探していると、初期費用が思いのほかかかる現実に直面し、できるならばなるべく初期費用をおさえたいと思うことでしょう。

特に敷金・礼金の費用はかなりまとまった金額になるため、もし敷金・礼金なしで入居できる賃貸物件があったら気になるのではないでしょうか。

しかし、敷金・礼金なしの賃貸物件は退去時費用の負担が大きい場合や、賃料が少し高めである場合があります。

では、敷金・礼金なしの賃貸物件についてさらにくわしくご紹介していきます。

そもそも敷金・礼金って何?

賃貸物件を探していると「敷金◯ヶ月・礼金◯ヶ月」という文字を目にするでしょう。

そもそも敷金と礼金とはどのようなものなのでしょうか。

まず、敷金について簡単にご説明します。

敷金とは、主に下記のような事態が起きたときのための預け金です。

・借主が故意・過失によってできた傷や汚れを修繕する

・家賃の滞納があったときの担保にする

万が一、何かあった場合は、敷金から差し引かれることになります。

一方、退去時まで使われず、修繕もなかった場合は全額返金されることもあります。

次に、礼金について簡単にご説明します。

礼金とは、「入居時に貸主である大家さんに、お礼の意味を込めて支払うお金」です。

お礼のお金ですから返金されることはありません。

このような意味を持つ、敷金・礼金ですが、数多くの賃貸物件のなかには、この敷金・礼金を必要としない「敷金・礼金なし」の賃貸物件があります。

しかし、敷金を預けていないわけですから、退去時に傷や汚れを修繕しなければならないことを想定すると、「退去時費用」を退去までには用意しておかなければならないでしょう。

「退去時費用」ってなに?

敷金・礼金なしの賃貸物件では、ただ漠然と「退去時費用の負担が大きい」という印象を持つ方も少なくないようですが、退去時費用とは、具体的にどのようなものなのかをご説明します。

賃貸物件を退去する際には、原状回復に必要な費用が発生します。

原状回復とは、入居前の状態にして退去するということです。

原状回復にあたり、借主負担となる修繕費は敷金から補填されますが、敷金を預けていない場合は、借主が用意しなくてはなならない場合が多いでしょう。

では、借主負担となる退去時費用の例をみていきましょう。

●修繕費

以下の場合は、借主の負担で修繕しなければなりません。

・家具の移動でついた床や壁の傷

・ペットによる床や壁の汚れや傷

・開けっ放しの窓から吹き込んだ雨染み

・日常の掃除を怠ったことによる水回りのカビや水垢

●ルームクリーニング代

退去後の業者による部屋の清掃です。

ルームクリーニング代は貸主負担としている賃貸物件もありますが、多くの場合で借主が負担しているようです。

●鍵の交換

ルームクリーニング同様、貸主が鍵の交換費用を負担する場合もありますが、賃貸物件によっては鍵の交換費用を借主が負担する場合があります。

例にあげた、これらすべてを借主負担で修繕するというわけではありません。

貸主・借主どちらが負担するのかということは契約書を確認しましょう。

退去時費用として借主が負担しなくていい原状回復とは?

退去時費用について、原状回復に伴う借主が負担すべき内容は、前項にてお伝えした通りです。

では、原状回復をするにあたり、借主ではなく貸主が負担すべき内容とはどのようなものなのかを見ていきましょう。

・畳の表替えや裏返し

・床のワックスがけ

・家具の設置による設置跡、カーペットのヘコミ

・床や畳、壁の日焼け

・家電による壁の電気ヤケ

・下地の交換を必要としない画鋲程度の壁の穴

・設備機器の寿命による交換

・ルームクリーニング

・鍵の交換

このような修繕については貸主の負担とされています。

原状回復にあたり、全ての修繕を借主がするのではなく、経年劣化に伴うような傷みは貸主の負担で修繕されます。

しかし、先にも述べた通り、ルームクリーニングや鍵の交換などは、場合によって借主が負担する場合もあります。

特に、敷金・礼金なしの賃貸物件においては、それらの費用を借主が負担する場合が多い傾向にあります。

不明な点は契約書を確認するようにしましょう。

敷金・礼金なしの賃貸物件は退去時費用の負担が大きい?!

ほとんどの賃貸物件では、敷金・礼金を数か月分おさめて入居する場合が多いのですが、お伝えしている通り、なかには敷金・礼金なしの賃貸物件もあります。

一見すると、借主にとってはありがたいような賃貸物件ですが、貸主である大家さんにとっては少々デメリットでもある条件に思えます。

では、敷金・礼金をなしにする理由はどのようなものかみていきましょう。

①借り手がなかなか居ない

築年数が古かったり、交通の便が悪かったりすると、借り手を見つけるのが難しいためです。

②退去時費用が借主負担

退去時費用を借主に負担してもらうため、敷金を預からないことがあります。

③家賃を高めに設定

月の家賃が高いため、敷金・礼金をなしにしている物件もあります。

④住環境が良くない

近隣に買い物や娯楽施設がない場合、入居してもらうのが難しいためです。

これらの理由から敷金・礼金なしにする傾向にあるようです。

ですから、退去時費用の負担が借主であることから費用負担が大きいのも理由のひとつといえます。

しかし、他にも理由があるので敷金・礼金なしの賃貸物件すべてがその理由とは限らないということがわかりますね。

敷金・礼金なしの賃貸物件は初期費用をおさえて入居できる!

敷金・礼金なしの賃貸物件は、通常まとまったお金が必要となる初期費用の負担を軽減することができます。

しかし、前項でお伝えした通り、敷金・礼金なしにする理由があることも忘れてはなりません。

さらに、初期費用をおさえられるといった理由だけで即決してしまうのではなく、自分の条件と合うのか検討しましょう。

その際、下記の事項を参考にしてみることをおすすめします。

①敷金・礼金以外にかかる初期費用

初期費用は敷金・礼金以外にもかかりますから、他にどのような費用がかかるのか確認しましょう。

②退去時費用の負担区分

退去時費用はまとまったお金が必要になります。

敷金なしの場合、原状回復に伴う費用は退去時までに実費で用意しておく必要がありますから、貸主・借主の原状回復に伴う負担についてはしっかりと確認しておきましょう。

また、現状渡しなのかリフォームするのかといった条件も合わせて確認しておくことをおすすめします。

③解約や退去の申し出について

短期解約では違約金が発生する場合があります。

なお、退去の際はどのくらい前に申し出ればいいのかということも確認しておきましょう。

④特約条件があるのか(子ども可の物件かなど)

敷金・礼金なしの賃貸物件は単身者向けが多いのですが、特約条件に子ども可能であれば家族での入居可能です。

これらの条件を慎重に検討し、納得したうえで敷金・礼金なしの賃貸物件を契約をするようにしましょう。

敷金・礼金なしの賃貸物件では、退去時費用以外にも必要な費用がある

敷金・礼金なしの賃貸物件は、慎重に検討しなければならないでしょう。

これまでお伝えしたように、敷金・礼金なしの理由は様々ですが、いずれにしても退去時費用の負担が大きくなります。

初期費用としてまとまった費用を用意しなくてもいいので、入居時の費用負担は軽く済みますが、計画的に退去時費用を用意していかなければなりません。

そして、敷金・礼金がかからないといっても、条件によってはさまざまな初期費用が発生します。

●保証会社への加入が必要

貸主である大家さんの判断であったり、借主に連帯保証人がいなかったりする場合、保証会社へ加入します。

保証会社への加入するとなると、月額家賃の50~100%の金額をおさめなければなりません。

●火災保険への加入が必須

賃貸物件である以上、自分の過失による火災だけでなく周囲からの火災による被害から家財を保障するためにも必要不可欠です。

このような費用が初期費用として必要になります。

●仲介手数料

賃貸物件を紹介し、手続きなどをしてくれた不動産会社に支払う手数料です。

●前家賃

前家賃は入居月の家賃を前払いで払います。

このように、敷金・礼金なしだから初期費用がかからないわけではありません。

費用負担を軽減するために、敷金・礼金なしの賃貸物件にすると考えるようにするといいのではないでしょうか。

敷金・礼金なしの賃貸物件は慎重に検討する必要がある

敷金・礼金なしの賃貸物件は、初期費用をおさえられるため魅力的といえます。

しかし、敷金・礼金なしの賃貸物件は退去時費用の負担が大きいだけではなく、初期費用として保証会社や火災保険などの加入による費用もかかります。

敷金・礼金なしだとしても、その条件でも納得できるのか慎重に検討する必要があるといえるでしょう。