アパートを退去する際は、原状回復を求められます。
特に壁紙というものは、汚れや傷がつきやすく目立ちやすいため、修繕費用がいくらかかるのか気になるものですよね。
しかし、借主が壁紙全ての傷汚れに関して費用負担をするとは限りません。
ここでは、修繕費の負担について、原状回復の範囲を見ながら解説していきます。
アパートの壁紙についた傷や汚れ!どこまでが借主負担?
アパートの壁紙に「いつの間にか傷や汚れがついていた」なんてことはよくある話ですね。
しかし、アパートを退去する際には原状回復の義務が課せられますから、修繕費がどのくらいかかってしまうのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
ただし、アパートの壁紙についてしまった傷や汚れは、全てが借主負担になるとは限りません。
原状回復というと、「入居時の状態に部屋を戻すこと」と理解れている方も多いですが、詳しくはもとの状態に戻すのではなく、「故意・過失」による劣化を回復させることを意味します。
国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には「借主の故意・過失、その他の使用を超える消耗を復旧する」とあります。
簡単に言えば、借主が故意によって傷や汚れをつけてしまったものに関してのみ、借主が修繕費を負担することになります。
では「故意・過失」の劣化にはどのようなものが当てはまるのでしょうか。
壁紙の傷や汚れ!原状回復を求められるのはどんなとき?
では、ここから原状回復の対象となる例をいくつかご紹介していきます。
・キッチン壁への油飛び
キッチンは火を扱う場所であるため、油やコゲなどの汚れがどうしても発生しやすいです。
この汚れがひどい場合、不当な使用をしたとして原状回復費を請求される可能性もあります。
壁だけでなく、コンロや換気扇も対象となりますので、注意しましょう。
・子供の落書きおよび傷
小さな子供は好奇心から、アパートの壁紙に落書きをしてしまうこともあるかもしれません。
特に、油性ペンのような落ちにくいもので書かれてしまったときには大変です。
普段から子供に落書きをしないようによく言い聞かせておき、まだ言葉が理解できない年齢ならば、手の届く範囲にペンを置かないなどの対策をしておくとよいでしょう。
加えて、子供がおもちゃなどを投げたり、振り回したりして壁紙に傷がついたときも、原状回復の対象となります。
アパートの壁紙に画鋲などで穴を開けた場合は?
壁紙に飾るものの中では、ポスターやカレンダーを飾る方も多いのではないでしょうか。
これらを壁紙に飾るときは、画鋲などで壁紙に穴を開けることになりますが、画鋲で開けた穴も原状回復の対象になってしまうのでしょうか。
結論から言いますと、ポスターやカレンダーなどは一般的に使用されるものですから、自然損耗としてみなされます。
つまり、「画鋲」のような小さな穴であれば、原状回復は発生しないということです。
しかし、ここで注意したいのが、ネジや釘などの画鋲よりも範囲の広い穴の場合です。
これらの穴は、重量物を壁に取り付けるために開けたものとみなされてしまいます。
また下地ボードにまで傷がつき、ダメージが及んでしまう可能性もあるため、自然損耗とは判断されにくく、借主負担になるケースが多いです。
また、先ほどは「画秒程度の小さな穴なら原状回復は発生しない」とお伝えしましたが、アパートに特約がある場合は注意が必要です。
例えば、契約書の特約に「壁紙に穴を開けたら費用を請求する」といった内容が記載されたいた場合は、たとえ画鋲のような小さな穴であっても、修繕費を請求される可能性が高くなります。
壁紙の修繕は傷や汚れだけじゃない!臭いにも注意
壁紙の原状回復に関しては、傷や汚れだけではなく「臭い」も対象となることがあります。
例えばペットの臭いです。
ペットを飼っている場合、ペットの尿や特有の臭いが壁紙に染みつく可能性があります。
この場合も、壁紙を全面張り替えなければならない可能性があります。
また、臭いだけでなく広範囲に引っかき傷などがあった場合も、壁紙の修繕費用の負担となりますので注意が必要です。
なお、ペット可のアパートの場合、あらかじめペットによる傷や汚れを想定された家賃や敷金が設定されています。
そのため、契約内容次第では、ペットがつけた傷や汚れ、臭いに関しては借主に費用負担を請求されない場合もあります。
壁紙以外にも!借主負担となるケース
壁紙以外にも、借主が負担しなければならないケースがいくつかあります。
・飲みこぼしや食べこぼしでついたシミ
床やカーペットに飲み物をこぼしたり、食べ物をこぼしたりしてシミや汚れになった場合も、原状回復を求められる可能性が高いでしょう。
特に、醤油やコーヒー、カレーなどの落ちにくい汚れはそのまま放置してしまうとどんどん落ちにくくなります。
もし、こぼしてしまったときは速やかに拭き取り、シミや汚れが残らないように対処しましょう。
・手入れを怠ったことで発生したカビや汚れ
お風呂場や洗面所など、湿気が多い場所はカビが発生しやすいですが、こまめに掃除をして換気を行えば防ぐことはできるはずです。
そのため、カビや水垢に関しても原状回復の対象となります。
ほかにも、エアコンの水漏れや結露の放置によって発生したカビに関しても、借主が原状回復費用を負担することになります。
・床のへこみ
重たいものを運んでいるときに、手が滑って床に落としてしまったなどで、床を傷つけてしまった場合は、故意の過失となり原状回復の対象となります。
・ミラーの破損
アパートにもとから備えつけられていた鏡を破損してしまったときも、原状回復の対象となります。
アパートの退去時「傷や汚れ」が貸主負担になるケース
最初でもお伝えしたように、借主がアパートの原状回復費用を負担する必要があるのは、あくまでも「故意・過失」による劣化です。
それ以外の劣化、つまり自然に劣化(消耗)したものに関しては貸主が負担することになります。
では、貸主負担となるのは、どのようなケースがあるのでしょうか。
・壁紙の日焼けによる経年劣化
当たり前ですが、通常に暮らしていれば日光などで壁紙なども劣化していきます。
そのため、日焼けによって壁紙が劣化した場合は自然損耗とみなされ、貸主が負担することになります。
・電化製品による黒ずみ
冷蔵庫などの電化製品から排出される熱によって、壁紙が黒く傷んでしまうことがあります。
これらの電気焼けも、自然損耗となり基本的には貸主が負担することになります。
・家具の重みによるへこみ
冷蔵庫や洗濯機など、重い家電を同じ場所に置いておくとその重みで床がへこんでしまうことがあります。
しかし、このへこみに関しては自然損耗として貸主が負担することになります。
日ごろから手入れを行うことが大切
ここまでご説明したように、手入れを怠ったり、不注意によって発生したりした傷や汚れに関しては、借主が負担することになります。
特にシミやカビなどは、放置する期間が長ければ長いほど、落ちにくくなります。
誰でも退去時にかかる原状回復費用は抑えたいと思うはずです。
汚れたらすぐに掃除をする、湿気が多いところは換気をする、など少しの手間をかけるだけで、現状回復にかかる費用は大きく変わってくるでしょう。