鉄骨造のメリット!柱のスパン・耐震性・耐久性の他には?

鉄骨造は、アパートやマンション、店舗などで選ばれることが多い構造ですが、マイホームの構造として考えても優れた点はあります。

重量鉄骨、軽量鉄骨それぞれのメリットをご紹介しますので、参考にしてください。

柱のスパンや建物の強さ、遮音性など、さまざまなメリットをお伝えします。

鉄骨造の基本知識!いろいろな構造がある

鉄骨造は、鉄や鋼の材質を使った建築構造です。

S造、S構造、鉄骨構造などとも呼ばれます。

多くの場合、鉄骨造と呼ぶときには「重量鉄骨ラーメン構造」のことを言います。

重量鉄骨とは、厚さ6mmを超える材質で、ラーメン構造とトラス構造で選ばれています。

また、軽量鉄骨は厚さ6mm以下の材質で、ブレース構造に使われることが多いです。

・ラーメン構造

梁、柱を剛接合することで、筋交いを省くことができる構造

・トラス構造

三角形を組み合わせるように建てていく構造

・ブレース構造

柱と梁、筋交いを使う構造

上記の他に、製鋼工程や規格、断面などによって分類することもできます。

一口に「鉄骨造」と言っても、さまざまな構造や材質があるということです。

燃え始めてから倒壊するまでの時間が短い、錆びやすい、変形しやすいといったデメリットがありますが、「柱のスパンが広い」などメリットも多いので、次項でご紹介します。

鉄骨造のメリット!柱のスパンの他には?

鉄骨造のメリットで注目すべき点として、「柱のスパンを広くとれる」という点が挙げられます。

木造の場合でも、太い柱を使うことによって安定度を高め、柱の本数を減らすことはできますが、頑丈な柱にはコストがかかります。

しかし、鉄骨造なら柱と柱の間隔を広くとっても住宅を支えることが可能です。

とはいえ、一般的に軽量鉄骨において5m以上のスパンで建てられることは少ないでしょう。

スパンを広くとれるのは重量鉄骨で、そのメリットを利用して1階部分に駐車場を作るなど、敷地を有効に使うことができます。

では、その他のメリットは何があるのでしょうか。

一つずつ、ご紹介していきます。

◎重量鉄骨なら遮音性が高い

二階建て、あるいは三階建てで、階下の音が上階に伝わりにくいというメリットがあります。

もちろん二階(三階)の音も下に伝わりにくいため、足音や家具を動かす音などの騒音に悩まされることも少ないでしょう。

木造でも材質や厚みによっては音が響きにくいものですが、鉄骨造はコンクリートで仕切っていくので、比較的遮音性が高いです。

鉄骨造のメリット!耐震性・リフォームしやすい・長持ちする

引き続き、柱のスパン以外のメリットを取り上げていきます。

◎耐震性

鉄骨造は構造計算を行って、高い強度で建てられます。

したがって、地震が起きてもすぐに倒壊するということはなく、衝撃を吸収しやすい構造となっています。

揺れは感じますが崩れにくいという点で、鉄骨造は優れています。

◎リフォームの自由度が高い

柱で支え、それぞれの壁や床(天井)がしっかりとしている構造なので、リフォームやリノベーションを行いやすいのも利点と言えるでしょう。

主に「壁」で建物を支える構造よりも、「柱」で支える構造のほうが、壁の位置を変更したり取り去ることができるので、大掛かりな間取り変更に対応できます。

「コストがかかる」という意味では簡単に行えることではありませんが、将来を考えて自由度の高い構造を選びたいのであれば、鉄骨造が選択肢に入ってくるでしょう。

◎長く住める

先ほども述べたように、錆びやすい、変形しやすいというデメリットはありますが、きちんとメンテナンスを行えば長持ちしてくれます。

柱のスパンが変!?鉄骨造の良さを活かせない設計!構造計算の一例

柱のスパンが広く、耐震性・鉄骨造・遮音性などに優れた鉄骨造。

専門知識を学び、豊かな経験を持つ者が設計すれば、完成度は高くコストは低い建物を建てることができます。

しかし、誰にでも得意分野と苦手分野があるようで、鉄骨造でも柱を3mスパンで配した設計を見かけたという声を聞きます。

素人の場合、こうしたことには気づきにくいものですが、建築を学んでいる人間から見れば一目瞭然です。

構造計算を実践していれば、上記のような設計は起こらないはずです。

少し専門的なお話になりますが、「構造計算」についてご説明します。

●曲げモーメント(曲げ応力)

部材を曲げたとき、垂直断面にはたらく応力のモーメントのことです。

部材にかかる単位長さ当たりの荷重や、部材のスパンなどを使って計算します。

構造屋さんの中には、この曲げモーメントを導き出すことで、部材の大きさをすぐにイメージできる人も多いのです。

この他にも、許容曲げ応力度をもとに導き出す「必要断面係数」の計算などがあります。

すぐに理解できることではありませんが、細かい構造計算を行って設計、建築をしているということを知ることで、鉄骨造への信頼感が高まるのではないでしょうか。

軽量鉄骨造のメリットとは?

鉄骨造について、いくつかのメリットをご紹介してきました。

柱のスパンや遮音性について知ると、「軽量鉄骨よりも重量鉄骨のほうがメリットが多い」という印象を持ったかと思います。

確かに、2つの構造を比較したとき、耐久性や強さなどを考えると、重量鉄骨のほうが優れた点が多いと言えます。

しかし、軽量鉄骨であれば建設コストを抑えることができます。

鉄骨の厚みが薄く、比較的柱が細いことから材料費が安くなり、建物の用途や規模によっては軽量鉄骨のほうが良いと判断されることもあるでしょう。

一戸建ての住宅や小さなお店、アパートなどを建てる際に軽量鉄骨がよく選ばれ、大規模なマンションや工場などを建てる際に重量鉄骨が選ばれることが多いです。

ただ「軽い」、「重い」という違いだけではないのです。

柱のスパン以外のメリット

マイホームを建てるときに、「鉄骨造だと冷たくて味気ない印象なのでは?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、鉄骨造だからといって無機質な印象になるわけではなく、木造のような温かみを感じさせる住宅を建てることも可能です。

柱など部分的に、あえて鉄骨の部材を見せることでアクセントとなり、モダンな空間を造ることもできるでしょう。

また、柱のスパンが広いことから、柱を見せずに広々とした空間を造ることもできます。

実は、鉄骨造のメリットは上記で挙げた点以外にもあります。

少し専門的なお話になりますし、ケースバイケースではありますが、下記のメリットもあるので参考にしてください。

◎工場で生産された部材を現場で組み立てていくため、工程がシンプルで品質にバラつきが生じにくい(重量鉄骨ラーメン構造)

◎工期を短くすることができる

◎均一な部材を使って建てることができる

◎建物を解体することになった際に、解体コストを削減できる

◎安定度が非常に高く、橋や体育館など大規模な建築物を建てる際に適した構造(トラス構造)

鉄骨造ならではのメリットを知ろう

鉄骨造は、柱のスパンを広くとっても建物を支えることができます。

大掛かりなリフォームにも対応でき、広々とした空間を造ることもできますし、建設コストを抑えることにもつながります。

その他にもたくさんの魅力がありますので、鉄骨造でマイホームを建てることを検討してみてはいかがでしょうか。