今の世の中、何に対しても消費税がかかりますが、私たちが住まいとする賃貸ではどうでしょうか。
住居用としてマンションを借りる場合、賃料や管理費には消費税が発生しませんが、場合によっては賃料や管理費にも消費税が発生するケースもあります。
なぜ同じ賃貸なのに課税・非課税とケースが分かれるのか、疑問に思う方も多いことでしょう。
そこでこの記事では、賃料や管理費に関する消費税の疑問について詳しくお話ししていきます。
賃料と管理費の消費税事情!どんな場合が課税対象になる?
現在では、お金の取引には消費税ありきであることが当然でもあり、それゆえにそれがなぜ課税・非課税対象なのか、疑問に思う機会もあまりありません。
しかし、冒頭で述べたように、マンションなどの賃貸借契約に付随する賃料・管理費においては、場合によっては賃料や管理費も課税対象になることもあるため、それをきっかけにこの違いに疑問を持たれる方は多いことでしょう。
では、一体どのような場合に課税対象となるのでしょうか。
それは、事務所や店舗などの建物を事業用物件として貸し付ける場合です。
しばしば、「法人=課税」「個人=非課税」という解釈を見ることがありますが、たとえ個人でも事業目的で物件を借りる場合は、消費税が発生することになります。
つまり、課税・非課税の違いは物件の使用目的で判断され、住居目的で物件を借りる場合は非課税、事業目的であれば課税対象となります。
賃貸契約と実際の用途が異なるケースも!賃料の消費税をめぐるトラブル
賃料に関わる消費税については、「住居目的か事業目的か」で課税・非課税が変わってくることが分かりましたが、実は契約上の用途と実際の用途が異なるケースも少なくありません。
よく見られるのは、住居目的で契約した賃貸で、数年後にサロンや習い事の経営を始めるケースです。
これはつまり、住宅兼店舗という形で賃貸を使っているということになります。
国税庁によると、住宅兼店舗、事務所としている場合は、利用している面積比率から判断し、消費税が算出されることになっています。
例えば、管理人に伝えた上で、「これまで通り賃貸は非課税」と判断された場合は問題ありません。
しかし、管理人に黙ったまま勝手に賃貸をオフィスと兼用している場合は、賃料の消費税をめぐってトラブルになる可能性もあります。
したがって、賃借している自宅が事業所となる時点で、用途変更についてはあらかじめ管理人に相談しておくことが大切です。
もし用途変更が必要であると判断された場合は、賃料に消費税分が加算されることになります。
次項では、賃料以外に必要となる管理費についてご説明していきます。
マンション管理費の消費税事情は?
では、賃料以外の管理費は課税対象となるのでしょうか。
結論から言うと、共益費・管理費の名目で計上される費用は、全て消費税はかかりません。
そもそも管理費とは、マンションなどの共用部分を管理・維持し、マンション全体を運営するための経費です。
共益費も管理費と同じような経費ですが、厳密に言うと以下のような共有スペースの維持費に充てられます。
ただし、この両者の明確な取り決めは法的に定められているわけではないため、一般的には以下の費用に充てられることが多いです。
・エントランスや共用廊下の電気代
・定期清掃費用、修繕費用
つまり、入居者が住宅を共同で利用する部分において、居住するために必要となる維持・管理費用に関しては非課税ということになります。
また、共益費・管理費以外にも、集合住宅で入居者が利用する設備・サービス費用に関しては、すべて消費税がかかりません。
例えば、はじめから駐車場が付随している物件の場合、駐車場の利用料は課税対象になりません。
管理費以外の設備・サービスの消費税はどうなる?
前項では、賃料以外の共益費・管理費が非課税であることをお話ししてきました。
ただし、入居に際して、入居者自身が選択した上で利用する設備・サービスの費用に関しては、消費税が発生するので注意が必要です。
では、課税対象の具体的な事例を以下で見ていきましょう。
・駐車場利用料
前述したように、はじめから駐車場付き物件で、賃料に駐車場利用料が含まれている場合は、駐車場の敷地も含めて貸し出しているため、課税されません。
その一方で、物件とは別で契約するような駐車場は、入居者の選択によって委ねられるため、課税対象になります。
・倉庫の利用料
はじめから物件に付随しておらず、入居者の希望で利用している場合は課税対象となります。
・プールやトレーニング施設
入居者自身の選択で、物件とは別で契約する施設の場合は課税されます。
以上のように、非課税となるのはあらかじめ賃貸物件に付随した(含まれた)設備・サービスだということを覚えておきましょう。
住居用賃貸の賃料と管理費はなぜ非課税?その背景とは
では、なぜ住居用の賃貸の場合、その賃料と管理費には消費税がかからないのでしょうか。
その背景には人が生きる上で必要となる「衣食住」と、「担税力」という考えが関わっています。
消費税導入当初は、住居用の賃料と管理費は課税対象となっており、当時は3%の税率が賃料に課されていました。
例えば、60,000円の賃料であれば、消費税込みで61,800円を支払わなければならなかったということです。
しかし、税の観点から見ると、税金は払える者が払う「担税力」という考えに基づいて成り立っており、つまりは極端な話、「モノを買える者が納税し、買えない者は納税しなくてよい」という考え方ができます。
消費税導入以降、世の中が平成に突入し、社会政策が始まると、「担税力」をもとに「基本的な最低限度の生活を保証する」という定義が盛んにアプローチされ、消費税の非課税対象の拡大が行われました。
そこで、「衣食住」の「住」である住居用賃貸の賃料や管理費も、最低限度の生活であることから非課税となったのです。
この背景を考えると、同じ賃貸であるにもかかわらず、課税・非課税とケースが分かれる理由が分かりますね。
注意したい賃貸の消費税事例!分かりづらい特例を知っておこう
これまでに、住居用・事業用の賃料、管理費に対する課税・非課税について、その事例や背景を詳しくお話ししてきました。
では最後に、注意したい賃貸の消費税事例を見ていきましょう。
まず一つ目は、「借り上げ社宅」です。
借り上げ社宅とは、企業が賃貸住居を借り、社員に貸し出す住宅制度で、企業の福利厚生の一つです。
法人である企業が貸主となって、社員に社宅を与える借り上げ社宅の場合、企業から管理会社への賃料は非課税となります。
そのため、社員から企業への賃料にも消費税が課されることはありません。
次に注意したいのが、「まかない付きの下宿」です。
これまでご説明したように、住居用となる部屋代は非課税になる一方で、食事となる「まかない」には消費税がかかります。
と言うのも、まかない部分と部屋代部分が区別されている場合は、その区分に沿う形になり、サービスとなるまかないは課税対象となります。
以上のことは、課税対象か否か分かりづらい事例としてしばしば取り上げられるため、覚えておくと良いでしょう。
住居用か事業用かで課税も変わってくる
賃貸を借りるにあたっては、住居用か事業用かの用途別で課税のいかんも変わってきます。
その背景には、住居用の賃貸が「人が生活する上での基本的な住まい」として位置づけられ、その最低限の生活を国が保証する社会的な考え方が関わっています。
ただし、お話ししてきたように、課税・非課税の区分が分かりづらいケースもあるため、賃貸物件を借りる際はあらかじめよく確認することが大切です。