敷金については、賃貸契約時の支払いによる貸主からの領収書、また退去時であれば返金による借主からの領収書が発行されるのかも気になるところです。
また、もし領収書が発行されない場合、それに代わる証明などはあるのでしょうか。
今回は、敷金支払い時の領収書の発行及び、返金時の領収書発行についてご説明していきます。
敷金・礼金の支払時は領収書が発行される?
賃貸契約を結んだら、初期費用として様々な費用がかかるものです。
その賃貸に入居するための引っ越し費用はもちろん、敷金や礼金の支払いもそれに挙げられるでしょう。
ここでは、賃貸契約における重要な初期費用として、敷金と礼金についてご説明していきます。
・敷金
敷金は、実際には貸主へ「支払う」というよりも「預ける」という意味合いの強い費用です。
敷金を貸主へ支払うにより、退去時に重要となる原状回復にそれが充当されます。
それだけでなく、万が一借主による家賃の滞納が見られる場合には、その費用として充当されるなど貸主を守る役割も果たしています。
また、原状回復のための修繕費用などを差し引いた分は返金されます。
・礼金
礼金は、これからお世話になる賃貸の貸主へのお礼の意味合いが強い費用です。
そのため、一度支払った礼金は退去時であっても返金されません。
つまり、収入として当てはまる費用のため、借主から求められれば貸主は領収書を発行する必要があります。
敷金支払い時の領収書発行義務ポイント「弁済」
賃貸契約において重要となる敷金の支払いですが、その際に貸主が領収書を発行する義務はあるのでしょうか。
結論から言うと、敷金支払いの際、領収書発行の義務は原則として貸主にありません。
それには、敷金の支払いが「弁済」に当てはまるはどうかが関係しています。
この弁済は、債務内容に沿って給付を行うことを指します。
債務により資金を給付した側は、給付された側に対し領収書などの発行を請求できるという趣旨の内容が民法でも定められています。
しかし、敷金の意味合いとしては述べた通り「預ける」という意味合いが強く、それは債務における給付や返金に関係するものとは言えません。
つまり、敷金の支払いは弁済に当てはまらないことから、領収書の発行義務は賃貸の貸主には無いということになります。
領収書の代わりに!敷金預かり証における返金などの記載内容
敷金といえば一般的に家賃1か月分ほどの金額であり、借主としてはそれが受領された証明が領収書でなくとも何らかの形で受けられないかと思うところでしょう。
敷金支払いの際、領収書とは別の形として発行されるものを預かり証と言います。
また、この敷金預かり証の記載内容は主に以下となります。
・敷金返金についての記載
敷金返金に関しては賃貸契約書にも記載がありますが、敷金預かり証においても同様です。
特に、敷金返金時にどのような清算方法を用いるのかなどが明確に記載されていることで、その際の貸主と借主のトラブルを避けやすくなります。
・家賃の変動についての記載
事情により家賃の変動があった場合、敷金の積み増しなどが借主に求められることがあります。
家賃の変動によるこのような変更は、手間であっても随時覚え書きを貸主・借主双方に発行することが望ましいでしょう。
これら以外にも、敷金を支払った借主の氏名やそれを受けた貸主の氏名、またその金額の記載もあります。
支払い・返金履歴も関係?敷金預かり証が発行されない理由
領収書ではないにせよ、敷金預かり証の発行によりそれが受領された証明となれば、借主としても安心ですよね。
しかし、賃貸によってはこの敷金預かり証が発行されずに借主が困っているケースもあるのです。
そのようなケースには、以下の理由が関係しています。
・敷金の支払い・返金履歴が銀行口座などに残るため
例えば、銀行振込みによる敷金の支払い・返金の場合、その履歴が口座に残ります。
つまり、その履歴があれば預かり証の発行が無くとも敷金の支払い・返金の証明になるというのが理由です。
・借主による預かり証紛失を避けるため
万が一借主が預かり証を紛失した場合、何者かがそれを手に入れることによって悪用される懸念もあります。
・預かり証発行により発生する経費の削減
預かり証を貸主が発行する場合、印紙税などの経費もそれに併せて発生します。
わずか数百円であっても、貸主としては少しでもこのような経費を削減したいという思いがあるようです。
敷金返金トラブルも!振込票提出による支払い証明の確保を
敷金の支払いにおいて、預かり証が発行されないケースはまれと言えますが、万が一そのような状況に出くわした場合に注意したいポイントがあります。
賃貸退去後、原状回復などに充当されてもなお余った敷金に関して、借主は貸主へ返金を求めることができます。
ところが、敷金が余っているにもかかわらず、借主へ返金されないケースもあります。
単純に貸主が失念しているだけであれば、請求すればそれほど問題なく返金してくれるでしょう。
しかし、いつまでも返金されないような場合、故意である可能性も考える必要が出てきます。
そのような場合、最終手段として裁判を余儀なくされることもあります。
また、裁判には賃貸契約時に敷金を借主が支払った敷金預かり証などの証明の提出も求められます。
万が一敷金預かり証が発行されない場合、それに代わる証明の提出が重要です。
そのため、前項で触れた銀行振込みなどによる敷金の支払い・返金の口座履歴に加え、その際に発行される振込票もその証明として提出できるよう保管しておくようにしましょう。
次項では、賃貸退去時に敷金が返金された際に、借主はそれに対する領収書を貸主へ発行するべきか否かについてご説明します。
敷金が返金された!領収書の発行義務とその書き方
述べた通り、借主が敷金を貸主へ支払う際、領収証の発行ではなく預かり証の発行が原則として求められます。
では一方で、賃貸退去時に敷金が借主へ返金された場合、それに対する領収書の発行義務は借主にあるのでしょうか。
結論としては、借主は敷金の返金を受けた場合、貸主に対して領収書を発行する義務が発生します。
また、借主はその際の領収書の書き方も以下の流れを参考に覚えておくことが望ましいです。
まず、敷金の領収書を発行した日付をミスなどに注意して記載しましょう。
誰に領収書を発行するのかが分かるよう、貸主の宛名を記載します。
法人の場合、(株)や(有)などの略は領収書に適さないため注意しましょう。
また、あってはならない改ざんとして、返金される敷金の金額が挙げられます。
それを防ぐためにも、金額の前に「¥」などを記載するようにしましょう。
また、金額の後に「※」などを記載することも忘れないようにしてください。
何における支払いなのかが分かるよう、詳しい但し書きの記載も大切です。
敷金の返金が5万円を超える場合、収入印紙を貼り付けましょう。
領収書を発行する借主自身の住所及び氏名を記載した後、押印します。
敷金支払い・返金の証明となるものは大切に保管を
敷金に関する領収書は、支払い時と返金時によって発行義務に違いがあることが分かりました。
敷金の支払い時には領収書発行義務が貸主に無いため、借主は預かり証を忘れずに請求することも大切です。
また、借主から敷金預かり証が発行された場合であっても、銀行振込みによる振込票の保管にも十分注意してください。
万が一敷金返金などによるトラブルが発生した場合、振込票に関しては支払ったことに対する重要な証拠となり得るため、大切に保管しましょう。