新築する際、それぞれ理想の間取りや広さのイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、建物を建築する場合、敷地面積に対して各自治体ごとに建蔽率が定められています。
そのため、自分の敷地といえども、建物を自由に建てることはできないことになっているのです。
さらに、駐車場を屋根付きにした場合、建築基準法の規制により駐車場の建築面積も建蔽率に含まれることになっています。
この記事では、新築するなら知っておきたい建蔽率について解説していきます。
建蔽率とは?
まず最初に、建蔽率(けんぺいりつ)について解説していきます。
建蔽率とは、敷地面積に対しての建築面積の割合のことを指します。
下記の計算式で算出することができますのでご参考にしてください。
建蔽率(%)=建築面積÷敷地面積×100
具体的に例を挙げてみましょう。
敷地面積が150㎡で建築面積が75㎡の家を建てたとします。
この場合、建蔽率は50%ということになります。
建蔽率は各自治体ごと、土地がどのような用途地域かによって上限が定められています。
例えば、すべての人が敷地面積いっぱいに建物を建築すると仮定します。
その場合、風通しもよくなく、火災などの災害時に被害が甚大になる可能性があるため問題があるのです。
そのため、建築基準法にて地域ごとで定められている建蔽率を守ることとされています。
その建蔽率につきまして意外と思われるかもしれませんが、屋根付きの駐車場は建蔽率に含めなくてはならないとされているのです。
ただし、場合によっては緩和措置がありますので、それについてはのちほどご説明いたします。
用途地域によってどれぐらい建蔽率は異なる?
それでは、用途地域によってどれぐらい建蔽率が異なるかを確認していきましょう。
ここでは、住居系地域の数値のみお伝えいたします。
●建蔽率が30%、40%、50%、60%
・第一種低層住居専用地域(低層住宅専用地域)
・第二種低層住居専用地域(小さな店舗を含める低層住宅専用地域)
・第一種中高層住居専用地域(中高層住宅専用地域)
・第二種中高層住居専用地域(利便施設を含める中高層住宅専用地域)
●建蔽率が50%、60%、80%
・第一種住居地域(大規模な建物の建築を制限する住宅地のための地域)
・第二種住居地域(大規模な建物の建築を一部のみ制限する住宅地のための地域)
・準住居地域(住宅と自動車関連施設サービス業が調和して立地する地域)
それぞれの土地において、いい住宅環境を整えるという意味合いを含め建築基準法で用途地域ごとに建蔽率が定められています。
また、上記のとおり建蔽率に幅がありますが、各自治体の都市計画において決められている数値となりますのでご参考ください。
用途地域が異なれば建蔽率も異なりますが、もしも屋根付きの駐車場を建てようと思っている敷地が、建蔽率の異なる地域でまたがっている場合はどうなるのでしょうか。
屋根付き駐車場を建てたい敷地が建蔽率の異なる地域にまたがる場合はどうする?
屋根付き駐車場を建てたい敷地部分が建蔽率の異なる地域でまたがっている場合、加重平均することにより建蔽率を算出することになります。
具体的な計算式は下記のとおりです。
敷地部分が異なる地域の建蔽率=
{A地域の建蔽率×A地域の敷地面積÷(A地域の敷地面積+B地域の敷地面積)}+{B地域の建蔽率×B地域の敷地面積÷(A地域の敷地面積+B地域の敷地面積)}
となります。
例を挙げてみましょう。
全体の敷地面積が600㎡として、片側300㎡分の敷地の建蔽率が50%、もう片側300㎡の敷地の建蔽率が30%としましょう。
これらをさきほどの式に当てはめますと、
{50%×300㎡÷(300㎡+300㎡)}+{30%×300㎡÷(300㎡+300㎡)}=40%
つまり、この土地の建蔽率は40%ということになります。
屋根付き駐車場の建蔽率の緩和措置とは?
先述しましたように、屋根付き駐車場の場合はその面積が建蔽率に含まれます。
しかし、下記の条件を満たせば緩和措置の対象となる場合があります。
●4m以上連続して外壁がない部分がある
●2m以上、柱の間隔が開いている
●2.1m以上、天井の高さがある
●階数が1階である(地階を除く)
つまり、「ガレージ」と呼ばれるような壁やシャッターなどで四方が囲まれている場合は建蔽率に含まれるものの、「カーポート」と呼ばれるような屋根と柱のみで開放性のある駐車場の場合は、緩和措置の対象になることが多いということになります。
緩和措置が取られた場合の駐車場の建蔽率の算定範囲は、駐車場のそれぞれの先端から1m後退した部分となります(建築基準法第2条より)。
ただし、「駐車場の先端」といっても、具体的にどの部分が該当するのか明確な基準がないため、軒先のことなのか柱のことなのかなど各自治体で判断は異なります。
そのため、この件に関しては各自治体に確認が必要となります。
屋根付き駐車場を造る際の注意点
新築される方の中には、駐車場は家が完成した後に造ることにしようとお考えになることも多いかと思います。
しかし、これまでご説明してきましたように、駐車場に屋根が付いているような場合であれば建築基準法で定められている建蔽率の規制の対象となります。
そのため、駐車場を大きくすればするほど、家が狭くなってしまうことになるのです。
新築の際は家と同時に、駐車場についても検討されることをおすすめします。
特に家の外観を重視されたい方は、家と同時にどのような駐車場にするか決めることで、家と駐車場が一体感のある外観にすることができるのではないでしょうか。
そして、屋根付き駐車場を造る際には、注意しなければならないことがあります。
例えば、屋根付き駐車場の場合、隣地へ雨水が流れてしまうことも考えられます。
さらには、隣地との境界線があいまいな場合、隣地ギリギリのところに駐車場を建築することでトラブルになってしまう可能性もありますから、このようなことにも気を付けるようにしましょう。
また、建物を建築する際には「建築確認申請」をしなくてはなりません。
そのため、駐車場を造る際にも原則申請が必要となります。
建築確認申請につきましては、次項でもう少し詳しく解説いたします。
建築確認申請とは?
先述しましたように、建物を建築する前には建築確認申請を行わなくてはなりません。
申請自体は駐車場の施工会社が行う場合が多いので、個人で対応することは特にありません。
建物確認申請を行うと、その建築物が建築基準法に則っているか、その自治体で定められている建蔽率が守られているかチェックされます。
チェックするのは、それぞれの自治体や、自治体が委託している検査機関となります。
工事着工前段階の書類上、工事完成後の現況(きちんと申請のとおりに建築されているか現場をチェックされます)の二回、建築確認が行われます。
屋根付き駐車場を造る際には、この建築確認申請が必要になります。
ただし、「緩和措置」に該当する駐車場の場合であれば、各自治体ごとで対応が異なることがあります。
そのため、事前にしっかりと確認をするようにしましょう。
屋根付き駐車場は建蔽率に含まれるものの緩和措置の対象になる場合も!
基本的に、屋根付き駐車場は建蔽率に含まれます。
しかし、ご説明しましたように一定の条件を満たすことで緩和措置を受けられることがあります。
ただし、この緩和措置に関しましては各自治体でどのように取り扱うかが異なる場合もありますので、事前によく確認することをおすすめします。