木造で新築を建てるとき、住まいに求める理想として「ルーフバルコニー」を挙げる方も少なくありません。
ルーフバルコニーの魅力は、おしゃれで開放的な空間かつ、使い方次第で様々なシーンで活用できることです。
しかし、住宅にルーフバルコニーをつくる場合は、漏水を考慮した防水工事を行う必要があり、特に木造住宅はその性質上、それに適した防水工事が求められます。
この記事では、木造住宅のルーフバルコニーに適した防水工事についてご説明していきます。
木造住宅に増えるルーフバルコニー!そもそもルーフバルコニーとは?
木造住宅では屋上として「ルーフバルコニー」が採用されることも増えてきており、マンションなどでもおしゃれで贅沢な空間として注目を集めています。
しかし、同時にそれに関わる漏水トラブルも増えているため、ルーフバルコニーで施工される防水工事も重要視されるようになっています。
まず、そもそもルーフバルコニーがどのようなものなのかご説明していきましょう。
ルーフバルコニーとは、階下の住戸屋根を利用したバルコニーを指し、リビングの延長した開放的な空間として利用されています。
しかし、一般的に「ベランダ」や「バルコニー」、「ルーフバルコニー」などの定義や違いは混同されがちで、実際に何が違うのか問われても、分からない方も少なくないでしょう。
そこで、それらの「定義」や「違い」について、以下でご紹介します。
・ベランダ:2階以上にあり、住戸から外に張り出した屋根のあるスペース
・バルコニー:2階以上にあり、住戸から外に張り出した屋根のないスペース
・ルーフバルコニー:2階以上にあり、住戸から外に張り出した屋根のないスペースで、階下の住戸屋根を利用している
・テラス:1階にあり、住戸から外に張り出した屋根のないスペース
区別の大きなポイントとなるのは、屋根の有無ですが、いずれにしても区別が分かりづらいのは確かです。
ルーフバルコニーの木造住宅で暮らしを豊かに!4つのメリット
前項では、ルーフバルコニーを始めとする定義の違いについてご説明してきました。
では続いて、木造住宅にルーフバルコニーをつくるメリットについて見ていきましょう。
①アウトドア気分を楽しめる
日当たり、風通しが良いため、アウトドア気分でランチやバーベキューを楽しむことができます。
また、家族の交流スペースとしてはもちろん、友人を呼んでアウトドアパーティの場として活用することもできます。
②夜景を眺望できる
眺望を妨げられることなく、自宅にいながら夜景や花火を楽しむことができます。
③ガーデニングや菜園に向いている
屋根のないルーフバルコニーでは、日当たりや風通しの条件も良いため、ガーデニングや菜園に向いています。
立地的に庭スペースが確保できない都市部では、ルーフバルコニーで植物を育てる方も多く見られます。
④子どものプール場になる
庭のスペースが確保できない場合に、日当たりの良いプール場として活用できることは魅力的です。
また、庭では外部の視線が気になりますが、ルーフバルコニーであればその心配も必要ありません。
以上のように、ルーフバルコニーは暮らしの幅を広げてくれるプラスアルファの空間として活用することができます。
しかし、良いことばかりに見えるルーフバルコニーですが、デメリットの一つに「雨漏り」という厄介なリスクがあるため、木造住宅につくるからにはそれ相応の防水工事が必要となってきます。
ルーフバルコニーはなぜ雨漏りが起こりやすい?防水の施工不良が原因?
では、木造住宅のルーフバルコニーでは、なぜ雨漏りトラブルが起こりやすいのでしょうか。
その原因はいくつかありますが、まず1つ目に「防水の施工不良」が挙げられます。
もともと日本は雨が多い風土で、年間降水量から見ても世界平均の約2倍といわれています。
そのため、古くから雨水による建物への侵入を防水する「雨仕舞(あめじまい)」技術が発達しており、日本の建設・建築現場においては非常に重要な役割を果たしています。
しかし、家屋として平屋が一般的だった日本では、「ベランダ」という西洋建築の構造に馴染みがなかったため、ベランダに関する防水ノウハウが蓄積されていませんでした。
西洋建築が一般的に取り込まれている近年において、ベランダやバルコニーなどの防水技術は確かに向上していますが、その一方で、防水施工のノウハウが未熟な業者も存在します。
特にルーフバルコニーの場合は、屋根のあるベランダと違い屋根がありません。
そのため、雨が降れば直接的にバルコニーは雨ざらしになるため、豪雨に見舞われればそれ相応の防水性が求められてきます。
ところが、防水に対するノウハウが未熟なことで、十分な防水が施工されなかったり、そもそも防水自体が考慮されていないケースもあるようです。
また、ルーフバルコニーは構造上、階下の住戸屋根の上に設置されているため、万が一、防水性に不具合があった場合は、ダイレクトに階下の室内に雨漏りが起こることになります。
木造と陸屋根がマッチしないことも原因に
引き続き、木造住宅のルーフバルコニーが雨漏りになりやすい原因を見ていきましょう。
2つ目の原因としては、「木造に陸屋根は適さない」ということが挙げられます。
「陸屋根」とは、勾配のないフラットな屋根で、屋上として設置されることが多いルーフバルコニーなどに採用されています。
この陸屋根は、スタイリッシュでおしゃれなイメージが強く、近年の住宅スタイルとして増えてきていますが、木造住宅には推奨されていません。
木造はしなりやすく、変形量を持つことから、性質上、地震の揺れには弱い特徴があります。
ところが、これが裏目に出てしまい、木造住宅に陸屋根を施してしまうと、雨漏り対策として施工する「防水膜」を壊してしまう恐れがあるのです。
これは、後述していく一般的な「FRP防水」に大きく関係してきます。
一般的な防水施工はFRPが主流!木造のルーフバルコニーとの相性は?
では、木造住宅にルーフバルコニーをつくる場合は、どのような防水施工が必要なのでしょうか。
まずは、一般的な防水施工について見てみましょう。
一般的なバルコニーなどの防水施工としては、「FRP防水」が主流になっており、鉄骨造や鉄筋コンクリート造にはこの工法が用いられています。
「FRP防水」とは、繊維強化プラスチックで、耐水性や耐久性に極めて優れた防水材です。
その優秀な耐久性から、建物の防水材としてだけでなく、浴槽や貯水槽、船体の外郭、さらには宇宙船の防水材として幅広く活躍しています。
しかし、FRP防水は、ガチガチに固まる故に、変形量のある木造住宅へは適合できません。
例えば、FRP防水を施工した木造住宅が地震で揺れた場合、木造の動きに追従できないFRPは、その施工部に亀裂などの破損を起こしてしまいます。
このようなケースは実際に多く見られるため、木造住宅に対してFRP防水を施工する場合は注意しなければなりません。
木造住宅のルーフバルコニーにおすすめの防水施工は?
木造住宅のルーフバルコニーにFRP防水を施工する場合、亀裂などの破損を考慮して、下地に「ウレタン防水」を選ぶことが望ましいといえます。
「ウレタン防水」は、通常の塗料よりも粘着性がある液状の防水素材で、下地の上に「防水層」をつくりだします。
柔軟性のある防水素材のため、万が一FRP防水に亀裂が入っても、下地であるウレタン防水がカバーしてくれます。
また、最近では、木造住宅への防水材として、「金属防水」という工法が推奨されています。
「金属防水」とは、建物の上から鉄板を被せる工法で、床面とジョイント部が分離するような造りになっています。
このジョイント部の仕組みによって、下地木材の動きから独立することができるため、地震などの影響も心配する必要はありません。
さらに、金属防水には高い排水処理能力が備わっているものが多く、豪雨などの急激な浸水にも対応することができます。
このような、木造の性質を考慮した防水施工をすることで、ルーフバルコニーのメリットを最大限享受することができるでしょう。
安心したルーフバルコニーにするために
これまでに、木造住宅にルーフバルコニーを設置する際の、防水施工について見てきました。
ルーフバルコニーには暮らしをより豊かにする魅力がありますが、そのメリットを享受するためには、十分な防水施工をすることが必要です。
ルーフバルコニーの構造や木造の性質を考慮した上で、安全・安心の防水対策を行っていきましょう。