前面道路の幅員で容積率も異なる?土地購入時の注意点とは

敷地を選ぶ際には、周辺の環境はもちろん、前面道路の幅員がどの程度あるのかなども、毎日の生活に支障をきたさないようにするために重要なポイントです。

また、前面道路はそこに面している敷地の所有者だけでなく、そこを通る多くの方にとっても有用なものでなくてはなりません。

前面道路の幅員は立地などにより異なるものですが、狭い場合などは敷地の容積率を制限するなど、前面道路としての幅員を確保することが求められるのです。

今回は、前面道路についてご説明していきましょう。

建築基準法と異なる敷地に建物は建てられない!前面道路の定義

私たちが住む住宅などの敷地は、道路に面しているという条件を満たす必要があります。

これは建築基準法に定められている必須条件で、これを満たさない場合、建物を建てることはできません。

また、この場合の道路は、建築基準法上で規定された道路である必要があります。

中には、旗竿地などの一見道路に面していないと思われるものも見かけますが、旗竿地は、あくまで敷地が道路に面している部分が少ないというだけで、よく確認するときちんと道路に面しているのです。

つまり、どんなに変わった形状の土地であっても、「建築基準法の定めと異なる条件の敷地には建物を建てることはできない」ということが分かります。

この、敷地に面する道路のことを、前面道路と呼びます。

また、前面道路は敷地に面する1つの道路のことを指します。

しかし、角地にある住宅や、周辺に建物がないような住宅の場合、敷地に面した道路が複数あることがあります。

そのような場合には、その複数の道路の中から1つだけを前面道路と位置付けなければなりません。

それには、道路によって異なる幅員が重要になります。

敷地に面する道路が複数ある場合は、敷地に面している道路の幅員が最も広い道路が前面道路として位置づけられるのです。

容積率と前面道路の幅員の関係!指定の範囲と異なる場合も

前面道路は、場所などにより幅員が異なるものですが、その幅員は容積率と深く関係していることをご存知でしょうか。

ここではまず、容積率について詳しくご説明していきましょう。

容積率とは、建てようとする建物の延べ床面積の合計のことを指します。

延べ床面積の指す床は、あくまでも建物内のすべてのものが対象となるため、2、3階建ての建物の場合は、1階で使用される床だけでなく2、3階で使用される床も含まれます。

容積率は一般的に、その敷地の属する用途地域ごとに上限の範囲が決められています、

しかし、前面道路の存在によって上限の範囲が用途地域が指定するものとは異なる場合があります。

それには、前面道路の幅員が関係しているのです。

前面道路の基本は4メートル以上!それと異なる場合はどうなる?

建築基準法で定められる道路は、基本的に幅員4メートル以上である必要があります。

しかし、立地によっては前面道路の幅員を4メートルとすることが難しい場合もあります。

特に、都市部など交通機関が発達している地域や、建物が密集しているような地域では、4メートルの前面道路を確保することは難しいことがあります。

また、古くからある市街地などでは4メートルに満たない道路も多くあります。

こういった場合、それらの道路は建築基準法上において道路とは異なる扱いになるため、同じく建築基準法の接道義務を満たすことができません。

つまり建物を建てることができず、既に建物がある場合は建て替えは不可能ということになります。

しかし、現実として4メートル未満の道路は多く、救済措置として4メートルに満たなくても建築基準法上の道路とみなす規定があります。

ただし、そのような場合は建て替えの際に制限がかかります。

建物のサイズが希望と異なる!?幅員の狭い前面道路の対策法

前項で述べた幅員が4メートルに満たない前面道路の場合、前面道路の中心ラインから2メートル後退したところが道路の境界線とみなされ、これをセットバックと言います。

例えば、前面道路の幅員が3メートルの場合、前面道路の中心ラインは両端から1.5メートルの位置になります。

その位置から2メートルセットバックをすると、道路の両脇の敷地の50cメートル奥までが道路の境界線とみなされます。

ちなみに、道路の反対側が川や崖などの場合、2メートルではなく4メートル後退する必要があります。

そして、それらの敷地では、建て替えの際にセットバックのラインを超えて建物を建てることはできません。

そのため、容積率や建蔽率の計算にも、セットバックした分は敷地面積として含まれません。

つまり、実質的に容積率や建蔽率が大幅に制限を受けると言えます。

なるべく庭の空間を作らず敷地一杯に建物を建てようと考えている方などは、セットバックにより実際建てられる建物のサイズが希望と異なることも想定されますので、頭に入れておく必要があるでしょう。

所有者の認識と異なる?セットバックを求められた部分の位置づけ

セットバックは、敷地と前面道路の幅員のバランスをとるためにも重要であることは事実ですが、その範囲の利用方法も気になるものです。

セットバックにより制限を受けたとしても、その敷地を所有している方からすれば自分の敷地であるという認識があるでしょう。

しかし、セットバックにより空けることを求められた敷地の部分は、その時点で道路としてみなされます。

つまり、敷地の所有者が認識する自分の敷地の範囲と、実際に自由になる範囲が異なることになります。

敷地の中でも前面道路側の部分であれば、目隠しなどのために生垣や柵などを作りたいと考えることもあるでしょう。

また、郵便の配達員などが建物のすぐ近くに来ることに抵抗がある方などは、あえてポストを建物から離れた前面道路側に設置する方も少なくありません。

しかし、セットバックによる道路とみなされた部分に、ポストなどを設置することは原則としてできないのです。

前面道路の幅員が狭い敷地の場合、このような点も心得た上で購入を考える必要があります。

前面道路の幅員で制限が緩くなる場合もある?

前面道路の幅員が狭い場合は、敷地範囲に制限がかかります。

一方で、前面道路の幅員が広い場合はむしろ制限が緩くなる場合があります。

それには、以下の条件が必要になります。

・前面道路の幅員が一般的な4メートルより広い

その範囲が6メートル以上で、なおかつ12メートルに満たない場合、容積率の上限範囲などが他の場合に比べ緩くなることがあります。

・前面道路が特定道路に面している

前面道路が狭い場合は、セットバックをするとご説明しました。

しかし、その前面道路が特定道路に面している場合、狭くともそれとは異なる形でセットバックをすることなく建物が建てられることがあります。

特定道路とは、幅員が14メートル以上ある広い道路を指します。

その特定道路が、敷地から測って70メートル以内の範囲にあることが条件です。

前面道路の幅員が狭い場合、交通面などに不便が予想されますが、特定道路に面していればそのデメリットを払拭できるというわけです。

上記の2点を満たす条件の敷地であれば、前面道路の幅員が狭くとも制限されずに建物を建てることができると言えます。

デメリットだけじゃない!幅員の狭い前面道路の価値は考え方次第

私たちが毎日のように利用する道路ですが、その幅員は建築基準法では4メートル以上が条件です。

そのため、場合によりセットバックなどの対策がされますが、その範囲は前面道路の幅員によって異なります。

このような幅員の狭い前面道路に面した敷地は、価格が安いこともあるので考え方次第です。

そのため、住宅などを建てることを検討している方などにとっては、一見の価値のある敷地とも言えるでしょう。