小中規模アパートを経営をするときに、どのような構造の物件が良いのか、分からないという方も多いと思います。
そこでおすすめなのが、耐震性などの安全が確保され、しかも費用面も抑えられる、軽量鉄骨構造です。
今回は、軽量鉄骨造のアパートについてご紹介します。
また、アパートを建てる場合、耐用年数が大きく関わってくるので、それについても合わせてご紹介しましょう。
なぜ軽量鉄骨がアパート経営に向いているのか
小中規模のアパートに向いている軽量鉄骨構造とは、どんなものなのでしょうか。
軽量鉄骨とは、建築構造上の鋼材の厚さが6mm未満のものを言い、法的耐用年数は19~27年です。
鋼材の厚さが6mm以上になると重量鉄骨になり、法的耐用年数は34年とかなり長くなります。
では、まず最初に軽量鉄骨アパートのメリットを見てみましょう。
【軽量鉄骨アパートは費用を抑えられる】
軽量鉄骨でアパートを造ることのメリットは、その機能に対する費用の安さでしょう。
木造アパートに比べ、耐震性や耐久性にとても優れていますが、建設費用に関しては木造よりもやや高くなる程度で、それほど大きく変わりません。
それは、「プレハブ工法」と言って、あらかじめ工場で建材を製造し、現場で組み立てるという工法をとっているからです。
これによって品質も安定しますし、工期が大幅に短縮できます。
工期が短くなると人件費を減らすことができるので、建築費用を抑えることになるのです。
また、建築の坪単価は、広ければその分安くなるので、アパートなどの大きな建物はより経費を抑えられることになります。
【軽量鉄骨アパートは収益率が高い】
アパートに入居する場合、設備が整っていて、築年数が浅いものが好まれます。
そして、できることなら家賃も安い方が良いですよね。
軽量鉄骨のアパートであれば、建築費用を抑えられるため、家賃を安く設定でき、入居率が良くなります。
また、建て替える場合も、短期間、低予算で行えます。
このようなことから、軽量鉄骨のアパートは収益を上げやすいと言えるのです。
軽量鉄骨アパートの耐用年数はどれくらいなのか
先程、「軽量鉄骨の法的耐用年数は19~27年」とお話ししました。
アパートを経営する上で、この耐用年数は減価償却年数の元となるので、とても重要です。
それでは、耐用年数について見てみましょう。
【法的耐用年数】
財務省が定めた耐用年数のことを言います。
資産によってその年数が決められていて、税金などの計算は、原則としてこの法定耐用年数に従って減価償却されます。
つまり、法的耐用年数=減価償却回数となります。
【物理的耐用年数】
法的耐用年数とは関係なく、実際にその建物に住むことができる年数を言います。
そのため、しっかりメンテナンスを行っていれば、物理的耐用年数は長くなります。
【経済的耐用年数】
その建物の経済的価値に対する年数を言います。
立地や経年劣化の状態など、資産としてどのくらいの年数、その価値を保てるかということなので、同じ構造のアパートであっても立地によって変わってきます。
そして、軽量鉄骨の法的耐用年数に幅があるのは、鋼材の厚みで違いが出てくるからです。
鋼材の厚みが、3~4mmの場合は27年、3mm以下になると19年です。
6mmを基準としていないのは、場合によって4mmを超えると重量鉄骨に分けられるからです。
軽量鉄骨アパートの法的耐用年数と減価償却
前述したように、アパートの法的耐用年数は減価償却の基準になるもので、実際の物理的耐用年数とは違います。
したがって、法的耐用年数が過ぎたからといって、すぐに建て直さなければならないということではありませんし、価値が0円まで一気に下がるということでもありません。
減価償却は「長い間使用する固定資産を取得した場合に、取得した時点で全額必要経費として計上するのではなく、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きのこと」です。
軽量鉄骨のアパートを取得(建てた)した場合、毎年その価値は減っていきます。
そのような資産を「減価償却資産」と言い、例えば建物や機械、備品や車などがそれにあたります。
この減価償却資産の経年に合わせて、必要経費として計上していく目安が法的耐用年数です。
一年で一気に必要経費として計上すると、一年で使い切ったことになってしまうので、数年掛けて計上するのです。
また、平成28年4月1日以降に取得したアパートに関しては、償却方法は今までの「定率法」ではなく、毎年一定の金額を支払う「定額法」が適用されます。
会計では減価償却費は支出になるので、税金は所得から減価償却費を引いた金額で計算されることになります。
軽量鉄骨アパートの耐用年数と融資について
軽量鉄骨アパートの耐用年数に大きく関わってくるのが、銀行などからの融資です。
金融機関は、アパートローンの支払いができなくなったときに、物件を差し押さえて損失を最小限に抑えようとします。
そのため、アパートの資産価値によって融資期間を決めることになるのです。
アパートの資産価値の目安と言えば法的耐用年数なので、必然的に期間は法的耐用年数以内になることが多くなります。
したがって、軽量鉄骨アパートの場合「最長で27年ローンを組むことができる」ということになるのです。
金融機関では、法定耐用年数を超えた物件の価値をゼロと考えることから、そのように期間を定めます。
しかし、そのアパートの立地が良く、土地そのものに価値があるという場合は、その土地を担保にして融資を受けることができることもあります。
耐用年数≠建物の寿命
法的耐用年数はあくまで減価償却を行う上で必要になってくるもので、「法で決められた物件寿命」です。
実際に快適に住むことができる、物理的耐用年数とは違います。
軽量鉄骨アパートは2階建て物件が多く、エレベーターも無い場合が多いので、メンテナンスがしやすく、修繕費も抑えられるというメリットがあります。
法的耐用年数を超えていたとしても、メンテナンスをしっかり行うことで長く使うことができます。
また、これまで軽量鉄骨は、強度に問題があるので、前述したように2階建てのアパートに適していると言われていました。
一般の住宅でも、3階建て以上の住宅は難しいと言われていましたが、最近では耐震性や耐久性に優れた鋼材が開発されているため、3階建て以上の住宅も増えています。
軽量鉄骨造のアパートは木造とRC造の「良いとこ取り」
アパートを建てる場合、住み心地と建築費用面をから見ると、やはり木造が適しています。
それは、木造が日本の風土に合っているからであり、通気性が良く、断熱性が高いこと、また、湿度の高い気候に有効な吸湿性にも優れているためです。
しかし、日本は地震大国でもあります。
特に東日本大震災以降、建物の耐震性や強度に対して、関心が高まっています。
現在では、厳しい基準が設けられ、震度7の地震に耐えられる建物でなければ建築許可は出ません。
鉄筋コンクリート造(RC造)であれば、耐震性や耐久性に加え、断熱性や耐火性にも優れていますが、工期が長く、建築費用は高額になりますし、重量があるので地盤を選びます。
2階建ての小中規模アパートであれば、鉄筋コンクリート造にまでする必要はなく、軽量鉄骨造でも十分です。
軽量鉄骨は地盤を選びませんし、RC造ほどではありませんが耐震性や耐久性にも優れています。
また、木造と違い、シロアリなどの害虫にも強いので、メンテンスがしやすいというメリットもあります。
このように見てみると、建築費用、物理的耐用年数、耐震性をはじめとした機能など、軽量鉄骨増は小中規模アパートに最適な構造と言えるでしょう。
軽量鉄骨造は小中規模アパートに最適
小中規模のアパートを経営する場合、建物の構造は軽量鉄骨がおすすめです。
それは、ご紹介したように、その機能に対する費用の安さが挙げられます。
軽量鉄骨造のアパートの良さを最大限に活かし、また、法的耐用年数と物理的耐用年数、経済的耐用年数の違いを把握し、より良いアパート経営を心掛けてください。