地盤が弱い盛土があることや、盛土直後に家を建てるべきではないということをご存知の方もいらっしゃると思います。
では、盛土はどのくらい待てば安定するのでしょうか。
安全性は、はたして期間だけで判断できるのでしょうか。
盛土の質や、不同沈下のリスク、地盤保障制度などのことを学び、盛土について理解を深めていただければ幸いです。
盛土をしたばかりなのに家を建ててもいいの?
宅地造成を行う場合に、建築士から盛土をしてすぐに家を建てることを提案され、不安になる方もいることでしょう。
まずは悩まれる考えについて触れていきます。
丘陵地の斜面に平らな場所を作るために行われることが多い盛土ですが、周辺の地盤よりも低い地盤を上げるために行われることもあります。
周辺の地盤よりも、これから家を建てる地盤が低い場合は、そのまま建てると沈んでいるように見えるため見た目がよくありませんし、水害で浸水する可能性もあるでしょう。
そのような場合には大規模な盛土にはならず、盛土をする高さが低いです。
そのため、気軽に行っても大丈夫なようにも思えますが、不安に思われることもあるでしょう。
また、盛土と、自然のままの地盤との境界、もしくは盛土と切土の境界に家を建てる場合にも、盛土がしっかりと安定しているのか気になるかと思います。
盛土が安定する期間について知る前に、そもそも盛土とはどういった方法なのか、デメリットは何なのか次項でご説明します。
盛土のリスク!期間を待たずに着工する事例も
盛土とは、造成方法の一つです。
地盤が低かったり斜めだったりする場合に、平らな地盤を造るために行われることが多いでしょう。
平地の少ない日本では昔から行われてきた方法で、水害の際に被害が大きくなりにくいというメリットがあります。
しかしながら、大規模な盛土や均一でない盛土、十分に踏み固めていない盛土などにおいて、大地震で地滑りや崩壊が起き、建物の倒壊につながることが分かっています。
地震に強い家を造成して建てるために「盛土の基準」が設けられるようになってはいますが、絶対的に安全な地盤を盛土で造れるかどうかは議論の余地があるでしょう。
知識と経験のある土木技術者であれば、盛土に沈下のリスクがあることは間違いなく知っているはずです。
とはいえ、盛土を行ってから一定の期間を待たずに建築をスタートすることがあります。
盛土が極めて低い事例もありますし、セメント材などで強くするなど、十分な補強を行って安定させてから建て始めることもあるようです。
地盤の調査を行いながら、さまざまな技術を使って盛土をしてから比較的早く着工することが可能です。
もし盛土と切土の境界に家を建てるなら、盛土だけの地盤よりもリスクが高いので、ある程度年月を重ねてから建てるのが一般的でしょう。
高度経済成長期の大規模盛土には注意!盛土が安定する目安は3~5年
盛土がしっかりと安定しているかどうかは見た目では分かりませんので、盛土してからの期間で判断されることがあります。
まず知っておきたいのが、いつ盛土を行ったかということです。
高度経済成長期には、人口が大きく増えたことで造成が盛んに行われました。
当時は沈下や崩壊を防ぐための基準が厳しくはなかったため、大震災で無残な状態になったのも、そうした地盤が多かったのです。
ですから、宅地造成法などで基準が決められる前に盛土が行われた地盤は、改良・補強されているなどの例外はありますが、比較的弱いと考えられています。
造成してから何十年も経っていても、家を建てるにはふさわしくない地盤があるのです。
一方で、きちんと基準を満たした盛土の場合、安定するまでの期間は3年~5年だと言われることが多いです。
厚さにもよりますが、このくらいの期間が経過すれば沈下のリスクが減り、落ち着いた強い地盤になっているとされています。
期間が経てば必ずしも安定するわけではない!盛土の質も大切
盛土してから地盤が安定するまでに、3年から5年の期間がかかると言われますが、盛土の質でも違ってきます。
盛土が均等ではなく、異物が混入していることが分かれば10年待つとしても無理はありません。
異物というのは、例えばコンクリート片やゴミ、瓦礫などです。
盛土を行うためには、掘削や障害物の粉砕を行いますが、過去の大規模盛土造成地などでは地中障害物が残っていることがありました。
完全に障害物を撤去することで強い地盤を造ることができますが、そのためには多額の費用がかかります。
撤去後には、その分多くの土砂が必要になりますので、そうした面での負担もあります。
したがって、盛土の状態については調査が必要になるのです。
もし造成後に一定の期間が経過していたとしても、「空隙」のできない均等な盛土なのか、きちんと調査した地盤に家を建てるべきでしょう。
空隙・沈下について知ろう
さきほど、空隙という言葉について触れましたので、簡単にご説明しておきます。
空隙(くうげき)とは、物質間にある隙間、空間のことです。
盛土した直後は見られなくても、期間が経ち、浸水や地震などの影響で発生してしまえば建物の沈下の原因となります。
瓦礫などが混ざった盛土は、それがわずかに動くことにより地盤の状態が変わります。
この空隙が多いほど沈下のリスクは高まります。
空隙や収縮は盛土の質に深く関わることなのですが、長い期間経過すればリスクがゼロになるというわけではありません。
その期間の間にどのような状況に置かれていたか、変化することがあったのか調べ、安全対策をとる必要があります。
では、ここで簡単に、沈下について確認しておきましょう。
〇不同沈下
平らになっていなければいけない基礎部分などが、デコボコになってしまう状態のことです。
沈下の早さや量が場所によって異なることが原因です。
窓やドアが開けにくくなったり、基礎部分の亀裂などにつながります。
〇浸水沈下
盛土造成中、または造成後、雨や湧き水によって盛土内の水分量が変動し、圧縮して沈下が起こることです。
盛土に混入した不適切な異物や、締め固めが不十分であることが原因で起こりやすい沈下です。
施工中に大量の雨が降ったり湧き水があった際には、しっかりと安定する地盤になるように丁寧に工事を行うことが求められます。
盛土の安定は期間だけでは判断できない!地盤保障制度とは
盛土が安定するために必要な期間は、はっきりと断言できることではないと申し上げました。
3年から5年というのは一つの目安と考えてみてください。
盛土というのは奥深く、家を建てる前と建てた後では変化することもあります。
建物の重さが地盤に影響することで、締め固めるという意味では安定すると考えることができますが、確実に安全な状態になるとは言えません。
造成後、5年の歳月をへて不同沈下が起こった事例もあります。
そのため、「地盤保障制度」に目を向ける必要があります。
基礎工事着工日~10年の期間において、安全性を保障してくれる制度です。
もし不同沈下してしまった場合には、地盤会社へ保険金として補修費用が支払われます。
これにより、地盤補強工事、不具合修補工事、仮住居費用、その他賠償費用が支払われることになります。
この地盤保障機関に入っている建設会社を選べば、保証期間内は無償で上記の費用を負担してもらえますし、第三者が地盤解析に関わるので安心できるのではないでしょうか。
大切な家を守るために
盛土が安定する一つの目安として、3年~5年という期間がありますが、ケースバイケースだといえるでしょう。
盛土が薄かったり、十分な補強がされた場合などには、3年待たずに着工することもあります。
その逆に、盛土の質が悪く沈下のリスクがあると分かった場合には、10年も待たなければ安全性が認められないこともあるでしょう。
盛土して家を建てるなら、地盤保障制度について知っておくと役立ちます。