自然のままの地盤の上に土砂を盛って高くする盛土。
地盤を削って低くする切土。
この2つの見分け方は、周辺の地盤より高いか低いかで判断することができるケースもありますが、パッと見ただけでは分からないこともあります。
盛土か切土か知る方法についてまとめましたので、参考にしてください。
盛土と切土の見分け方
盛土なのか、切土なのか、はたまた盛土と切土の境界なのか。
盛土や、盛土と切土の境界は不安定だと言われることがありますので、簡単な見分け方があれば知りたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
特定の地域が盛土か切土か知りたいわけではなく単純にそれぞれを見てみたい、ということであれば簡単です。
実は盛土は鉄道用語でもあります。
土が盛り上がっているところがあり、その上を電車が走っているのを目にする機会があるのではないでしょうか。
明治・大正時代には「築堤」と呼ばれました。
線路を地上よりも高くするために土を運び、締め固めて崩れないように補強して造られています。
また、切土についても、山道を走っていれば目にすることがあります。
丘陵地に開発された高速道路や建築された住宅に目を向ければ、切土がどのようなものか観察することができるはずです。
ただ、盛土と組み合わせられている場合もあり、どこからどこまでが切土で、どこからが盛土か見分けるのは難しいでしょう。
盛土と切土の見分け方は難しい?さまざまな盛土の事例
現場に行って自分の目で見た場合に、切土と盛土の見分け方というと「高いか低いか」ということになりますが、判別できない場合も多いです。
盛土が行われたところだけ土の色が変わっていればいいのですが、経年により周辺の地盤と溶け込んでいる場合がほとんどです。
平地で、もともと周囲の地盤よりも低い場所に家を建てる場合にも、盛土が行われることがあります。
何メートルも盛り上げたのではなく20cm程度の造成もあり、そうなると周囲との違いが分からないことになるでしょう。
丘陵地で造成する場合、部分的に削って部分的に盛り、ひな段状に宅地を作る場合もあります。
階段をイメージしていただけると分かりやすいのですが、のぼっていくときに、つま先部分(壁付近側)は切土、かかと部分(落ち込み付近)は盛土になっている、という風にイメージしていただくといいでしょう。
盛土と切土の、地形図を使った見分け方!地理院地図も参考に
現場を見て判断する、ということでなければ、地形図を使った盛土と切土の見分け方が挙げられます。
大正時代までさかのぼり、古い地形図を手に入れて、現在の国土地理院地形図と比較する方法です。
標高が低くなっていれば切土、高くなっていれば盛土と考えられます。
しかし、こうした手間がかかる作業を行わなくても調べる方法はあります。
地理院地図には「切土」「盛土」「厚い盛土」というように区別されているマップがあります。
すべての場所において完璧に調査されたものではありませんが、意外と身近なところに大規模な盛土があって驚くこともあるでしょう。
国土交通省の「防災に役立つ地理情報」も参考になります。
実は、こうした造成情報が公表されるようになったのは、2011年の東日本大震災が関係しています。
震災で大きな被害を被ったのが大規模造成地の盛土部だったので、盛土に対して危機感が高まっていったのです。
大規模盛土造成地なら公表されている?調べてみた
国土交通省のサイトや地理院地図は参考になる防災情報を多く載せていますが、盛土と切土の完全な見分け方はありません。
しかし、大規模盛土造成地であれば各都道府県・市町村で個別に公表されているケースが多いです。
例えば「栃木県庁」のサイトには、「県内16市町村における大規模造成地マップの公表について」というページがあります。
調査された市町村が一覧で出てきて、盛土数が多い市を知ることができますし、別ファイルを開けば、地図で造成地の確認をすることができます。
また、山々に囲まれた長野県で調べると、「安曇野市」「松本市」「千曲市」などのマップが出てきます。
しかし、多くの市町村については、まだ着手されていません。
※長野県の「宅地造成等規制法」というページを確認すると、長野県内には宅地造成工事規制区域・造成宅地防災区域として指定されている区域はない、と明言されています。
●宅地造成工事規制区域
宅地造成の際に、災害が発生する可能性が高い区域として、都道府県知事等と関係市町村長で話し合い、指定する地域です。
1mを超える崖が生じる盛土、2mを超える崖が生じる切土などがあります。
●造成宅地防災区域
宅地造成規制法に基づいて、都道府県知事が市町村の意見を聞き、宅地造成にともなう災害によって大きな被害が懸念される造成宅地を防災区域として定めたものです。
大規模盛土造成宅地を公表しない都道府県もある
上記の長野県以外でも、大規模盛土造成宅地を公表していない自治体はあります。
盛土造成地の調査が進まないことについては過去にニュースで取り上げられたことがあります。
調査が進まない原因としては、予算の問題が挙げられます。
山地の多い県では特に、調査には莫大な費用がかかります。
同じく社会問題である液状化対策や、その他の防災対策にも力を入れる必要があると、そこまで手が回らないということがあるでしょう。
調査したとしても、公表はしない場合もあります。
特定の地域の住民が、過度の不安感を感じる可能性がありますし、土地の資産価値に少なからず影響を及ぼすおそれがあるのです。
盛土造成地マップによって切土と盛土の見分け方が簡単になれば、災害被害を少なくしたり、防止できるようにもなると考えられています。
防災意識の高まりによって危険性のある区域が公表されていく
国土交通省の「大規模盛土造成地マップの公表状況等について」のデータでは、大規模盛土造成地の公表が進んでいることが分かります。
2019年3月のデータを参考にしますと、2018年11月から約6.8%の公表率が上がったとされています。
そして、2012年から比べますと、公表率100%の都道府県も増えました。
しかし、大規模盛土造成地というのは、谷を埋めた造成地で面積3,000平方メートル以上、または傾斜地などで高さ5m以上・20度以上の造成を行った地盤のことです。
それ以下でも危険性の高い盛土はありますので、大規模盛土造成地マップだけで判断することはできないといえるでしょう。
2018年の北海道地震では、大規模盛土造成地マップで示されていなかった区域でも陥没被害があったことが分かっています。
今後も、切土と盛土の見分け方を知りたい、盛土がどこなのか知りたいというニーズがある限り、少しずつですが、公表状況が改善していくことが期待できます。
大規模盛土造成地だけでなく、リスクの高い土地について、より多くの情報が公表される可能性もあるでしょう。
盛土かどうか調べる方法はある
切土と盛土は、よほど分かりやすい状態でない限り、見分けるのは難しいようです。
地理院地図や、各都道府県・市町村の大規模盛土造成地マップを見ることによってリスクの高い区域を知ることはできます。
しかし、大規模盛土造成地マップを見ると分かりますが、公表されている区域の範囲は極めて狭く、知りたい情報が入手できないこともあるかもしれません。
その他には、古い地形図と新しい地形図で標高を比較する方法もあります。