日本において昔から採用されてきた構造が木造です。
木造住宅のメリットとデメリットをご紹介した後、柱と梁で支える工法や、壁(面)で支える工法など、さまざまな工法についてご説明していきます。
ハウスメーカーや工務店が売り出している工法についても、基本となる工法を知ることで、より理解しやすくなるでしょう。
構造と工法の違いとは?木造住宅のメリット
構造と工法の違いはご存知のことと思いますが、最初にご説明させてください。
不動産用語の「構造」としては、木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)が挙げられます。
そして、工法は土木や建築工事の際の施工の技術的方法のことです。
それでは、まずは木造住宅という構造のお話、次に工法のお話をしていきます。
木造住宅は、日本の気候に適した構造であり、リフォーム・リノベーションしやすいという利点があります。
木材は、部屋の空気が乾燥してしまう冬には湿気を補い、梅雨の時期には空気中の水分を吸収してくれます。
通気性も高いので、蒸し暑い日本の気候にマッチしていると言えるでしょう。
また比較的、設計が自由にできるという点も魅力です。
柱を動かすことは難しいのですが、1階の天井を抜いて吹き抜けにしたり、間仕切り壁を取り払って広々としたスペースにすることができます。
木造のアパートなどは騒音などの理由で好まれず、短工期で建てられることからも、家賃が安い傾向にあります。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造も、強度や耐久性などの点で優れていますが、精巧に建てられた木造住宅は強固で頑丈です。
室内もどこかあたたかみがあります。
木造住宅のデメリットは?木造軸組み工法の構造(柱と梁が肝心)
木造住宅には、その構造ゆえのデメリットもあります。
さきほど、アパートの家賃について書きましたが、遮音性が低いということがデメリットのひとつです。
他の構造と比べると、2階の物音が階下に響いてきたり、隣の部屋や廊下の足音などが大きく聞こえることが多いでしょう。
室内で音楽を聞いたり楽器を演奏したい時にも、周辺の住宅との距離が近いと気をつかうことになるかもしれません。
また、冷暖房が効きにくいという点も挙げられます。
木材で構成された建物は気密性を高めにくいので、少しの差ではありますが、他の構造と比べると光熱費がかかることも考えられます。
それでは次に、木造住宅の工法についてご紹介していきましょう。
●木造軸組み工法(在来工法)
基礎に土台を乗せてから柱を立てて、梁を水平に渡していく伝統的な工法で、木造を建てるために昔から多く選ばれてきました。
柱と柱の間には、斜めに補強材を入れていきます。
安定感のある工法なので、地震の横揺れや、横から吹きつける突風などに強く、間取りの自由度も高いです。
高い技術が求められるため、職人の腕次第で完成レベルが若干異なるかもしれません。
柱ではなく「面」で支える!2つの木造住宅の工法
●ツーバイフォー(2×4)工法(枠組み壁工法)
アメリカ・カナダで採用されていた工法で、1970年代から日本でも選ばれるようになりました。
木造住宅においては、木材で組んだ枠に、構造用の合板を打った壁と床が特徴です。
2×4という名前の由来は、枠材の断面が「厚さ2インチ×幅4インチ」であることです。
柱や梁で支える木造軸組み工法とは違い、「面」で支えて箱型にしていく工法で、気密性が高く耐震性にも優れています。
他の工法と比較すると施工が簡単で、職人の腕によってムラがあるということは考えにくい工法です。
ただし、リフォームしにくい・開口部が取りにくいというデメリットがあります。
●木質系プレハブ工法
工場で完成させた木質パネルを組み立てて建物を形作ります。
工期は短くなりますが、パネルを組み立てるためのクレーン車が自由に稼働できるスペースが必要になります。
また、「面」で支える工法となりますので、木造軸組み工法と比較するとリフォームしにくくなります。
木造住宅でも採用されはじめたラーメン工法!太く強い枠(柱と梁)を使う
●ラーメン工法
ラーメン工法は、木造軸組み工法と同じく、柱と梁で支える構造になります。
ラーメンというのは、ドイツ語の「枠」です。
頑丈な太い枠を組んでいくため、変形しにくく、木造3階建てなどの大きな建物を建てることができます。
窓が大きくても、その面が弱くなりにくいですし、木造の大空間も安心して造ることができるでしょう。
もともとは大規模な鉄筋コンクリート造の施設などで採用されていましたが、慰安では一般の木造住宅でも行われています。
ラーメン工法のメリットは、間取りやリフォームの自由度が高い、耐久性が高いということです。
防災意識が高まっている現在、頑丈な建物にはそれだけ資産価値が高く、ラーメン工法で建てられた住宅は不動産投資の視点から見ても価値があります。
一方、デメリットは地震の横揺れに対しては弱く、施工価格が高い傾向があるということです。
また、柱がしっかりとしているので壁が薄くても建てられますが、それがあだとなり、後で騒音に悩むこともあるかもしれません。
木造住宅のいろいろな工法
木造住宅では上記の工法が多く採用されていますが、実は他にもいろいろな工法があります。
といいましても、基本は木造軸組み工法やツーバイフォー工法などで、ハウスメーカーや工務店がそれにアレンジを加えた工法があるということです。
例えば、どのような工法があるのかご紹介します。
●ハイブリッド工法
軸組み工法とツーバイフォー工法などを組み合わせた工法で、強度の高さがアピールポイントになっています。
ツーバイフォー工法以外にも、ドラフトピン工法やACLとの組み合わせでハイブリッド工法としているところもあります。
●木造トラス工法
木造で、柱、梁を三角に組んでいく工法です。
四角に組んでいく工法よりも耐久性が高い構造になることを売りにしています。
三角に繋いでいくためには、専用のプレートを使います。
●シャーウッド工法
軸組み工法がベースで、土台を木材で造らずに基礎にそのまま柱を建てる方法で強度を高めた工法です。
木造住宅という構造だけでも多くの工法があるのは何故?
上記以外でも、ツーバイフォー工法をベースにしたツインモノコック工法や、プレミアム・モノコック工法などがあります。
また、木造ラーメンが基本となる工法の中にも、ビックフレーム工法やヘッジ工法などがあります。
なぜ、このように多くの工法があるのかというと、独自の商品であることをアピールすることで、他者との差別化を図れるからです。
しかしながら、前述したようにベースとなる工法はきちんとあり、「柱と梁」、または「壁」で強固に建てられていくことになります。
それを加工していったというお話ですので、構造や工法について基本を学べば、さまざまなアレンジについても理解することができるでしょう。
木造住宅の建設では、いかに耐久性を上げ、自由な間取りで設計するかということがねらい目になります。
建築会社が、より優れた商品を生み出そうと競い合っている結果、多くの工法が生まれていったと考えられます。
木造住宅の工法は「軸」で支えるか「面」で支えるか
木のあたたかみがあり通気性が高い木造住宅は、間取りやリノベーションの自由度も高い構造です。
たくさんの工法がありますが、基本となるのは木造軸組み工法やツーバイフォー、ラーメン工法などです。
柱と梁を正確に組んでいき「軸」で支える工法と、強固な板、壁で形作っていく「面」で支える構造には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
より耐久性が高く、より自由な間取りで建てられるようにと、さまざまな工法が誕生しているのです。