農業人口が減りつつある日本ですが、課題となっているのが農地の活用方法です。
農業を営んでいた親から相続などで農地を引き継いだとしても、後継者が農業を営むとは限りません。
その場合、固定資産税を払い続けて、耕作しない農地を所有していくことになってしまいます。
そんな時には、農地転用ができないものかと考えることでしょう。
そこで、当記事では農地転用をする際の手順や費用、また、調整区域での活用法についてご紹介します。
調整区域とは?市街化区域との違いを知ろう
農地転用の流れについて知るためには、まず、調整区域と市街化区域について理解しておくことが重要です。
一概に農地といっても、農地にも区分があります。
調整区域の農地というのは、正確には市街化調整区域といって、基本的には街を作る予定のない農地や森林のエリアを指しており、建物の建築を認めていません。
このような規制を設けないと、国土のどこもかしこも住宅や商業施設が建ち並んでしまい、国内で農作物を生産するエリアを確保することが難しくなってしまいます。
それとは逆に、市街化区域というのは、商業的な発展を見込まれて計画されたエリアであるため、農地を転用するのは、農業委員会へ届け出をするだけで簡単に済ませることができます。
しかし、調整区域の農地転用には許可がおりるまで、かなりの時間と費用がかかります。
そうであっても、耕作しない土地に税金を払いながら所有し続けていくことを思えば、多少の時間はかかっても有効に活用したいものですよね。
ぜひ、慎重に考えてから活用することをおすすめします。
農地転用とは?
農地転用は、農業をしない人にとっては非常に重要な制度であると言えます。
この農地転用の許可を下す機関が「農業委員会」であり、各市町村に窓口があります。
しかし、ただ農地が不要という理由では、農地転用は許可されません。
農地転用は明確な目的があって、その土地を使用する場合にのみ適用されます。
農地は、農業をしない限りは、所有していてもなんの利益も出しません。
それどころか、休耕状態の農地であっても、固定資産税の対象になるため、年に一度、税の評価額が決まり農地の所有者は税金を納める義務があります。
そのため、調整区域の農地転用をして他の用途として土地を活用するという手段があります。
初期投資で多少の費用がかかっても、収益を生む活用ができたら嬉しいですよね。
次章で詳しくみていきましょう。
調整区域の農地転用について土地活用方法が知りたい
では、実際に調整区域を農地転用した方はどのように活用しているのでしょうか。
のちの章で、宅地への転用に触れますので、まずはそれ以外の活用方法をご紹介します。
●太陽光発電
近年、多く見られるのがこちらの太陽光発電です。
初期投資費用はかかりますが、日当たりの良い場所であれば収益に繋がるため、人気があります。
ただし、住宅で発電する売電価格と異なり、農地を活用した太陽光発電は産業用太陽光発電になるため、住宅用太陽光発電よりも1Kwhあたり約9円ほど安くなっています。
また、農地に太陽光発電を設置する場合は、地目を「宅地」や「雑種地」に変更しなければなりません。
そうなると、固定資産税が上がる可能性が出てきますので、よく検討しましょう。
地目を「畑」のまま、太陽光発電を設置する場合は、「畑」としての利用を継続していくということが条件になります。
そのため、「一時転用」という形になり、3年ごとに更新をしなければなりません。
●駐車場
近隣の環境にもよりますが、駐車場として貸すための農地転用をするというのもおすすめです。
●他の農家に貸す
農地を探している農家の方に出会えれば、そのまま農地を活用することができるので助かるでしょう。
しかし、農業人口の減少により、なかなか思うようにいかないというのも現実です。
調整区域の農地転用の手続きにかかる費用とは?
農地転用にかかる費用は、市街化区域か市街化調整区域によって変わってきます。
市街化調整区域の場合は、先にも述べた通り、手続きが複雑なため費用は高めです。
また、依頼する行政書士によっても報酬費用が異なるため、事前に見積もりをとることをおすすめします。
それでは、実際に手続きでかかる費用を大まかにご紹介しましょう。
●土地改良区域除外決済金
これは、農地を所有している人が所属する「土地改良区」という農業の組合のようなもので、水路の造成やインフラ整備を管理する組織です。
その組織から脱退する際に、他の組合員に支払う、いわば「手切れ金」のような意味合いの費用になります。
これは、その土地の広さによって金額が決まり、広ければ広いほど除外決済金の費用が高くなります。
●行政書士への報酬
市街化調整区域で農地転用する際の行政書士の報酬費用は、9万~10万円が相場です。
それに比べて、市街化区域だと3万~4万円となるため、およそ倍近くの費用がかかることがわかります。
最低でも、手続きを完了するまでにはこのよう費用がかかることを忘れないようにしましょう。
調整区域を宅地に農地転用する手順と費用
調整区域の農地に住宅を建てるには、厳しい制限があります。
それは、その農地の所有者である世帯の子供や孫が、新たに家を建てる場合の分家住宅に限ります。
また、本家には後継者がいて持ち家がなく、他に利用可能な土地がないということも含まれます。
まず、手順としては、農地を宅地に転用するために都道府県知事の許可を受けなければなりません。
大まかな流れとして、行政書士により農地転用の手続きを行ってもらい、その後ハウスメーカーと打ち合わせをしながら、準備をすすめていきます。
そして、土地家屋調査士による地目変更登記を行うということになります。
気になる費用ですが、農地を宅地にするには、地盤の補強、水道の引き込み、測量、下水設備を整えるなどの費用がかさむ場合があります。
これらをしっかりと調査してからの着工となるため、土地や建物以外にも諸経費がかかることを念頭に置いておかなければなりません。
見落としがち!道路より低い農地は盛土の費用もかかる!
宅地へ農地転用を計画している土地があっても、道路より高さが低い場合には注意が必要となります。
そのままでは、審査を通ることができないため、盛土をしなくてはなりません。
この工事には整地費、地盤改良費、土盛費、土留め費がかかってくることになります。
一例として、面積100m²の正方形で、1m²の盛土、4面の土留めを必要とする農地だとします。
・整地費 600円/m²×100m²=60,000円
・地盤改良費 1,400円/m²×100m²=140,000円
・土盛費 4,700円/m²×100m²=470,000円
・土留費 55,500円/m²×10m²×4面=2,220,000円
<合計> 2,890,000円
道路と同じ高さにするためだけでも、これだけの費用がかかってきます。
この他に、先述したように水道の引き込みや下水の設備の費用がかかることを考えると、市街化調整区域に家を建てるというのは、土地代がかからないとは言え、かなりの諸経費がかかるということを覚えておかなければなりません。
調整区域の農地転用は費用がかかる!
農地を所有していながら、その土地が休耕地となっている方にとって、農地転用はとても有効な制度です。
しかし、調整区域を農地転用するにあたっては、さまざまな制約とかなりの費用と時間がかかることがお分かりいただけたでしょう。
特に宅地にするためには、整地するための費用がかかったり、インフラ整備などの費用がかかります。
もし、農地転用を検討しているのであれば、どのような費用がかかるのかよく検討してから行ってください。