他者が所有する土地を自分の土地にする「土地の名義変更」は、相続や財産分与、売買時など様々なケースで必要になります。
しかし、この名義変更はただ書類を届け出ればできるというわけではなく、定められた税金を納税したり、専門家に登記の名義変更を依頼したりと何かとお金がかかってしまいます。
いざ名義変更を行うという時に思わぬ出費に戸惑わないように、あらかじめ「土地の名義変更」にかかる費用をチェックしておきましょう。
土地の名義変更が必要な時とは?
まず、土地の名義変更が必要なタイミングとはどのような時なのでしょうか。
よく耳にするのは親や祖父母、親族が死亡した際に持っていた土地を相続するための名義変更です。
相続で名義変更が行われる際には「相続登記」などと呼ばれることもあります。
他には、土地を生前贈与で受け取った場合、離婚時の財産分与を土地で行った場合、土地を売買した場合などにも土地の名義変更をしなければなりません。
土地の名義変更を行わないままでいると、たとえその土地に家を建てて暮らしていたとしても「持ち主は自分」と証明することができません。
そのため、その土地を売却したり、担保にしてお金を借りたりといった行為ができなくなってしまいます。
さらに、相続登記の場合、土地の名義変更が遅ければ遅いほど、必要な書類が揃わずに費用が高くなったり、名義変更に時間と手間がかかったりする恐れもあります。
自分の土地を手に入れた時には必ず早めに土地の名義変更を行いましょう。
土地の名義変更にかかる費用は3種類
他者の土地を自分の土地として名義変更する場合には、大きく分けて3種類の費用が発生します。
まず一つ目は名義変更登記を行う際に支払わなければならない「登録免許税」です。
これは登記関連の手続きを行う場合には必ず支払わなければならない税金で、払わないと登記が正しく完了しません。
二つ目は、名義変更を行う際に必要な書類を集めるためにかかる手数料や郵送料などの実費です。
そして、三つ目は名義変更登記を司法書士に依頼する時の報酬費用です。
これらが土地の名義変更にかかる主な費用の種類ですが、すべて一律で同じ額が必要となるわけではありません。
先述した通り、名義変更には相続や贈与など色々なケースがあり、かかる費用も名義変更する理由によって相場費用が増減するのです。
まずは、自分の状況を整理して「なぜ土地の名義変更が必要なのか」を明確にしましょう。
それでは各費用について、その概要と理由によって違う相場金額について解説していきたいと思います。
土地の名義変更に必ずかかる費用は登録免許税
土地の名義変更をする際に必要な費用の一つ目「登録免許税」は、名義変更に必ずかかる費用です。
土地にかかる登録免許税の税額は、「固定資産税評価額」に法律で定められた税率をかけ合わせることで算出されます。
固定資産税評価額とは、固定資産税を算出する際の基準となる評価額のことです。
ここにかけ合わせる税率は相続・贈与・売買によって異なります。
例えば、売買及び贈与による名義変更を行う場合は課税標準に対して税率20/1000をかけた額が登録免許税となります。
一方、相続の場合は税率が下がり、4/1000となります。
例えば、課税標準が3000万円の土地に対して売買・贈与による名義変更を行った場合は、3000万円×20/1000の60万円、相続による名義変更を行った場合には12万円の登録免許税がかかります。
土地の名義変更には書類代・郵送代などの実費もかかる
土地の名義変更に必要な費用二つ目の「書類を集める実費」は、自分で土地の名義変更を行う場合に必要な費用です。
土地の名義変更を行う際には、変更理由によって色々な書類を集めなくてはなりません。
まず、必ず必要になる書類に「登記事項証明書」というものがあります。
登記事項証明書は、その土地の現在の所有者や権利の状況などが記載されており、名義変更する土地に何か問題がないかをチェックする重要な証明書です。
登記事項証明書を窓口で取得するには、一筆600円かかります。
その他に必要な書類には、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などが挙げられます。
どれも該当者が属している役所や本籍地がある役所で取り寄せることができ、手数料は1通400~500円程度です。
本籍地が遠方にある場合、郵送で取り寄せることも可能ですがその場合には郵送代・返送用の切手代なども必要となります。
1枚1枚の手数料は少額ですが、土地の権利者や相続する人数が多ければその分必要な書類も増え、費用・手間共に増えてしまうでしょう。
土地の名義変更手続きを司法書士に依頼!その費用は?
土地の名義変更にかかる三つ目の費用は、専門家に名義変更手続きを依頼した時にかかる「司法書士報酬」です。
土地の名義変更は面倒な手続きや事務処理が多いので、司法書士に依頼してすべて任せてしまうこともできます。
その場合、司法書士に対して一定の報酬を支払わなければなりません。
司法書士報酬の相場は名義変更の複雑さや、どこまで依頼するかによって異なります。
例えば、書類を全て自分で集める場合よりも書類集めから登記申請まで全て任せてしまう方が報酬は高くなりますし、古い土地の名義変更で事務作業が増えても報酬が多く請求されるでしょう。
司法書士に依頼する場合には、いくつかの事務所に見積もりを取って一番親切で安価な事務所を選ぶようにしましょう。
土地の名義変更の費用を節約する方法は?
まず、一番の節約方法は司法書士に依頼せず自分で名義変更を行うということです。
そうすることでかかる費用は登録免許税と最低限の実費のみとなり、司法書士報酬をまるまる節約することができます。
ただし、専門家に依頼しないということは自分で全ての書類を取り寄せ、手続き・申請まで行わなければならないということです。
費用を削減して時間を使うか、時間を削減してお金を払うかは自分の状況とよく相談して決めましょう。
その他に、土地自体の課税評価額を下げることでかかる税金を減らす節税方法もあります。
課税評価額を下げる方法には「貸宅地・貸家建付地としての利用」などがあります。
これは土地を人に貸したり、土地の上に賃貸アパートを建てたりすることで、その土地に借地権を発生させる方法です。
借地権を発生させると、その土地は持ち主が自由に使用できなくなります。
そのため、土地の評価額が下がり課税評価額も低くなるのです。
また、賃貸物件を建てローン残高で相続税を軽減させるなど、その他の税金対策にも繋がります。
ただし、一つ注意点としては現在の人口減少傾向において賃貸物件を作ったとしても空き家が続き、経営が困難になってしまうケースです。
例え名義変更時の費用を節約できたとしても、賃貸物件の経営で赤字が続き反対に出費が増えることになったら本末転倒ですよね。
土地を持っている場所が人に貸しやすい地域か、空き家率が何%までなら問題なくアパート経営ができるかなどをよく計算して、どちらが節約になるか見極めましょう。
土地の名義変更費用を知って相続・売買時に備えよう
土地の名義変更には、税金だけでは無く諸費用が発生します。
手続き直前に慌ててお金を集めるようなことをしなくて済むように、名義変更が発生する前には大体どのくらいの費用がかかるのかを事前に確認しておきましょう。
ちなみに名義変更は義務ではなく権利です。
その土地を自分自身のものにして、今後快適に使用したり、売却・賃借で活用するために「名義変更」は欠かすことができません。
たしかに面倒な手続きや費用が発生するものですが、将来の自分、そして家族のためにしっかりと手続きして土地の持ち主を自分に変えておきましょう。