地目が「山林」の土地を駐車場として活用するための注意点

地目が「山林」となっている土地は、林業などに携わっていない場合、使い道に困ってしまいますね。

固定資産税は低いものの、ただ所有しているだけでは、税金を払い続けるだけの土地になってしまいます。

今回は、地目が山林の土地についての規制や、駐車場経営をする場合の注意点などをご紹介します。

それでは、駐車場として活用する場合、どんな手続きや注意が必要なのか見ていきましょう。

地目が「山林」の土地を駐車場として活用する

地目が「山林」になっていて、現状も山林の場合、そのほとんどが「市街化調整区域」に指定されていると考えて良いでしょう。

この「市街化調整区域」は、「街として成り立つこと(=市街化)」を「抑える(=調整)」区域です。

つまり、住宅や商店が立ち並んで、人が集まるような地域にしてはいけないということなので、基本的には建物を建てることはできません。

建物を建てたい場合には、土地の利用申請をし、行政に認められた場合のみ建物を建てることができます。

その点、駐車場でしたら、建物を建てる必要はありません。

木を伐採して、土地を平らにして貸し出すのであれば、特に市街化調整区域の規制はないのです。

そのため、管理事務所などの建物を建てなければ、市街化調整区域であっても駐車場を造ることができます。

駐車場にするために山林を伐採するには許可が必要

前述したように、地目が山林の土地に駐車場を造ることはできますし、市街化調整区域の規制を受けることもありません。

しかし、所有している山林が「地域森林計画」の対象になっている場合は、山林の木を伐採するには届け出が必要です。

例えそれが自分の土地であっても、変わりません。

「森林計画」制度とは、山林の生物や水源を守り、土砂崩れを起こさないために作られたものです。

秩序なく森林を伐採したり開発することは、森林を荒廃させ、山崩れや風水害など、災害を起こす原因になることがあります。

また、一度伐採してしまうと、山林を造るためには長い年月を必要とします。

そういったことを防ぐために、森林法によって定められた制度です。

そのため、駐車場を造る際に、山林の立木を伐採するには、市町村の長へ「伐採及び伐採後の造林の届出書」を提出しなければなりません。

また、山林の立木を伐採した後に、1ヘクタール以上の土地を開発する場合には、新たに「林地開発許可申請」が必要です。

林地開発許可は、県知事への申請になります。

しかし、1ヘクタールと言えば、100m×100mなので、駐車場として活用する広さであれば、通常、届け出対象にはならないでしょう。

まずは地目が山林の土地の規制を調べる

これまでお話ししてきたように、地目が山林の土地を駐車場にするには、その土地にどんな規制が掛かっているか知る必要があります。

「市街化調整区域」に関してはほとんど問題はありませんが、「地域森林計画」の対象になっている場合には、事前に届け出をする必要があるからです。

「地域森林計画」は5年ごと10年を1期として、各都道府県知事が森林の整備や保全を考え、計画を立てています。

この場合の森林とは、国が保有している「国有林」以外の「民有林」が対象となります。

5年に1度見直しが行われる「地域森林計画」の対象になる民有林を調べるには、その土地のある市町村の役所に行く必要があります。

林務課など、森林を担当している部署にある「森林計画図」や「森林簿」で、自分が所有している山林が「地域森林計画」の対象かどうか確認してください。

最近では、ネット上で確認することができる自治体もありますが、正確な内容が知りたい場合は、直接役所に出向くことをおすすめします。

また、森林法が平成28年に改正されたことにより、「林地台帳制度」が発足し、平成29年4月1日から施行されていますが、より正確を期すために、さらに2年の経過措置が取られています。

これまで使っていた「森林簿」は都道府県が林ごとの単位で作成していたのに対し、「林地台帳」は市町村が地番単位で作成しているので、より詳細な情報が得られるということです。

地目が山林の土地を駐車場として活用!駐車場の形態はどうする?

ここからは、地目が山林の土地を開発して、駐車場として活用することについてお話ししましょう。

駐車場として活用するには、月極駐車場にするのか、コインパーキングにするのか、主にこのふたつに分けられます。

そして、それぞれに2つの形態パターンがあるので見てみましょう。

【月極駐車場】

①管理委託/不動産会社などに、駐車場利用者の募集や管理だけを委託する。

②一括借上/駐車場の運営を業者に一任し、業者が駐車場利用者に転貸する。

【コインパーキング】

③土地賃貸/駐車場を専門に扱う業者に土地を貸す。

④自己経営/自分で駐車場を整備し、管理や運営を業者に委託する。

この他に、駐車場の整備、管理、運営をすべて自分で行うという方法もありますが、一般の方が駐車場を経営するのは大変なのでおすすめしません。

上記4つの方法のうち、駐車場利用者の募集や管理運営に関しては、業者に任せておけばすべてやってもらえますが、駐車場の整備などの初期投資は、自分で行うことになります。

唯一③に関してだけは、土地を貸すだけなので初期投資をする必要はありません。

初期投資をする費用もないし、リスクを負いたくない場合は、③がおすすめです。

駐車場経営のメリットデメリット

次に駐車場経営のメリットデメリットについて見ていきましょう。

【メリット】

・初期投資費用が少ない

地目が山林の土地を整備するには費用が掛かりますが、駐車場にするにはアスファルトや砂利を入れて整地をし、駐車スペースを示す白線やロープを引く程度で良いので、初期投資費用は少なくて済みます。

より費用を抑えたいのならば、簡単な整地だけで利用できることもあります。

前述したように、土地を貸すだけの③式のコインパーキングは、初期費用0円ではじめられます。

・土地の転用がしやすい

駐車場は建物を建てないので、他のものへの転用や売却がしやすいというメリットがあります。

また、駐車場利用者に立ち退いてもらう場合も、料金の日割り清算を行わなくても構いませんし、立ち退きを拒否もできないので、比較的楽に退去してもらえます。

【デメリット】

・比較的収益性が低い

駐車場はローリスクな分、収益性は低くなります。

また、あまり高い料金設定にすることは難しいでしょう。

・固定資産税が高い

建物がない土地なので、固定資産税の特例が適用されません。

そのため、節税効果も低くなります。

地目が山林の土地の駐車場経営の難しさ

駐車場経営で最も大事なことは、「その場所に駐車場の需要があるのか」ということです。

地目が山林として登記されている土地は、郊外ある場合が多く、集客面に苦労することが予想されます。

では、駐車場を利用するのはどんな方で、どんな場合でしょうか。

月極駐車場を利用する方は、職場の駐車場が少なかったり、自分で借りなくてはならない場合や、自宅の敷地に停められない2台目、3台目のために利用する場合などが考えられます。

コインパーキングは、商業施設や駅の近くなど、短時間だけ利用することが多いでしょう。

いずれにしても、その駐車場をどのような方たちが利用するのか、需要はあるのかを事前に見極める必要があります。

山林があるような郊外であれば、新たに開発される場合があるかもしれません。

例えば、新興住宅地や工場が近くにできれば、月極駐車場の需要が高まるでしょう。

大型の商業施設や病院、駅、バスターミナルなどであれば、コインパーキングの需要が見込めます。

前述したように、駐車場は固定資産税の特例が適用されないので、節税対策にはなりません。

また、収益性も低いので稼働率が高くなければ赤字になってしまう可能性が大いにあります。

山林を駐車場にするときには、それらのことも考慮しましょう。

地目が「山林」の土地で駐車場経営を行う

地目が山林の土地は、郊外にあることが多く、駐車場としての需要は低いでしょう。

また、収益率が低く、駐車場には建物がないので固定資産税の優遇も受けられません。

そのため、安易に駐車場を造ってしまうと赤字になってしまうこともあるので、事前に駐車場のニーズや収支計算をしておくことをおすすめします。