初期費用で支払う敷金や礼金には消費税はかかるのか?

マンションやアパートあるいは事務所・店舗といった賃貸物件を借りる際には、初期費用で敷金や礼金を支払います。

敷金や礼金なしのマンションやアパートも増えていますが、まだまだ敷金や礼金が必要な物件のほうが多いようです。

初期費用で必要になる敷金と礼金は何のために支払うのでしょうか?

また、敷金や礼金には消費税がかかるのでしょうか?

この記事では敷金と礼金について解説し、居住用賃貸物件と事業用賃貸物件における消費税の扱いについてご説明いたします。

賃貸物件の敷金とは何か

敷金や礼金は、「賃料の一ヶ月分」あるいは「賃料の六ヶ月分」など賃料の何ヶ月か分を支払います。

敷金は賃貸借契約における債務の担保として借主が貸主に差し入れるお金で「預け金」となります。

モノを買ったり、役務(サービス)の提供を受けたりして、その対価を消費税を加算して支払うというわけではありません。

賃貸借契約は、管理会社や大家さんと入居者の間における信頼関係で成り立ちます。

審査を経て適切と判断された入居希望者と契約を交わし、マンションやアパートあるいは事務所・店舗を貸します。

しかし、管理会社や大家さんは常に家賃未払いのリスクを負っています。

アパートの入居者が勤務していた会社が倒産してしまい、支払いが滞ってしまう可能性もあります。

店舗の売り上げが伸びず、店主が夜逃げしてしまい、家賃の回収がままならない状況に陥ることもあり得ます。

そんな時に備えて予め賃料の何ヶ月分かを預かっておくわけです。

預けているお金ですから、もちろん賃貸借契約が終了した時には入居者に返還されます。

クリーニングや原状回復工事の費用を差し引いて返還、というケースが多いのではないでしょうか。

居住用賃貸物件の敷金には消費税がかからない

インターネットで居住用賃貸物件の賃貸条件を眺めていると、賃料や管理費が切りの良い数字になっているのがわかります。

一円単位、あるいは十円単位まで数字が並んでいる物件はあまり見かけません。

これは、居住用賃貸物件の賃料や管理費には消費税がかかっていないからです。

マンションやアパートといった居住用賃貸物件の貸し付けには消費税がかかりません。

消費税が導入された当初は、居住用賃貸物件の賃料や管理費にも消費税がかけられていました。

しかし、平成三年秋に消費税法の改正があり、社会政策上の観点から居住用賃貸物件の貸し付けについては非課税扱いとすることになったのです。

このため、マンションやアパートといった居住用賃貸物件の敷金にも消費税がかかりません。

非課税扱いとされている賃料の何ヶ月分かを敷金としており、敷金だけ賃料に消費税をかけてから計算することはありません。

ちなみに、敷金礼金無しの物件でも保証会社に加入が必須となっている場合が多いです。

保証会社の保証料も非課税扱いです。

事業用賃貸物件の敷金には消費税を含むことがある

事業用賃貸物件は礼金が不要でも、敷金は必要な物件がほとんどではないでしょうか。

事務所や店舗の家賃は額が大きいため、未納が何ヶ月にもなると管理会社や大家さんにとっては一大事となりますから、やはり、敷金は必要となります。

事業用賃貸物件の賃料や管理費は、平成三年時の改正で非課税扱いにはならず、消費税が加算されています。

敷金については、税抜き賃料の三ヶ月分や六ヶ月分など消費税抜きの賃料を基本に計算するところが多いです。

敷金は前にも述べましたように、単に契約の債務を担保するために管理会社や大家さんに預けるお金です。

モノを買ったりサービスの提供を受けるわけではありませんので、基本的には消費税は抜きにして考えるのが一般的です。

ただし、すべての物件が同じではなく、そのまま税込み賃料の何ヶ月分かを敷金とする物件もあります。

事業用賃貸物件では一ヶ月の賃料が大きくなるものもありますので、「税込みで計算するか」「税抜きで計算するか」で初期費用で支払う額に大きな差が生じることもあります。

見積もりを取るなどして確認するのが大事です。

賃貸物件の礼金とは何か

礼金は「お礼のお金」です。

昔、日本の住宅事情が今とは異なって借家が大半だった頃に、入居者が管理会社や大家さんに対して「家を貸してくれてありがとうございます」といった意味合いで謝礼を支払っていました。

諸説ありますが、その慣習が礼金として今も残っているようです。

少子高齢化が進んでマンションやアパートに空室が目立ち、空き家の問題が社会問題になっている今の世の中では考えられないかもしれません。

礼金はマンションやアパートの賃貸条件だけにあるように思われますが、事業用賃貸物件にもあります。

礼金は敷金とは異なり、賃貸借契約終了後には返還されません。

そのまま管理会社や大家さんに差し上げるお金です。

礼金における消費税の扱いは居住用賃貸物件と事業用賃貸物件では異なりますので、次章以降で解説します。

居住用賃貸物件の礼金は消費税がかからない

居住用賃貸物件では敷金と同様に礼金にも消費税がかかりません。

物件を借りるために必要な経費となるので、預け金である敷金とは異なり、礼金には消費税がかかってもおかしくはないように思えます。

しかし、賃料や管理費などの扱いと同じようにマンションやアパートの貸し付けに関する費用として礼金も課税対象外とされているのです。

マンションやアパートを借りる機会があったら、初期費用の見積書あるいは請求書の明細を確認してください。

内税になっていることもなく、賃料の何ヶ月分かが礼金として記載されていると思います。

初期費用をできるだけ安く抑えたい方にとっては、礼金の支払いは辛いかもしれません。

賃料の一ヶ月分なり二ヶ月分の礼金が必要な場合、できれば翌月以降の家賃にまわしたいところです。

気に入った物件が見つかって、たとえば礼金が二ヶ月必要だったら、ダメで元々の気持ちで減額を交渉してみるのも良いかもしれません。

気前の良い大家さんなら、快諾してくれるかもしれません。

事業用賃貸物件の礼金は消費税がかかる

居住用賃貸物件とは異なり、事業用賃貸物件では礼金には消費税がかかります。

消費税法で事業用賃貸物件の賃料や管理費には消費税がかけられます。

礼金についても同じ扱いとなるのです。

敷金とは異なって礼金は物件を借りるための条件として支払うお金なので、権利の設定の対価となり、資産の譲渡等の対価と見なされるため、課税の対象となるのです。

物件を借りるために必要な経費となるわけですね。

なお、先に居住用賃貸物件では礼金に消費税がかからないと解説しましたが、マンションやアパートを事務所や店舗として使う場合は別です。

マンション内に小さな個人事務所あるいはネイルサロンなどの店舗が入っているのを見かけたことがあるかもしれません。

これらは居住用賃貸物件を事業用として使用しているのですが、この場合は賃料や管理費に消費税がかかります。

同様に礼金も課税対象となりますので、間違えないよう注意が必要です。

居住用か事業用かで消費税の扱いが異なる

敷金や礼金における消費税の扱いは「居住用」か「事業用」かで異なります。

敷金は単なる預け金なので、一部の事業用賃貸物件を除いて基本的に消費税抜きの賃料をもとに計算されます。

一方で、礼金は居住用賃貸物件では非課税扱い、事業用賃貸物件では課税対象になります。

ただし、居住用賃貸物件でも事業用として使用する場合は課税対象となりますので注意が必要です。