私道を通るには通行権が必要!車で通行することもできない?

道路には多くの決まりごとが存在します。

道路の中でも私道は特に扱いが難しいので、近隣トラブルの元となることも少なくありません。

そのため、車や徒歩などで通行する際は注意が必要です。

この記事では私道の通行権や通行料を中心に、私道にまつわる決まりごとをご紹介します。

公道と私道

全国に張り巡らされている全ての道路は、公道と私道の2種類に大別されます。

公道と私道の違いは管理者です。

管理主体が国や地方公共団体なら公道です。

国道や都道府県道、市町村道などの一般的な道路のほとんどは公道に属し、公道上では道路交通法が適用されます。

ご存知の通り、運転免許証不携帯やスピード違反などを犯すと犯罪となります。

一方で、個人、企業、団体などの民間が管理している道路は私道と呼ばれます。

自動車教習所で技能の練習をするコースや大学内にある道路などは私道に含まれます。

公道と同じように、私道にも基本的には道路交通法が適用されます。

私道だからといって、路上駐車や無免許運転を行っても良いというわけではないのでご注意ください。

ただし、完全に交通が遮断されていて他人が入れないような私道においては道路交通法は適用されません。

見極めが難しいため、道路上で車を運転する際には道路交通法が適用されると考えましょう。

先ほどお伝えしたように、公道と私道の違いは管理者であり所有者ではありません。

そのため、多くはありませんが個人が所有している公道も存在します。

しかし、管理者の定義が曖昧であるため、公道であるか私道であるかの法的な線引きも曖昧です。

どちらであるか正確に特定したい方は、役所に問い合わせて確認をとりましょう。

次に私道の通行権についてご説明します。

車で私道を通行するには通行権が必要

私道は私人の所有物であり、徒歩にしろ車にしろ、第3者が通るためには原則として所有者の承諾がないと通れないのです。

「私道につき関係者以外の方の通行禁止」といった看板が掲げられているなどの特徴があれば私道と特定しやすいです。

しかし、ほとんどの公道と私道は見た目には違いがなく、初見でどちらか特定するのは難しいでしょう。

そのため、知らない間に他人が所有している私道を通行している方もいるかもしれません。

所有者に訴えられることは珍しいですが、それは所有者が気づいていないか黙認しているだけです。

土地所有者によっては、誰でも通行できるように開放している道路もあります。

しかし、ほとんどの私道では通るために土地所有者の許可が必要です。

ただし、住居から公道に出るまでにどうしても他人の私道を経由する必要がある場合は例外です。

該当する方は所有者の許可なしで私道を通行できます。

民法にも定められている権利なので、問題はありません。

ただし、車での通行は日常生活に不可欠ではないとみなされ、通行が許可されない場合もあります。

私道を通るには通行権が必要ですので、次項では通行権の種類・特徴についてご説明します。

車で私道を通行するのに必要な通行権の種類は?

前項では公道に出るために私道を通る必要がある方は、所有者の許可なしで私道を通行できるとご説明しました。

これは正式には囲繞地通行権と呼ばれる通行権です。

いわば、この通行権は立地条件から日常生活を送れなくなることを防ぐための権利です。

先述した通り、車での通行が許可されない場合もあります。

また、便宜的な理由から私道の通行権を得るとなると、自主的に動いて通行権を獲得しなければなりません。

その際に必要となるのは、所有権か通行地役権と呼ばれる通行権の獲得です。

所有権とは私道について最も強い権利で、その名の通り所有者が有する権利です。

所有権を持っていれば、通行権はもちろん、アスファルトに穴を掘って看板を立てたりなどが可能となります。

しかしその分、所有権の取得は難しいです。

所有者から承諾をもらえない場合や、もらえたとしても条件として多額の賃借料を負担することとなることもあります。

一方、通行地役権は私道を通行することだけを目的として使われる権利です。

所有権とは違い、目的が私道を通行することのみに限られているため所有者の承認を得やすいです。

車で私道を通行する場合は通行料を支払わなければいけない?

車にしろ徒歩にしろ、基本的には所有者が自由に通行料を設定できます。

私道を通っても所有者から何も言われなければ自ら払う必要はありませんが、所有者から通行料を請求されたなら支払うことになります。

所有者が通行料が記載された看板を立てていることもあり、その場合は言い逃れはできないと考えましょう。

ただし、その金額があまりにも合理的ではない場合は権利の濫用とみなされます。

また、囲繞地通行権を使うためにも通行料が必要となる可能性があります。

先述した通り、囲繞地通行権は私道を通らなければ公道に出られない方に付与される権利です。

囲繞地通行権には通行の権利と共に、私道を通行料を支払う義務もついてきます。

ただし、この通行料の有無と額に関しても所有者が自由に設定できます。

所有者の意思によっては通行料が免除されことも少なくありません。

私道の通行料の相場は、借地料の10分の1と言われています。

借地料さえわかれば、その私道の通行料の相場を算出することができます。

借地料の相場は国土交通省の公式HPの利用や、利用不動産屋への問い合わせによって調べることができます。

袋地の土地は安いだけに注意が必要

私道が関わるトラブルに巻き込まれないためには、土地を購入する前に周辺情報を念入りに調査する必要があります。

袋地とは公道に一切接していない孤立した土地を指します。

袋地を購入すれば必然的に私道を利用することになり、私道の所有者とのトラブルに発展するリスクもあります。

また、袋地を購入してもその上に建物の建築や再建築ができないという可能性もあります。

建築基準法第42条、43条は都市計画区域内に建物を建築する場合、その敷地は幅4m以上の道路に2m以上接しなければならないと定めています。

そのため、袋地でこの条件を満たすためには最低でも道路につながる幅2m以上の通路を開設する必要があるのです。

周辺が空き地で、幅2m以上の通路を開設しても、周囲に与える影響が少ないような場合は通路開設が認められるでしょう。

反対に、通路を開設するにあたり、周囲の建物を壊さなければならないような場合は周辺に与える損害が考慮され、通路開設が認められない恐れがあります。

通路を開設できずに建築基準法第42条、43条を守れないとなると、建物の建築や再建築ができません。

また、袋地で車を使用することは厳しく、使用できたとしても通行権の獲得には苦労が強いられるでしょう。

袋地を購入を決める前には、これらのリスクを頭に入れて情報を整理することが大切です。

私道に所有者が複数人いるなら通行権獲得は難しい

私道は1人ではなく、複数人によって所有されているケースも多いです。

複数人によって私道を共有する手法には共有持分と分割持分の2種類があります。

前者は私道の権利をそれぞれの持分として分けることによって私道を複数人で共有します。

あくまで私道の権利を分けるだけです。

私道に境界線を引いてそれぞれの具体的な所有範囲を決めることはしません。

一方、後者は私道を面積をそれぞれの持分として分けることによって私道を複数人で共有します。

これは分筆することによって私道に境界線を引き、それぞれが所有している範囲を明確に示します。

複数人の所有者が置かれている私道の通行権の獲得は大変です。

囲繞地通行権は自動的に付与されますが、車で通行するためには所有者の許可が必要となる恐れがあります。

また、所有権や通行地役権の獲得には所有者の許可が必ず必要となります。

ただし、所有者が複数人いる場合は全員の許可をとる必要があるのです。

承諾しない所有者が1人でもいれば、通行権を獲得することはできません。

また、所有者の現在の居場所が分からなければ、連絡をとることさえ難しいです。

所有者が多ければ多いほど、通行権の獲得難易度は高くなります。

私道の所有者の人数は、土地購入前に確認しておくべき重要事項の1つでしょう。

私道には多くの決め事がつきまとう

これまでご説明してきた通り、私道にはたくさんの決まりごとが存在するのです。

その決まりごとを破ると、近隣トラブルや裁判沙汰へと発展する恐れもあります。

家の近所に私道があり、生活に関わってくるとなれば最低限の知識は持っておくべきでしょう。

また、私道に関するトラブルは人間同士の関係性が原因となり生じることが多いです。

この記事から私道の所有者が持つ権利を把握して、その知識を所有者との友好な関係を築くための武器として利用しましょう