建築基準法で定める採光基準!店舗の場合はどれくらい必要?

建築物を建築する場合、建築基準法という法律に適合した建物でなければ建築することができません。

道路に関する規定、建ぺい率や容積率に関する規定、用途制限や高さの規定など守らなければならないことはたくさんあります。

そして建築基準法の中でも意外と盲点なのが、採光に関する規定です。

こちらでは店舗に焦点をあて、採光や換気の基準をお伝えします。

採光について建築基準法で厳しく規定されている!

採光とは太陽の光を取り入れることです。

日本では昔から「日光浴」という言葉があるように、太陽の光を浴びることは健康法の一つと考えられてきました。

だからこそ建築基準法では、居室の採光についての基準が定められています。

そして、ここで注意して欲しいのが「居室」とはただ単に住むための部屋のみではないということです。

建築基準法によると居室とは居住、執務、作業、集会、娯楽、その他これらに類する目的のために継続的に使用されるものと定められています。

そのため戸建住宅やマンションはもちろん、幼稚園や保育園、小中高等学校、病院や診療所、寄宿舎の寝室など採光についての規定が決められています。

反対に検査室や手術室、実験室など湿度や温度調節が必要で、開口部を設けることが望ましくない居室については制限がありません。

また地下室の居室についてもやむを得ないと判断され、採光についての基準は対象外となっています。

店舗や事務所の採光については、開口部を設けることが望ましいかどうかによって制限が変わるのかもしれません。

採光のための開口部の計算方法は?

住宅や学校、病院や店舗などの建築物について、どんな形でも採光が取れる窓を作ればいいという話ではありません。

採光について建築基準法では「居室の開口部は居室の床面積に対して用途ごとの割合以上の採光有効面積でなければならない」としています。

そして住宅の居室のうち居住のために使用される部屋や病院、診療所の病室などでは7分の1以上、保育室、学校の教室などは5分の1以上開口部の有効面積をとらなければなりません。

幼稚園や小中高校以外の学校では、10分の1以上が必要です。

さらに注意が必要なのは「開口部は採光に有効でなければならない」という点です。

例えば高層マンションと高層マンションの間に建つ平屋建て住宅は、窓からの採光はあまり期待できません。

そのため実際の窓の大きさに「採光補正係数」というものがかけられ、割引されてしまうことになります。

採光補正係数の値を求める方法は建築基準法施行令20条2項に詳しく記載されていますが、採光補正係数が0.8だとし、窓の大きさが3m²だと

3×0.8=2.4m²

となり有効な開口部は2.4m²となるのです。

建築基準法で定める店舗の採光とは?

住宅の居室や病院、診療所、幼稚園や保育室、小中高校などの建築物については建築基準法により採光に関する基準が決められていますが、店舗についてはどのように決められているのでしょうか?

実は採光が必要な居室として店舗は含まれないことになっています。

建築基準法第28条施行令19条には、採光が必要な床面積の割合について記載されているのですが、同条令には但し書きが書かれています。

この但し書きには

「事務所や店舗、作業室、大学の実験室、病院の手術室などにおいては採光が必要な居室としての制限は受けない」

という内容のことが書かれています。

実際に窓が全くない店舗を見ることは少ないかもしれませんが、BARやスナックなどには窓がない店舗も多数存在しますよね。

店舗の設計においては、必要採光面積の算出は必要ではありません。

開口部として窓を設けるかどうかは、建築主が用途によって決定して構わないということになります。

レストランなどの飲食店では開放感を求められるため大抵開口部がありますが、開口部の規模については問われません。

店舗では換気に関する基準が適用される!

店舗には採光についての規定はありませんが、換気に関する基準については規定があります。

建築基準法では、居室について換気のための開口部を設けなければならないとされており、その面積は床面積の20分の1以上でなければなりません。

もしこの条件を満たせないのであれば、以下の換気設備のいずれかを設置する必要があります。

・自然換気設備
・機械換気設備
・中央管理方式の空気調和設備
・所要の性能を有すると大臣認定を受けたもの

2003年の法改正ではシックスハウス対策として、換気設備の設置が義務づけられています。

採光については住宅の浴室や洗面所、トイレ、事務所や店舗などについては規定がありませんでした。

しかし換気に関しては浴室や洗面所、トイレなどにも義務付けられています。

もちろん店舗も同様の規制が適用されます。

店舗で窓などの開口部を設けなければ、24時間常時換気システムなどの機械換気設備を設置することになるでしょう。

店舗は建築基準法だけでなく消防法の制限もあり!

店舗の場合には建築基準法の採光についての基準が適用されないので、窓の大きさなどについて特別に考える必要はありません。

換気についての基準は適用されますが、床面積の20分の1以上の開口部の設置ができない時でも機械換気設備の設置で要件を満たすことが可能です。

開口部のない居室は無窓階と呼ばれ、無窓階判定をされてしまうと消防用設備の設置基準も厳しくなることがあります。

消防用設備については建築基準法ではなく、総務省消防庁が管轄する火災防止のための設備や建材について規定する消防法で定められています。

消防法では床面積に対して30分の1以上の開口部を設けるよう定められていますが、建築基準法とは数値の違いがあることに注意しましょう。

無窓階と判定された場合には、以下の設置基準が厳しくなります。

・消火器、消火器具
・スプリンクラー
・屋内消火栓設備
・避難器具
・排煙設備
・自動火災報知設備
・非常警報設備

通常なら必要とされない設備についても、無窓階だから設置しなければならないということもありますので注意しましょう。

店舗を改装する時にも建築基準法の制限に気をつけよう!

建築基準法について考慮しなければならないのは、店舗を新築した時のみではありません。

ビル内の店舗では特に内装制限などがありす。

内装材やクロスの種類や下地の処理方法などについて制限が設けられています。

また飲食店が入るための店舗は特殊建築物に当てはまり、通常の建物よりも規制が厳しくなるため大規模な内装工事やリフォームを行う時には確認申請が必要となります。

この内装制限は火災の発生により延焼を防ぐことが目的です。

また飲食店などの店舗では、建築基準法だけでなく消防法でも建材について決まりが設けられていますので注意しましょう。

店舗と言っても多種多様です。

店舗内容によって改装時にも気をつけなければならない法律は変わります。

採光に関して店舗では制限は特にありませんが、開口部を設置した方が環境としては向上することは間違いないでしょう。

店舗に採光の制限はない!

商業地域の店舗などでは採光を確実に確保することは極めて困難であると言えるでしょう。

店舗や事務所に対しては、採光に関する制限は建築基準法では定められていません。

しかし、換気に関する制限や内装制限などはあるので注意が必要です。

また、特別な事情がない限り開口部を設置し採光が取れた方が環境としては良くなると考えられるでしょう。