不動産を取り扱う場合には、様々な権利が発生します。
その中で一番基本となり、知っておかないといけない権利が物権と債権です。
民法上大部分の権利は物権と債権に分けられますので、双方の意味や違いをしっかりと把握しておくことが大事です。
物権の意味や種別
物権とは一言で表すと、「物を直接的に支配する権利」と言われます。
債権とは対比的な違いがある権利です。
これだけでは分かりにくいかと思いますので、具体例を挙げてご説明します。
物権の中では一番分かりやすいであろう、「所有権」を取りあげます。
ある土地を100万円で購入したとすると、その時点で購入者が「所有権」を得ることが出来ますので、購入者はその土地を支配することが出来ます。
他の人が勝手に、その土地の上に建物を建てたり、物置きを建てたりすることは出来ません。
「物権=自分のもの」と考えてもよろしいでしょう。
また、用益物権という権利もあります。
これは、他人が所有する土地を一定の目的のために使用・収益するための権利です。
地上権や地役権がこれにあたります。
地上権とは、建物や資材置き場等の目的で、他人の土地を使用できる権利です。
債権と混同する所がありますので、しっかりと把握しておきましょう。
もう一つ、担保物権といった権利もあります。
これも債権とは混同しやすい権利と言えます。
例えば家を建てる際に、銀行の融資を受けて、お金を借りて建てるケースが多いかと思います。
このとき銀行は、確実にお金を回収するために、「もし返せなかった場合、建てた家や土地を取りあげますよ」と主張することができ、この権利が担保物権です。
物権は債権とは異なりますが、債権と密接につながっている権利ですので、違いを十分理解しておきましょう。
債権の意味や種別
次に債権についてご説明をしていきます。
債権とは、「ある特定の行為や給付を請求することができる権利」と言われています。
これも具体例を挙げていきますと、ある人がお金を払って物を借りようとしているとします。
借りる人は毎月のレンタル料を支払って、この物を使うことが出来る権利を有することになります。
この権利が債権です。
もし、借りている人がレンタル料を支払わなかった場合、貸す人は「レンタル料金をきちんと払ってください」と要求することが出来ます。
他にも債権として、金銭の支払いを受けることを目的とした金銭債権というものがあります。
例えば、売掛金、貸金、不動産賃料、預金などです。
物権は物にかかる権利に対して、債権は人に対して行為や給付を請求出来る権利という違いがあると言えます。
物権と債権の違い!直接支配性について
ここからは、物権と債権の違いを項目別に上げていきます。
まずは、直接支配性という観点からの違いです。
物権に関しては、「物を直接的に支配する権利」と述べました。
物権を保有している場合は他には影響を及ぼさずに、自分の力だけで直接的に支配することができる権利です。
具体的な例を挙げてみますと、土地の所有者は自らその土地を使用することが出来ますし、他の人の力を介在しないとできない権利ではないということになります。
次に債権における直接支配性を考えます。
債権とは、「ある特定の行為や給付を請求することができる権利」と述べました。
つまり、債権者が債務者に対して行為を請求できるものです。
例えば、お金を貸していた人がいるとしますが、債権者(貸している人)は債務者(借りている人)に「お金を返してください」と請求することは出来ますが、無理やり奪い取る事は出来ないということです。
あくまでも、人に対して請求できる権利だという点で、絶対支配性はないと言えます。
直接支配という点では全く対比的ですので、違いをしっかりと理解しておきましょう。
物権と債権の違い!排他性について
次に排他性について述べます。
排他性とは、「他の物を受け入れられない」といった意味です。
物権における排他性とは「一つの物に対して同じ物権が存在することはない」といった意味です。
「一物一権主義」とも言われます。
例を挙げれば、ある不動産の所有権がAさんにあるものに対し、Bさんが重ねて新たに所有権を有することは出来ないということです。
あくまでも一つの物に対して物権は一つだけです。
一方、債権は一つの物に対して、同じ内容の債権が複数存在し得るのです。
例えば、AさんがBさんに不動産を売却する契約をした後、Cさんにも売却をする契約をしたとします。
その場合、BさんとCさんはそれぞれAさんに対して、不動産の引渡債権を有することになります。
ですが、BさんとCさんの両者が不動産の所有権を取得することはありません。
この場合、どちらかの契約は履行不能となります。
このように排他性という面からも物権と債権では大きな違いがあるのです。
物権と債権の違い!絶対性について
最後に絶対性についての違いを考察していきます。
絶対性とは、その物にたいして絶対的な権利があるかどうかという意味合いです。
物権は、その物に対して絶対的な権利を有します。
例えば、自分が購入したペンがあったとすると、そのペンは誰に対してでも自分のものであると主張することができます。
ですから、所有者の承諾がない限りは、勝手にペンを使ったり、貸したり、プレゼントしたりすることは出来ません。
では、債権に関しての絶対性はあるのでしょうか。
債権に関しては、債権者は債務者に対してのみ有する権利です。
そのため、絶対性はなく相対性があると言われています。
債権者が権利を有することが出来るのはあくまでも債務者のみです。
第3者に関しては権利を有しませんので、絶対性がないと言えます。
債権では対抗できない要件を物権を使って債務不履行に備える方法
基本的に債権と物権は同じ財産権というカテゴリーに入るのですが、物権と債権は様々な点で違いがあるということを述べてきました。
債権だけでは絶対性も排他性もありませんので、債権者の意向に沿わない場面が多く出てくることになります。
例えば、お金を貸した人がいたとして、借りている人が返せなくなった場合、債権だけでは「お金を返してください」と主張することしかできません。
このような場合、物権である担保権を利用します。
例えば、お金を借りようとしている人がいたとすれば、その人が所有している建物を担保にして抵当権をつけてお金を貸すという方法です。
債権の履行が出来なくなった場合は、抵当権にある建物を競売などによって売却し、お金を返してもらうことが出来るようになります。
債権には直接支配性や絶対性がありませんので、債務不履行に備えて、物権の一つである担保権を利用するのです。
物権と債権は対比的でもあり類似性もある権利!
お話ししてきましたように、物権と債権には直接支配性や排他性、絶対性など多くの違いがありますが、非常に似ている部分も多く、債権と思っていたら物権に属するといったものも珍しくはありません。
債権と物権をうまく活用するためにも、お互いの違いをしっかりと理解しておくことが大事です。
有効活用できるように、これらの違いを把握しておくようにしましょう。