視点が違えば評価も変わる!?土地の評価額の調べ方

土地の評価額について表すときに、「一物四価」、あるいは「一物五価」という言い方をします。

これは、ひとつの土地に対して、「その価格を意味する評価がいくつかある」ということです。

土地は同じひとつのものなのに、なぜ違う評価になるのでしょうか。

今回は、「なぜ土地の評価額がひとつではないのか」、そして「それぞれの評価額の調べ方について」ご紹介していきます。

土地の評価額「一物四価」と「一物五価」について

それでは、「一物四価(いちぶつよんか)」と「一物五価(いちぶつごか)」について見ていきましょう。

【一物四価とは】

・実勢価格:時価とも言い、実際の売買価格のこと

・公示地価:国土交通省が地価公示法に基づいて毎年公表する価格のこと

・相続税評価額:路線価とも言い、相続税や贈与税における基礎となるもので、国税庁が毎年発表する価格のこと

・固定資産税評価額:固定資産税をはじめとする、土地に関する税金の基準となる価格のこと

上記の4つに、国土利用計画法に基づいて、都道府県知事が毎年公表する価格「基準地価」を加えると、「一物五価」になります。

このうち、国が発表している公的価格は、3つもあります。

なぜ、このようにひとつの土地にいくつもの評価があり、それぞれの価格があるのかというと、利用目的が違うからです。

上記では、簡単な説明になりましたが、それぞれの利用目的や調べ方について、もう少し詳しく見ていきましょう。

土地の「実勢価格」の調べ方

実際に不動産を売買するとき、「売買の対象という観点」で評価額を出したものが「実勢価格」です。

不動産は売り手と買い手の間で、そのときの時価で合意した金額が取引価格となり、それが実勢価格です。

実際に取引が行われたときは、その取引金額が実勢価格になりますが、実際の取引がなかったときは、周辺の取引事例や他の公示価格や固定資産税評価額などの公的データに基づいて推定することになります。

不動産広告などに販売価格として掲載されているものは、実勢価格ではなく、あくまでも売主の希望価格で、実勢価格とは一致しないので注意してください。

実勢価格の調べ方は、次の通りです。

【土地総合情報システム】

これは、国土交通省が不動産取引を行った当事者たちにアンケート調査を行い、その結果から得たデータをインターネット上で公表しているものです。

土地の種類や地域などの条件を選択すると、一覧表が表示されます。

しかし、この情報はアンケート調査で得られたデータなので、土地取引のすべてを網羅しているものではありません。

【仲介業者の販売価格】

現在売り出し中の土地価格を調べてみると、その地域の土地の価格を推測できます。

しかし、前述したようにあくまでも希望価格なので、実際の取引は一般的に売り出し価格よりも低い価格になります。

【査定価格】

仲介業者では、土地の価格を提供するサービスを行っているので、仲介業者の視点での価格を調べられます。

多くの場合、査定自体は無料で、査定をしたからといって契約を結ぶ必要もないので、安心して利用できます。

土地の「公示地価」が分かれば資産価値が分かる

「資産価値を知るという視点」から、評価額を出したものが「公示地価」です。

毎年1回、1月1日に国土交通省が正常な価格を判定し、3月下旬に公示地価として1m²あたりの価格を発表しています。

全国の標準地を選定して判定していますが、その年に公表された公示地価は、土地取引価格を適正に行うための指標となっています。

「今年の公示地価の最高額は、××です」などと、その土地と1m²あたりの評価額がニュースで毎年取り上げられていますが、それがこの公示地価です。

公示地価の調べ方は、次の通りです。

【全国地価マップ】

一般財団法人の「資産評価システム研究センター」が、インターネット上で公表しているデータです。

知りたい地域を選択すると、地図上に黒で囲まれた四角と赤い三角が現れます。

この四角い部分が「公示地価の標準地」で、赤い三角が「基準地価の標準地」です。

それぞれをクリックすると、評価額などの情報が提供されます。

しかし、標準地を選定して判定しているので、最新データが公表されておらず、自分の知りたい地域に四角や三角の表示がない場合もあります。

この他にも、先程ご紹介した国土交通省の「土地総合情報システム」の「地価公示・都道府県地価調査」で、公示地価を調べることができます。

「相続税評価額」は土地の相続税を徴収するためのもの

「相続税を徴収する視点」から、評価額を出したものが「相続税評価額」です。

これは、前述したように「路線価」とも呼ばれています。

路線価と聞くと、鉄道の線路の地価をイメージするかもしれませんが、線路に基づいたものではありません。

相続税評価額は、「道路」によって価格が設定されます。

その土地が道路に接している部分、1m²あたりの価格に、土地の面積を掛け、算出します。

これによって算出された価格が、相続税計算時の評価額の基準になり、また贈与税の基準にもなります。

相続税評価額は、公示地価の80%が目安とされています。

相続税評価額の調べ方は、次の通りです。

【全国地価マップ】

前述した「全国地価マップ」で、「相続税路線価等」を選択すれば調べることができます。

地図を開くと、道路に青い両矢印が表示されます。

その矢印には路線価が千円単位で表示され、借地権割合を表すアルファベットが書かれています。

路線価が設定された道路に接する土地は、相続税路線価×土地面積×80%で算出できます。

また、国税庁のサイトにある「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を利用しても良いでしょう。

もうひとつある「税金徴収」のための土地の評価額の調べ方

もうひとつ「税金を徴収する視点」から、評価額を出すものがあります。

それが、土地に掛かる税金の計算の基礎となる「固定資産税評価額」です。

土地に掛かる税金には、「固定資産税」をはじめ、「都市計画税」「不動産取得税」「登録免許税」などがあり、3年ごとに1月1日時点で価格が更新されます。

固定資産税評価額は、公示地価の70%が目安とされています。

固定資産税評価額の調べ方は、次の通りです。

【課税明細書】

固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書を見ると、その土地の評価額が載っています。

通常、価格の欄に記載されているので、チェックしてください。

【固定資産課税台帳】

固定資産は、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」によって評価されます。

その評価に基づき、各市町村長が価格を決め、固定資産の所有者や価格などを固定資産税台帳に登録することになります。

この固定資産税台帳は、それぞれの地域の役所で閲覧できます。

閲覧する場合は、各自治体の申請書に必要事項を記入し、本人を確認する書類、閲覧手数料と一緒に申請します。

【固定資産評価証明書】

固定資産税台帳を閲覧するのではなく、「固定資産評価証明書」を取寄せることで内容を確認することもできます。

その土地のある役所に申請書と本人を確認する書類、手数料と一緒に申請します。

郵送の場合は、手数料は定額小為替とし、返信用封筒を同封します。

「一物五価」のプラスワン「基準地価」の調べ方

これまで、「一物四価」に基づいて、その土地の評価額の調べ方についてご紹介してきました。

最後に「一物五価」とした場合の「基準地価」の調べ方について見ていきましょう。

基準地価とは、毎年1月1日に国が地価を評価し、3月下旬に公表する公示地価と違い、毎年7月1日に都道府県が地価を評価し、9月頃に公表するものです。

国の公示地価を、地域の状況に沿って補完するもので、「都道府県価格調査」とも言われています。

公示地価と基準地価は、評価時期が半年違うことから、1年の間に地価に動きがあった場合でも、この2つの金額を見ることで大体の動きが分かるようになっています。

基準地価の調べ方は、前述した国土交通省の「土地総合情報システムサイト」または「都道府県地価調査」で調べることができます。

土地の評価額の調べ方は視点によって違う

ひとつの土地であっても、視点によってその評価額は変わってきます。

土地は、ひとつとして同じものはありません。

そのため、価格をつけることが難しいとされています。

実際の取引で使われる「実勢価格」の他に、資産として土地を見た場合や、税金の徴収という視点で見た場合では、評価額が変わってくるのは興味深いことですね。

今回の記事を参考に、自分の目的に合わせて評価額を調べてみてください。