郊外の地域においては、農地である土地に家を建てるというケースは少なくないでしょう。
しかし、そのまま農地に家を建てることはできませんので、農地転用の手続きが必要になります。
また、家を建てるには大きすぎる土地の場合などには、分筆の必要性もでてくることでしょう。
では、それらの手続きの流れを見ていきましょう。
農地転用しなければ家を建てることはできない
家を新築する場所として、農地に家を建てようと考える方も多いのではないでしょうか。
都心でない地域で家を新築する際には、所有している田畑や実家の隣の空いている農地などに家を建てるというような状況は多々あるかと思います。
しかし、家を建てようとしている土地が農地である場合には、そのまま家を建てることはできません。
土地はそれぞれ「地目」と呼ばれる、土地の用途が決められているからです。
家を建てようと考えている土地の地目が農地であった場合には、農地転用をし、地目を宅地に変更しなければなりません。
ただし、農地転用にはいくつかの決まりがあり、自由に宅地にすることはできません。
また、農地転用の際には、分筆をしなければならない場合もあります。
分筆とは、1筆の土地をいくつかに分けて、別の土地として登記することです。
一つの土地の地目は一つのみにしなければならないので、1筆の農地の一部分のみを宅地にするということはできません。
そのため、農地の一部分に家を建てたい場合は、その部分を分筆する必要があります。
また、農地転用には面積の上限があり、1筆が広すぎる農地の場合にも宅地にしたい部分を分筆する必要があります。
では、農地転用し家を建てる流れを見ていきましょう。
分筆の前に!農地転用の流れは土地の状況によって変わる
農地転用して家を建てる場合、のちに分筆する必要があるかもしれません。
しかし、手続きの流れとして最初に行わなければならないのは、家を建てようとしている土地が「市街化区域」なのか「市街化調整区域」なのかを調べることです。
これらの区分は、都市計画法によって定められています。
都市計画法とは、インフラ整備などの理由から、家を建てられるエリアを政府が指定している法律です。
この法律によって、土地はいくつかの区域に分かれています。
「市街化区域」は原則として建物を建てられる区域、「市街化調整区域」は原則として建物を建てられない区域となっています。
もし、家を建てようとしている土地が市街化調整区域であった場合には、そもそも建物を建てることができませんので、区域の確認は一番最初にしておくべきことです。
ただし、市街化調整区域であっても、許可が下りれば建物を建てることができます。
また、家を建てようとしている人が農家である場合には、市街化調整区域でも家を建てられます。
農地転用の次の流れは「青地」か「白地」かを確認
農地転用して家を建てる手続きの流れとして、市街化区域か市街化調整区域の確認が最初に必要とお伝えしました。
さらに、農地は一般的に「青地」と「白地」と呼ばれる区分に分かれていますので、その確認も必要です。
市街化調整区域のうち、特に農業に特化させていく地域として「農業振興地域」があります。
この地域は、農家であれば家を建てることができる区域です。
しかし、農業振興地域はさらに「青地」と「白地」に分かれており、「青地」の場合は農家であっても家を建てることができません。
青地とは「農用地区域」のことで、市町村がその区域を決めています。
青地は農地としてかなり特化された場所であり、農家の人であっても青地に家を建てることができません。
ただし、青地にも種類があり、申請をすることで白地にすることができる場合もあります。
一方、白地は「農用地区域以外」のエリアを指します。
白地であれば、市街化調整区域と同じように、農家の場合は家を建てることができますので、家を建てるための申請ができます。
このように、農地に家を建てる際の流れとして、最初に家を建てたい土地がどのような区域に指定されているのかを確認することが必要です。
特に農家でない場合には、この時点で希望の場所に家を建てられない場合があることも頭に入れておきましょう。
では、ここからは希望の農地に家が建てられることが分かった後の流れを見ていきましょう。
分筆が必要になる場合には、どのような条件があるのでしょうか。
分筆とはどのようなものか
農地転用をして家を建てる場合、分筆が必要になる流れの場合もあります。
まず、そもそも分筆とはどのようなものであるのか見ていきましょう。
分筆とは、一つの土地をいくつかに分け、別の土地として登記することです。
土地は1筆、2筆と数えますが、1筆の土地を2筆以上の土地として新に登記することが分筆です。
分筆する目的には、以下のようなものが主な理由として挙げられます。
・複数人の権利関係を登記するため
1筆の土地の中で、異なった所有者の登記をすることはできません。
相続などで土地の所有者が複数人いる場合や、共有している土地を単独で所有するようにするためには、分筆をする必要があります。
・複数の地目を登記するため
1筆の土地の中で、異なった地目の登記をすることはできません。
農地転用して家を建てる場合もこれに当たりますが、1筆の土地のなかに別の用途で使いたい部分がある場合には、その部分を分筆します。
そうすることで別の土地として地目を変えることができ、それぞれ別の用途で土地を使うことができます。
・土地の評価額を下げるため
土地は、道路に面しているか否かでその評価額に差がでます。
1筆の土地を、道路に面している土地と面していない土地とに分筆することによって、道路に面していない土地の評価額を下げることができる場合もあります。
評価額が下がることで、固定資産税や相続税なども安くなるのです。
分筆をしなければならない場合の流れ
農地転用して家を建てる場合には、分筆が必要になる場合もあります。
その際の手続きの流れはどのようになるのでしょうか。
まずは、先述しているように、家を建てようとしている土地がどの区域に属しているかを確認し、青地であった場合には農用地からの除外の許可を申請します、
青地の場合は許可が下りたら、次の申請に進みます。
次に、土地の境界の確定と、必要な場合は分筆を行います。
市街化区域の場合には、大体の敷地図があれば大丈夫ですが、市街化調整区域の場合には、境界の確定をきちんと行わなければなりません。
また、家を建てる際の敷地は適当に決めて良いものではなく、要件を満たしていない場合には要件に合うように分筆しなければなりません。
要件としては以下のようなものがあります。
・最低敷地面積
市町村によって最低敷地面積に違いはありますが、200m²や300m²などと規定があります。
・最高敷地面積
こちらも市町村によって違いはありますが、おおよそ農家の場合は1000m²以下、農家でない場合は500m²という規定があります。
・接道
建築基準法により、敷地が道路と面していなければならないと決められています。
以上のような要件を満たせていない土地の場合には、分筆を行い家を建てられるようにします。
分筆後の流れは?
要件を満たせていない土地の場合には、各市町村が定める要件に合うよう分筆を行わなければなりませんでした。
そして、分筆をする頃までには家の設計図を用意しておくと、その後の手続きの流れがスムーズになります。
その後の申請の際に、確定的な建物の図面が必要になるためです。
分筆が済んだ後は、「開発行為許可申請」と「農地法5条許可申請」を行います。
開発行為許可申請は、その土地に建物を建てる許可を取る申請になります。
子供が実家の農地に新居を建てる場合などには、親の居住実績や、親との関係などが見られています。
農地法5条許可申請は農業委員会に精査されるもので、そこに建物を建てる必要性があるかということや、計画性なども見られます。
この2つの申請は、お互いに確認され合う一体的な申請となります。
そのため、申請のタイミングの少々のズレはあっても大丈夫ですが、ほぼ同時に申請するようにしましょう。
これらの許可が下りることで、いよいよ家の施工となります。
以上が農地転用し、家を建て始めるまでの流れです。
農地転用には手間がかかる
農地転用し家を建てるまでの手続きの流れを見てきました。
農地は農地法によって守られているため、簡単には家を建てることができません。
そのため、なんとなくの計画では農地転用の許可が下りないこともあるでしょう。
また、区域によっては手続きが複雑になる場合があり、その際には専門家に依頼することも必要でしょう。