一生で最も高い買い物であるマイホームにを新築し欠陥が見つかった場合、どうしたら良いのでしょうか。
そんな時に消費者を守ってくれるのが、瑕疵担保責任や保証などの制度です。
しかし、その違いを把握できている人は決して多いとは言えません。
残念ながら世の中知らないと損をしてしまうことが多いです。
しっかり確認してもしもの時に備えるようにしましょう!
瑕疵担保責任と保証の具体的な違いは?
瑕疵担保責任と保証は「瑕疵が生じた時に消費者を守ってくれる」という点においては同じです。
しかし、その内容や範囲、期間において大きな違いがあります。
そもそも瑕疵とは「不動産の引き渡しが行われたものの、引き渡された不動産に約束通りの性能や品質が備わっておらず欠陥があること」を指します。
瑕疵担保責任は知っていた場合のみならず、知らなかった瑕疵についても責任を負わなければなりません。
民法第566条の規定によれば、瑕疵担保責任は無過失責任だと定められています。
一方保証は、売主が独自で不具合の補修を無償で行うアフターサービスのことを指しています。
保証は売主が独自で行うサービスなので、保証内容は売主によってバラつきがあり違いがあります。
売主が一般個人の場合、保証を受けられる可能性は極めて低いでしょう。
売主が業者の場合でも、その売主の会社が倒産してしまうと保証契約自体が消滅してしまい、請求できなくなるケースも考えられます。
瑕疵担保責任は法的責任ですが、保証は約定責任という大きな違いがあることを把握しておきましょう。
保証を受けられる期間にも違いが!
瑕疵担保責任と保証では受けられる期間についても違いがあります。
ハウスメーカーや工務店などの住宅販売会社が自ら売主となって新築住宅を販売した時には、引き渡しから10年間瑕疵担保責任を負わなければならないと定められています。
特約で10年以上とすることは出来ますが、10年未満は出来ません。
これは、2009年10月より施行された住宅瑕疵担保履行法によるものです。
住宅瑕疵担保責任保険に加入するのは住宅販売業者であり、買主である消費者が支払う必要はありません。
さらに宅地建物取引行法には、土地や建物の引き渡しから2年間は売主が瑕疵担保責任を負う旨が定められています。
この定めにより瑕疵の事実を知ってから1年間、または引き渡しから最低でも2年間は売主が瑕疵担保責任を負うこととなります。
一方で保証は売主である住宅販売業者、宅建業者独自のサービスなので、期間の定めについて決まりはありません。
引き渡しから1年であったり、5年であったり、10年であったりと会社によって違いが出てくるでしょう。
瑕疵担保責任と保証では対象とされる範囲も変わる?
さらに瑕疵担保責任と保証の違いは対象となる範囲にも及びます。
一般社団法人不動産流通経営協会によると、瑕疵として認められる範囲は下記のように定められています。
【建物】
雨漏り、建物構造上主要な部位の腐蝕、給排水設備の故障、シロアリによる被害
【土地】
軟弱地盤、不同沈下、土壌汚染、地中埋設物
瑕疵担保責任では内装や外装、設備については保証対象外となっていますので注意しましょう。
一方で保証の範囲には決まりがありません。
瑕疵担保責任とは違い、保証はあくまでもサービスであるので売主によって範囲も変わってきます。
そもそも一般個人が売主となる中古売買においては、ほとんどの場合保証が受けられないでしょう。
一般個人で瑕疵を保証する財力があれば話は別ですが、大抵は保証どころか瑕疵担保責任を負わない旨の特約が売買契約書につけられています。
瑕疵担保責任と保証には保証方法にも違いがある
期間や範囲だけでなく、瑕疵担保責任と保証には保証方法にも違いがあります。
民法第566条によると瑕疵担保責任は
・売買の目的物に瑕疵があり、買主が瑕疵を知らず、かつ目的を達成出来ない場合は契約を解除することが出来る旨
・契約解除が出来ない場合には損害賠償が出来る旨
が定められています。
これを見て分かる通り、瑕疵担保責任で請求出来るのは損害賠償と契約解除のみです。
欠陥部分の修理を求めることは出来ません。
しかも現在の民法では、契約解除が認められているのは、土地についてのみとなります。
建物やその他の工作物については、どんなに瑕疵が重大で目的が達成されない場合においても契約解除をすることは出来なくなっています。
対して保証は一定期間、一定の部位について無償で修理することを約束したサービスです。
買主は期間内に瑕疵を発見したら売主に対して補修請求することが出来ますが、損害賠償や契約解除を請求することは出来ないでしょう。
瑕疵担保責任とは違い、アフターサービスである保証ではどんなに重要な瑕疵についても「修理してくれ」と言う他ないのです。
瑕疵担保責任やアフターサービス以外の保証が受けられることも!
瑕疵担保責任やアフターサービスが受けられればそれが一番良いのですが、対象部位や内容によっては受けられないことも出てくるでしょう。
そんな時は諦めるしかないのでしょうか?
不動産は高い買い物となりますので、そう簡単に諦められるものではありません。
瑕疵担保責任やアフターサービス以外にも保証が受けられる制度があります。
例えば「地盤保証制度」です。
地盤保証制度では建築工事を始める前にあらかじめ地盤調査を行い、トラブルなどが起きた時には保証会社が費用を負担してくれます。
一般個人が売主となる売買において有効な制度と言えるでしょう。
他にも「完成保証制度」というものもあります。
この保証は請負契約を結んだ建築業者が工事の途中で倒産したような場合でも、他の業者が工事を引き継いで建物を完成させてくれるため安心です。
瑕疵担保責任と保証の違いをしっかりと理解した上で、その他の制度も検討してみて下さい。
民法改正で瑕疵担保責任が変わる!?
2017年5月に改正民法が成立しました。
2020年施行の予定ですが、この改正により現行の瑕疵担保責任は大きく変更となります。
瑕疵担保責任という表現は消え「契約不適合担保責任」に名称が変更されます。
もちろん変更になるのは名称だけではありません。
これまでの瑕疵担保責任では請求出来るのは「損害賠償」と「契約の解除」のみでした。
欠陥部分の補修請求や代金の減額請求については保証対象外です。
しかし改正により特定物、不特定物に関わらず、「追完請求」と「代金減額請求」が認められるように決定しています。
これまでの瑕疵担保責任とは違い、目的物に瑕疵があった場合、契約が完了していないものとみなされるので、買主が要求できる権利が大幅に広まります。
さらに現行の瑕疵担保責任では「瑕疵を知らなかったと同時に知らないことに過失がなかった場合」にのみ契約解除が認められていました。
民法改正では「知らないことに過失がない」という要件は削除されていますので、これまでと違い契約の解除も用意となるでしょう。
瑕疵担保責任と保証は別物!
瑕疵担保責任と保証に違いがないと思い込んでいる方も多いのですが、実際には全然違う別物です。
保証については売主によってかなり内容が変わってきますので、保証期間や保証範囲、保証方法についてしっかりと確認しておきましょう。
民法改正により瑕疵担保責任も大きく変更されることが決まっていますので、契約書の内容には注意してください。