現在、「畑や田んぼとなっている農地に家を建てたい」と考えている方もいらっしゃることでしょう。
このように農地として使っていた土地を、宅地などの農業以外の目的で使用する場合には、「農地転用」の申請をしなくてはいけません。
この記事では、農地転用の種類と手続き、宅地に転用するための費用について解説していきます。
農地転用ってなに?
農地転用とは、農地として使われていた土地を別の目的で利用することができるようにするための手続きのことを言います。
例えば、農地であった土地に家やアパートなどを建てたい場合には、その土地を「農地」から「宅地」に変えなくてはいけません。
そのほか、店舗、道路、駐車場などとして利用したい場合も同様です。
このような農地転用は、各自治体の農業委員会が窓口となっています。
申請をしてから許可が下りるまでの期間は、およそ6週間ほどと把握しておきましょう。
申請が遅れるとその後の建設計画にも影響を与えてしまうかもしれないので、余裕を持ったスケジュールを組むようにすることが大切です。
農業委員会では、申請内容や必要書類などの相談にも応じてくれますが、農地転用の手続きは複雑であり必要な書類も多くあります。
そのため、基本的には行政書士にお願いすることになるでしょう。
その場合の費用については、後ほどお話しします。
農地から宅地へ!農地転用したい土地はどんな区域?
農地から宅地へ転用をする場合、農地のある区域によってさまざまな規制がされていて、申請の仕方も変わってきます。
土地計画法によって、一般的に農地は以下の3つに分けられているので、転用予定の農地がどの区域にあるか確認してみましょう。
・市街化区域
・市街化調整区域
・農用地区域(青地農地)
まず大きなポイントとなるのが、転用予定の農地が「市街化区域」に入っているかどうかです。
《市街化区域》とは、既に市街地となっている区域であったり、優先的に市街化していく区域を指します。
そのため、比較的簡単な手続きを踏むことになるはずです。
また、《市街化調整区域》は、市街地開発をせず、環境を維持していこうという区域になるため、家を建てることが難しいエリアになります。
転用をするためには申請だけでは不十分であり、許可も必要となります。
さらに、《農用地区域》は、農地以外の利用を制限している区域となるため、基本的には家を建てることができません。
しかし、除外申請を行うことで家を建てることが可能になります。
ただし、お住まいの地域により条件が異なるため、詳細については役所などに問い合わせて確認するようにしましょう。
次項からは、農地転用の費用について詳しくお伝えしていきます。
宅地から農地へするには!?許可・届出に掛かる費用
さて、ここからは農地転用に掛かる費用についてお話ししていきます。
農地から宅地に転用するには、多くの費用が掛かります。
この項では、「転用許可・届出の費用」に注目して、必要な書類と併せて掛かる費用の目安を見ていきましょう。
■法人の登記事項証明書(※法人の場合のみ):交付手数料1通600円
■土地の登記事項証明書:交付手数料1通600円
■土地の位置を示す地図:「都市計画図」や「農業新興地域区域図」の申請手数料450円
■申請に係る土地に設置しようとする建物の位置を明らかにした図面(※依頼する場合のみ):3,000円
■残高証明書:「残高証明書」の発行手数料800円
■融資証明書(※必要な場合のみ):「融資証明書」の発行手数料7,000円
■土地改良区の意見書:交付手数料1件あたり2,000円
■土地改良区域除外決済金:100円から500円(1平方メートルあたり)
■土地改良手続報酬(※行政書士に依頼する場合のみ):10,000円
■転用手続き報酬(※行政書士に依頼する場合のみ):35,000円(市街化区域内の場合)
これらのほかに、各市町村で提出しなければならない書類の発行手数料として、1万円程度はみておいたほうが良いでしょう。
農地転用の許可・届出を行政書士に依頼する場合の費用は?
前項の後半で、行政書士に依頼する場合の費用について記載しましたが、そのことについて詳しくお話しします。
土地改良手続報酬とは、正確には「土地改良区申請(地区除外申請)」と言います。
行政書士事務所によっては数千円ということもありますが、諸費用が追加される場合もあるため、結果として10,000円程度になるケースが多いです。
また、転用手続報酬として、前項では「市街化区域内」の場合を例に挙げました。
おおよその金額として35,000円と記載しましたが、30,000円~40,000円と把握しておきましょう。
また、「市街化調整区域」の場合は、さらに費用がかさみ90,000~10,000円が相場になります。
農地から宅地へと転用する土地の広さや事案によっても変わってくるので一概には言い切れませんが、おおよその目安として参考にしてください。
「農地転用を行政書士に依頼したいけれど、なるべく節約したい」という方は、複数の事務所で見積を取る方法もあります。
農地から宅地にするために必要な工事!掛かる費用はどのくらい?
次に、農地転用をするにあたり、工事に掛かる費用に注目してみましょう。
農地であった土地を宅地にするには、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。
ここでも、土地の状況や市町村の定めるルール、依頼する土木業者などによって費用は異なるので、一概に言うことはできません。
まずは、市町村の都市計画課や土木事務所などに問い合わせをして、土木業者や建築業者に見積を依頼してみましょう。
また、農地であった土地は、道路の高さより低くなっている場合も多いです。
このような場合、宅地として利用するには、道路と同じくらいの高さにしなくてはいけません。
そのために、「土留め」をして「盛土」をする必要があり、そちらの費用も掛かってきます。
また、地域ごとに自治体が算出しているおおよその目安というものがあるので、参考にしてみると良いでしょう。
ここでは、東京都が出している平成30年度の「宅地造成費の金額表」のデータを取り挙げてご紹介します。
◆整地費(整地を必要とする面積1平方メートル当たり):700円
◆伐採・抜根費(伐採・抜根を必要とする面積1平方メートル当たり):900円
◆地盤改良費(地盤改良を必要とする面積1平方メートル当たり):1,700円
◆土盛費:ほかから土砂を搬入して土盛りを必要とする場合の土盛り体積1立方メートル当たり:6,200円
◆土止費:土止めを必要とする場合の擁壁の面積1平方メートル当たり:64,900円
宅地転用をした後に掛かる費用とは?
農地から宅地へと無事に転用した後でも、まだ費用は掛かります。
最後に、宅地転用後に掛かる費用についてお話しします。
「農地」であった土地を「宅地」へと転用した際には、登記簿上の地目を変更しなくてはいけません。
この手続きは、転用許可申請の手続きに比べると難易度は低いので、ご自身で登記申請をすれば費用は数百円程度で済みます。
もし、土地家屋調査士など専門の方に依頼をする場合は、依頼料が数万円発生します。
このほか、固定資産税のことも忘れてはいけません。
農地であった土地の固定資産税は優遇されているため比較的安価であったかもしれませんが、宅地に転用すると税額がかなり上がります。
このように、農地転用の際は、申請や手続きの費用、工事費、転用後の費用が多額に掛かります。
行政書士に依頼する場合には、全体でどのくらいの費用が掛かるのか、最初に確認してから依頼するようにしましょう。
農地転用は申請・手続きが難しい!
農地であった土地を宅地へと変えるには、多くの書類が必要であり、多額の費用が掛かることが分かりました。
申請や手続きをご自身で行うことも可能ですが、かなり複雑で難しい内容となっています。
スムーズに申請を行いたい方や時間のない方は、行政書士事務所に依頼すると良いでしょう。
その際は、費用についてもあらかじめどのくらい掛かるのか聞いておくことで、後々慌てたり、トラブルになったりすることを避けられるでしょう。