庭に物置を設置しようとして、「登記が必要になる」ということが分かり、驚いた方もいらっしゃると思います。
また、相続や土地建物の売買時に、車庫や倉庫などを登記するように言われて戸惑ったというケースもあるでしょう。
小さな物置のような構造物だとしても、不動産登記法の建物とみなされて登記が必要になる可能性があります。
登記が必要か判断するためには、3つのポイントを知っておくと役立ちますので参考にしてください。
「物置」と「倉庫」の違い!
まず、言葉の意味から調べてみましょう。
物置は、「日常生活で必要となる雑貨や器具などを収納するスペースとして使う部屋、小屋」。
倉庫は、「物の保管や貯蔵を目的とした建物や蔵」とされています。
「小屋」と「蔵」という言葉のニュアンスから、物置は比較的小さく、蔵は大きい物だというイメージを持ちやすいかもしれません。
次に法的な視点で調べると、不動産登記規則第113条に「倉庫」という言葉があります。
居宅や店舗、寄宿舎、共同住宅、工場、料理店、変電所などの12種類の建物と並べて書かれています。
一方、物置は不動産登記規則ではなく、不動産登記事務取扱手続準則の25種類の建物のひとつです。
講堂、校舎、病院、火葬場、給油所などと並んで書かれています。
つまり、物置なら不動産登記規則を守る必要性はありません。
明確な違いについて法律で述べられているわけではありませんが、異なる法律において分類されているということは分かっていただけたでしょうか。
最後に、「建築確認」においての倉庫・物置の違いに触れておきましょう。
建築確認では、物置を建物の従たる性質の物としてとらえ、単独で確認申請する時には、小さい物でも倉庫として手続きすることが多い傾向があります。
また、営業目的で使うのであれば小さくても倉庫ですので、貸倉庫やレンタル倉庫は物置として申請できません。
物置なのに登記が必要?確認するための3つのポイント
登記されていない構造物があり、土地の売買時や融資の際に「そこも登記してください」と言われることがあります。
不動産登記法からも分かるように、建物が新築されたり増築や減失されることがあると、1ヶ月以内に登記申請を行う必要があります。
「物置や倉庫も登記しなければならないのか」と疑問に思われる場合には、下記の3つのチェック項目を確認する必要があります。
・定着性
・外気分断性
・用途性
※永続性
定着性は「簡単には動かせない物」で、外気分断性とは屋根・壁(床から天井までの高さが1.5m以上)だということです。
そして用途性とは、目的とする用途が明確にあり、それに役立つ状態だということです。
基礎から作ったミニチュアハウスは、かわいらしい建物ではありますが、当然ながら人が住むことはできませんので、居宅として登記することはできませんね。
ミニチュアハウスを登記するということは考えないかと思いますが、用途性はこのような状況を判断するために必要なポイントです。
また、永続性とは、それ自体が不動産として取引対象となるということになります。
これについては絶対的な条件ではなく、一つの考えとして念頭に置いておくものです。
物置か倉庫か迷う!プレハブやガスボンベ室など
登記が必要な建物の特徴が分かり、不動産登記規則と不動産登記事務取扱手続準則で、それぞれ該当する建物について知っていても、いざとなると迷ってしまうようなケースがあります。
物置は小さく、倉庫は大きいというイメージがありますが、前項で挙げた条件に当てはまれば登記する建物になります。
大人一人寝転べば身動きできないような狭い建物だとしても、たとえばガスボンベ室のように、用途性と定着性がある物なら登記することになるでしょう。
プレハブのような簡易的な建物でも、基礎部分がしっかりとしていて、その土地に固定されていれば、ただの物置と見なすことにはなりません。
ブロックの上に置かれているようなプレハブ物置で、営業目的に使用していないなら登記しない場合もあります。
新築時ではなく、後で庭に物置を置きたいと考えている場合には、物置の設置方法(基礎部分)を確認しておくことをおすすめします。
登記が必要?判断が難しいものもある
ここまでは物置と倉庫の違いなどについてお伝えしてきましたが、「不動産登記法で定められている建物」について、さらにくわしくご紹介していきます。
不動産登記法上で建物とみなされるのか、そうでないのか、判断が難しいケースをいくつか挙げてみましょう。
●簡易的なゴルフ練習場
ゴルフの打ちっぱなしで、事務所のような強固な建物がない場合もあります。
ネットや壁だけで設計されていることもあるでしょう。
この場合、外気との分断性、つまり壁がどのくらい広範囲に建てられているかということを確認します。
ゴルフボールが飛んでいってしまうのを防ぐため、3方向に周壁があるような場合には、建物と認定されることもあるようです。
ただし、基本的には登記の対象となるのは事務所などの建物になります。
●本来の用途で使われなくなった建物・乗り物
キャンピングカーが使わなくなって庭で物置のようになっていたり、列車の車両が、遊園地や公園に遊具として置いてあるのを見かけることがあるかもしれません。
こうした物を確認する場合には、「定着性」を確認します。
乗り物に基礎工事をして土地に定着させると、建物として登記が必要になります。
登記については土地家屋調査士に相談!
建物として登記する必要がない物は物置だけではなく、浮船を活用した物、ガスタンク、移動できる切符売場や入場券売場などもあります。
もし、登記が必要か迷うことがあれば、専門的な知識がある土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
土地家屋調査士は、法律をざっと読んだだけでは分からない、事例に基づいた判断をすることができます。
前述しましたが、不動産登記法によると倉庫などの建物が完成してから、1ヶ月以内に正しく登記することが義務となっています。
金融機関からの融資が必要な場合も登記情報が関係してきます。
居宅とは用途の異なる構造物を設置しようと考えているのであれば、専門家に相談して間違いのないように判断されるといいでしょう。
農地の倉庫は要注意!農地法による許可が必要?
最後に、農地に倉庫を建てる場合の登記についてご紹介します。
農地に、小さな物置ではなく大きめの倉庫などを置くことができれば、その上に太陽光パネルを設置することもできますし、農業機などを収納することもできます。
農地に倉庫を設置するためには、原則として農地法の許可申請が必要です。
所有している農地なら、建物建築に必要な面積が200m²未満であれば農地法による許可は不要です。
しかし、それ以上なら許可を受けないといけません。
注意する点としては、200m²が建物の床面積ではないということです。
あくまでも「建築に必要な土地の面積」です。
疑問に思うことがあれば、農業委員会に問い合わせてみることをおすすめします。
各市町村によって規定が違うこともあるので、お住まいの役所のホームページから確認するか、直接行って聞くといいでしょう。
他人の農地を借りて倉庫を建てたいと考えている際にも、農地法に基づく許可が必要になります。
この場合、面積とは関係なく許可申請をすることになります。
農業用の倉庫くらいであれば、地目(登記簿に書かれている土地の用途)の変更はしなくても大丈夫でしょう。
こちらも分からないことがあれば農業委員会に相談することができます。
登記が必要か見分けるポイント
小さな物置でも、「定着性」「外気分断性」「用途性」から確認すると、登記しなければならないこともあります。
簡単には動かせないように、基礎部分からしっかりと設置されていることや、天井や壁があることなどをもとに、登記が必要かそうでないか見分けることができるでしょう。
ケースバイケースになりますので、必要であれば土地家屋調査士に相談してみましょう。