住宅を建てるにあたり、「防火地域」や「準防火地域」という言葉を耳にしたことがありませんか?
これは、家を火災から守るために定められたものであり、これらの地域に家を建てるにはいくつか制限を課せられてしまいます。
仮に、準防火地域に家を建てる場合、木造や鉄骨など外壁や柱の防火構造をよく確認しておく必要があるでしょう。
ここでは、防火地域や準防火地域は一体どんな場所なのかについて解説し、それに伴う規制についてご紹介していきます。
防火地域とは一体どんな地域のこと?
各都道府県は、法令によって「都市計画」を定めています。
都市計画は、都市を安全に適正に発展させようとする方法や手段のことです。
そして、都市計画において定められた防火に関するものでは、「防火地域」や「準防火地域」などがあります。
これは、火災の危険を防除するために定められた地域のことを指します。
つまり、火災の被害が起きやすい、また広がりやすい地域は、あらかじめ火災を予防しなければならない処置を取る必要があるとして、定められています。
では、まず防火地域について簡単に説明していきます。
●防火地域とは
防火地域が指定される場所の一つは、建物の密集度が高い地域です。
主に、都市の中心部や駅前、交通量が多い市街地の一定の範囲で指定されています。
ほかにも、消防車や救急車など緊急車両が通る道路沿いなども指定されています。
防火地域には、延べ面積が100平方メートル以下、2階までの建物であれば「準耐火建築物」を満たすことで建てることができます。
しかし、100平方メートル以上の建物は全て「耐火建築物」にする必要があります。
そして、今回取り上げる鉄骨造はそのままですと、耐火建築物にあてはまりません。
外壁や柱などに「耐火被覆(たいかひふく)」を施すことで耐火建築物とみなされ、建築が可能となります。
耐火被覆に関しては、のちに詳しくご説明していきますが、続いては準防火地域について見ていきましょう。
準防火地域について知ろう!
続いて、準防火地域について解説していきます。
●準防火地域
準防火地域とは、一番厳しい制限が課せられている「防火地域」の外側に指定される地域のことです。
防火地域よりも制限が緩いものの、同じように建物の外壁や窓などのあらゆる規制が存在します。
そして、準防火地域に家を建てる際は、その建物の延べ面積によっても規制が異なります。
その規制は、次のように定められています。
・1500平方メートルを超えるもの、あるいは4階建てのものに関しては、鉄骨造でも「耐火建築物」であること。
・延べ面積が1500平方メートル以下、500平方メートルを超えるものに関しては、「耐火建築物」または「準耐火建築物」としなければならない。
・3階建て以下で、500平方メートル以下の家の場合は規制は無いとしているが、場合によっては外壁や軒裏に規制がかかる場合もある。
外壁や柱が鉄骨の住宅は熱に弱い!?
今回取り上げる鉄骨造ですが、鉄は熱に強いと思われている方も多いのではないでしょうか。
実は鉄は熱に弱く、ある一定の温度を超えると著しく強度が低下すると言われています。
強度が低下すると、鉄は変形しやすくなってしまいます。
すると、建物を保つことができず、一気に倒壊してしまう恐れが考えられるのです。
鉄には、このような特徴があることから、木造よりも強度が低いとも言われることがあります。
木は火で燃えてしまいますが、表面から燃えていき炭化することで燃えづらくなるという特徴があります。
加えて、内部まで燃え尽きてしまうのには時間がかかるため、鉄よりも強いといった説があるようです。
このように鉄は、一定の温度を超えると急激に強度が低下してしまうことから、防火地域および準防火地域で建築する場合は、外壁や柱に「耐火被覆」を行い耐火性能を上げる必要があります。
外壁が鉄骨でも安心!耐火建築物に必要な「耐火被覆」とは?
ここまでご説明したように、防火地域や準防火地域など、指定された地域や延べ面積によってそれぞれ求められる防火性能は異なります。
ここでは、耐火建築物や準耐火建築物の条件を満たすために必要な、「耐火被覆(たいかひふく)」について詳しくご紹介していきましょう。
●耐火被覆
耐火被覆とは、建物の主要部分となる外壁や柱を高い断熱性を持つ素材で覆うことで、火災から倒壊や燃え広がりを防いでくれる効果があります。
耐火被覆の材料となるものは、「ロックウール」や「けい酸カルシウム板」などがあります。
施工方法としては吹き付け工法や成形板張り工法、耐火塗料工法などがあり、耐火被覆を行うことで防火性を高めることができます。
準防火地域などに建設する予定がある場合、建築物には耐火性能が求められます。
熱に弱いとされる鉄骨も、耐火被覆を行うことで、最も防火性の高い「耐火建築物」として認められるようになります。
外壁などに耐火被覆した鉄骨造なら準防火地域でも建築可能!
外壁や柱に耐火被覆をした「鉄骨造」は耐火構造となり、耐火建築物に当てはまります。
そのため、準防火地域だけでなく防火地域でも建物を建てることが可能となります。
ただし、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)に耐火被覆をするだけでは、耐火構造とはみなされません。
上記の主要構造部に耐火被覆することに加え、防火窓や防火ドア、防火ダンパーつきの換気扇にすることなど、開口部も防火設備をすることで耐火建築物とみなされます。
また、耐火建築物に当てはまるものとしては、鉄骨造のほかに「鉄筋コンクリート造」や「れんが造」などがあります。
これらの建設方法であれば、鉄骨造のように耐火被覆を行う必要はないとされています。
実際、火災によって建物が倒壊してしまうことは少なくありません。
耐火建築物であることで、火災が発生した際でも被害を最小限に抑え、建物の倒壊や変形を防ぐことができるのです。
防火地域や準防火地域を調べる方法は?
ここまで、防火地域や準防火地域についての規約や、鉄骨造についてご紹介しました。
最後に、家を建てようとしている土地が防火地域や準防火地域かどうかを調べる方法をお伝えしていきます。
防火地域や準防火地域に家を建てる場合、建築材料の制限やコストがかかるといった問題が発生する可能性があります。
また、防火性能を満たすことができる建築会社や職人にも限りが出ることが予想されるかもしれません。
住宅を建てるにあたり、大体の方が予算を組むと思われますが、まずは防火地域または準防火地域であるか調べておく必要があると言えます。
ではどうやって調べれば良いのでしょうか。
まずは、建築会社や不動産会社に問い合わせる方法があります。
また、ご自分で役所に出向き調べるといった方法もあります。
ほかにも、インターネットでも防火地域や準防火地域を調べることができます。
防火地域や準防火地域で家を建てるとなると、費用や家のデザイン、間取りも思うようにできない可能性があります。
窓や外壁、ドアなどに不燃材を使用することになりますから、デザインにも限りが出てしまいますし、防火シャッターなどは家のデザインに影響してしまうこともあるかもしれません。
しかし、防火地域や準防火地域で家を建てることは、このようなデメリットだけではありません。
防火性の高い建築物を建てることは、火災保険が安く済むというメリットがあります。
「その土地に家を建てる」と決めた後で後悔しないためにも、しっかりと下調べをしておきましょう。
家の建築予定地が防火地域か準防火地域か確認しておこう!
防火地域や準防火地域の場合、住宅の費用やデザインなどにも影響が出てくる可能性が大きいと言われています。
そのため、防火地域や準防火地域に家を建てることにデメリットに感じてしまう方も多いでしょう。
しかし、防火性の高い建築物を建てることは、火災保険が安く済むというメリットもあります。
いずれの場合も、土地を購入する前は、土地の利便性や環境、金額に加え防火地域や準防火地域でであるかどうかも調べておくと良いでしょう。