防火地域や準防火地域に建物を建てる場合は、耐火性についての基準を満たさなければなりません。
ガラスやサッシなどの窓まわりの材質も、使うことが認められるものと、そうでないものがあります。
コストを抑えようと、防火性の低い窓ガラスにはシャッターでカバーする場合もあるでしょう。
ここでは、「準防火地域においての材質の制限はどのような内容なのか」、「いつごろから厳しくなったのか」などのことをお伝えしていきます。
準防火地域の建物には細かい制限が!
準防火地域に建物を建てることになったら、さまざまな制限があることを知っておく必要があります。
窓についても細かな条件があり、防火用のサッシの使用やシャッターの取り付けなどを行って安全性を高めなければいけません。
都市計画法によると、準防火地域以外にも防火地域という場所について定められています。
どちらにも厳しい制限があり、悩んでいる方も多いです。
建物がたくさん建ち並んでいる都市部においては、一軒の家が火事になると、周囲への深刻な被害が懸念されます。
そのため、住宅を建てる際には、火が燃え広がらないような工夫をすることが求められます。
近くの建物で火災が起きた場合に、避難するまでの時間をかせぐことができ、炎をくい止めるための制度が都市計画法で取り決められているのです。
使ってもよい材質に制限があるので、こだわり抜いたマイホームを実現したいと考えている方は妥協しなければいけないこともあるかもしれません。
今回は、その制限のひとつである「窓」についてお話ししていきます。
準防火地域のサッシ・ガラス・シャッター
準防火地域ゆえの制限のひとつとして、窓に使える素材が限られるということが挙げられます。
高級感があったり、あたたかみを感じさせる木調の窓サッシは利用できません。
色や雰囲気が、いまいち好みに合わないものの中から選ばなければならなかったり、対応しているものの値段が高い傾向があるため、サッシ選びで迷う方もいるようです。
また、ガラスも網入りガラスや防火ガラスにするか、防火シャッターを取り付けて、万が一割れた際に被害を最小限に抑える必要があります。
そうしたガラスは比較的高価だったり、「見た目が気に入らない」という考え方から、普通の透明度の高いガラスにして、防火シャッター付きにするケースもあります。
シャッターは、防犯効果やプライバシー保護効果があり、台風などでもガラスを守ることができますし、電動シャッターを選べば開閉が楽になります。
手動シャッターも、メンテナンスコストがかからないといった利点がありますが、寒い時期や雨の日などに窓を開けて開閉するのは面倒で、使わなくなってしまう場合があるようです。
「この窓はよく開け閉めするから電動シャッター、あの窓はあまり使わないから手動シャッター」というように、窓によって電動シャッターと手動シャッターを使い分けるケースもあります。
使えるサッシ・シャッターが少なくて高い?認定不正取得問題とは
ガラス、サッシ、シャッター、いずれにしても、どんな商品でもいいわけではなく、きちんと認定される商品を組み合わせて選ばなければいけません。
ここでは、準防火地域で使われる特別なサッシの種類が少なく、値段が高い理由を考えていきます。
さかのぼること2009年・2010年に、大手製造販売会社で「認定不正取得」が発覚しました。
準防火地域や防火地域で使用してもいい商品として販売されていたサッシが、認定できる基準を満たしていないことが明らかになったのです。
そのため、販売中止になったり、施工済み住宅において改修工事が行われました。
こうした問題があり、準防火地域・防火地域に使われる材質については厳しくチェックされることになります。
2013年末までの期間に使われたものは、基準を満たしていないものでも認められるケースがありましたが、2014年からは商品個別に大臣認定の取得が必要になります。
この時期には、防火認定済みのサッシは少なく、建築会社や工務店も大変な思いをしたようです。
現在(2019年)、いろいろなサッシを調べていくと、木製サッシで防火認定を取得したものもありますし、格子付き防火窓もあり、選択肢は徐々に増えている状況です。
おしゃれなサッシも増えている?シャッターと組み合わせれば普通の窓でもOK
国産の商品で気に入ったものがない場合、輸入サッシを選ぶのもひとつの手です。
しかし、先ほどもお伝えしたように、準防火地域で使用できるサッシの選択肢は増えています。
格子窓だったり、形がおしゃれだったり、断熱性が高いものが販売されています。
また、YKK APの「APW330 防火窓」など、クリアな視界で断熱性の高い防火ガラスもあります。
こちらの商品は国土交通大臣認定設備として認定済みで、過去にはグッドデザイン賞を受賞し、10年保証も付いています。
この他にも、防火にこだわった窓を実現する商品が、各メーカーで開発され続けています。
お値段が高いのが難点ですが、マイホームは一生に一度のお買いものになるケースがほとんどです。
細部までこだわって、満足できる家をつくり上げたいと考えるなら、知識と経験豊富でさまざまな提案をしてくれる建築会社選びがカギになります。
防火認定を取得した窓をすべての場所に使うのではなく、シャッターと組み合わせることによってコストを抑えられる可能性があるので、そうしたことも積極的に相談するといいでしょう。
準防火地域の建物の制限
ここまでは、準防火地域に建てるマイホームのガラスやサッシ、シャッターのことについてお話ししてきました。
準防火地域の制限は、窓まわり以外にもいろいろなことがあります。
たとえば屋根ですが、不燃材料でなければいけません。
太陽光パネルを使うとしても、その下の屋根材には燃えにくい材質を使う必要があります。
外壁や軒裏には耐火時間30分以上の防火構造、換気扇には防火ダンパなど、満たさなければならない基準は数多くあります。
都市計画法によると、準防火地域について「近隣との境界線、道路中心線、同一敷地内の建物延床500m²以下の外壁から1階は3m、2階は5m以内」と定めています。
つまり、隣地との距離感が重要であり、壁や屋根と同様に、今回ご説明した窓周辺の防火機能が大切だということが分かります。
こうした項目は、リフォーム・リノベーションであっても、しっかりと確認が必要ですね。
防火地域・準防火地域・法22条区域
最後に、防火地域と準防火地域についての基本情報をご紹介します。
●防火地域
火災への特別な警戒が求められる地域です。
都心部の駅周辺や繁華街などが挙げられます。
いざというときには消防車や救急車が走りやすいように、幹線道路沿いに建築することも重要だと考えられています。
木造住宅は建てることができませんし、耐火構造については厳しくチェックされます。
防火ガラス、サッシ、シャッターなども、準防火地域と同様に制限があります。
●準防火地域
防火地域の周りの住宅地などが該当することが多く、木造住宅を建てる場合には一定の基準をクリアする必要があります。
●防火地域・準防火地域にあたる地域を調べる方法
自治体の都市計画図を見れば、確認することができます。
インターネットで公開していますので、気になったら検索してみるのもいいでしょう。
上記の2つの地域の他に、法22条区域(建築基準法22条から)という地域もあります。
防火地域や準防火地域の対象とならない木造住宅地などを指しますが、こちらについても都市計画図でチェックできます。
選択肢は増えつつある!理想のマイホームを建てよう
準防火地域では、屋根や外壁、窓まわりに使用できる材質・商品の値段が高かったり、種類が少ないことが悩みどころです。
しかし、窓まわりだけで考えても網入りガラス以外の選択肢は増えつつありますし、国内だけでなく世界の商品に目を向ければ、理想の家に近付けることも夢ではありません。
そうするためにも、柔軟に対応してくれる建設会社やハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。