隣地や道路との境界を仕切る「塀」は、目的・設置環境によって選択していく必要があります。
この記事では、塀やフェンスの種類、目的別の選び方、高さの規定をご紹介しつつ、隣地との境界線上に設置するケースでの注意事項などもお伝えします。
快適な住まいづくりのために、まずは「土地境界確定測量」のお話からしていきましょう。
塀を立てたい!境界があいまいなときはどうする?
塀を立てるときには、仕様やデザイン、高さを決めていくことになりますが、その土地の「境界」はきちんと確定されているでしょうか。
もし境界があいまいになっている場合は、必ず「土地境界確定測量」を行ないましょう。
土地境界確定測量とは、土地の境界を全て確定させることを指します。
外溝工事などによって境界標が紛失していたり、隣接地所有者との見解に相違点があったりするときなどは、こちらの作業を行なっておくと安心です。
また、土地の正しい面積を知りたい場合や、地積更正登記、地図訂正のためにも行なわれます。
境界の認識が不明確なまま、塀やフェンスの設置工事を進めてしまえば、のちのち大きなトラブルにつながることも考えられるでしょう。
実際に、土地境界確定測量を依頼したいときには、近くの「土地家屋調査士」を探してみてください。
土地家屋調査士は、土地の調査、測量、登記の申請手続きなどを専門に扱っています。
作業の流れは、以下の通りです。
①法務局等資料調査→②現地立会い→③境界標設置→④確定図面作成→⑤署名押印
依頼費用にはバラつきがあり、15万円から70万円程度になることが予想されます。
高額な出費となりますが、土地を安全に管理していきたい方は、ぜひともご検討ください。
塀・フェンスの種類について
土地の境界がはっきりと確定しているなら問題ありませんね。
では次に、塀にはどのような種類があるのか、見てみましょう。
代表的なものを挙げてみると、
・タイル張り
・自然石張り
・レンガ積み
・化粧ブロック積み
・コンクリート打放し
・吹付
・生垣
このような種類がありました。
「タイル張り」や「化粧ブロック積み」なら、規則正しく並んだ美しい外観となりますし、「自然石張り」や「レンガ積み」なら、個性を演出できそうです。
そのほか、スタイリッシュな「コンクリート打放し」や、洋風な「吹付」も人気があります。
植物を列植することで目線隠しになる「生垣」も、塀に分類されます。
また近年は、フェンスの種類もバリエーション豊かになってきました。
・アルミ形材フェンス
・アルミ鋳物フェンス
・スチールフェンス
・木粉入り樹脂系フェンス
これらは、デザイン性や素材によって、人に与える印象が大きく変わります。
塀とフェンスの組み合わせで高さを出すことも可能で、きっとあなた好みのパターンが見つかるはずです。
高さは重要!境界に塀を立てる目的を確認
前項では、塀やフェンスの種類を取り上げました。
デザインの好みで選ぶことはできますが、目的や意味を考えることも重要です。
ただ単に土地の境界を区別するだけなら、装飾の凝ったものにする必要性はありませんし、防犯やプライバシーを気にするのであれば、高さや隙間にも気をつかうべきですよね。
ここでは、防犯とプライバシー保護について掘り下げてみましょう。
【防犯対策】
空き巣に狙われやすい家は、死角が多いということをご存知でしょうか。
敷地への侵入を防ぐためには、見晴らしのよさを大切にしましょう。
そうなると、背の高いブロック塀よりも、開放感のあるフェンスがおすすめになります。
上部に忍び返しがついているフェンスを取り入れてもいいですし、フェンス周辺にトゲのある植物を育てて巻きつかせるのも効果的です。
【プライバシー保護対策】
防犯対策よりもプライバシー保護を優先させたいのであれば、高さ1.8メートル程度の塀やフェンスを立てましょう。
しかし、塀を高くしすぎてしまうと、通風や日当たりに難が出てくる可能性がありますから、ルーバータイプのフェンスや目透かしタイプのフェンスで対応してみてください。
高さに決まりはある?ブロック塀を立てるときの制限とは
もしコンクリートのブロック塀を立てるご予定があれば、その高さに制限が出てきます。
建築基準法では、ブロック内に鉄筋が埋め込まれている場合でも、高さ「2.2メートル以下」であることが定められているのです。
また、高さだけでなく厚みにも基準があります。
ブロック塀の高さが2メートル以下の場合は、10~12センチ以上。
ブロック塀の高さが2.2メートル以下の場合は、15センチ以上でなくてはなりません。
そのほか、高さが1.2メートル以上のブロック塀には、「控壁(ひかえかべ)」を垂直に設置する必要があります。
この控壁にも設置基準があり、間隔や長さが定められています。
ブロック塀にはこうした細かい制限がありますが、ここでご紹介したのは敷地内に設置したケースです。
もし隣地との境界線上に塀を立てるのであれば、どのような制限が設けられるのか、次項で詳しくご紹介します。
隣地境界線上に塀を立てるときの高さ制限は?
敷地に接する道路との境界線を「道路境界線」と言いますが、敷地と敷地とを仕切る境界線は「隣地境界線」と言います。
この隣地境界線上に塀を立てることになると、高さは2メートル以下にすることが求められます。
ブロック塀に限らず、フェンスにおいても同様です。
これらは民法のルールを基本としていますが、隣地所有者との話し合いが重要になります。
隣地境界線上に共同で塀を立てると、その所有権は両者にありますから、設備費用や修繕費用もそれぞれが負担するのが自然です。
そのため、トラブルを回避するためにも、両者でよく話し合っておくべきだと言います。
費用に関しては、必ずしも折半にしなくてはならないという決まりはありません。
そのため、どちらかの希望で設置費用が増す場合、負担割合に差が出てくることもあります。
もし当事者同士で話し合いがまとまらないときには、「境界問題相談センター(※地域によって名称は異なる)」へ相談してみるといいでしょう。
土地家屋調査士や弁護士にアドバイスをいただくことが可能です。
隣地境界線上の塀トラブル
最後となりますが、隣地境界線上の塀トラブルについてお話ししたいと思います。
前述した通り、隣地境界線上に塀を立てると、その所有権は両者にあるのが一般的です。
そのため、いくら古びたブロック塀があったとしても、勝手に壊すことはできません。
もし勝手に壊してしまうと、裁判沙汰にまで発展してしまう恐れがあります。
そうならないためにも、所有者同士で細かなルールを設けておくといいでしょう。
また、境界線上にどのような塀を設けるべきかと悩んだときには、ブロック塀とフェンスの組み合わせがおすすめです。
高さのあるブロック塀には、倒壊や防犯上のリスクがつきまといます。
その点では、低いブロックとフェンスの組み合わせにすることで、それらの問題が解決するでしょう。
メンテナンスもしやすくなりますから、塀トラブルを回避するための参考としてみてください。
ルールを守りながら適切な塀づくりを!
塀やフェンスにはさまざまな種類がありますが、目的や環境に合ったものを選んでいくべきです。
塀の仕様によっては、高さや厚みの制限があるかもしれないので、よく確認しておきましょう。
また、隣地境界線上に塀を立てるとなると、自分だけの所有物ではなくなります。
隣地所有者との話し合いを重ね、塀トラブルを回避していけるといいですね。